【完結】スキル「癒し」のみですがまだ生き残っています!

鏑木 うりこ

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魔のモノ

41 動きだした

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 死相が浮かんだ顔。しかもよく見知ったものの顔だとなんと声をかけていいか分からなくなる。

「これを、頼む」

 宰相は国王に部屋に呼ばれ、1通の手紙を預かった。

「王よ、これは?」

「セーブルに届けて欲しい……アレが下らぬ事をしたその後始末を頼みたい」

「……」

「あれの断罪は無効であると。息子を送るのも、セーブル家が帝国に行くのも全て私の指示であると。セーブルは名誉を失うことはない。全て私の、指示であると書いてある。頼む」

「……王よ、あなたは私の共は要らぬと申されるか」

 王は薄く笑った。

「息子が1人居れば充分よ。私の最大の罪を連れて行く……どうしてもアレを処分出来なかった。そちには迷惑をかけ通しだが……アマリスを助けてやって欲しい」

「そう言われると、断れませんね。王はわがままでいらっしゃる」

 その夜、宰相は1人混乱する王宮を後にして、元セーブル領へ向かった。

 宰相が城を出てすぐ、王は来訪を受ける事になる。

「やぁ、王様。死出の旅には相応しい夜だとは思わないかい?」

「何者か聞いても構わないかな?」

「呪いの魔王と言われているよ!短い付き合いだったけど、さようなら。この国は貰うねー」

 ついでに君の首も貰うねー。邪気たっぷりに無邪気に笑う顔は、見る者を凍らせるような冷たさがあった。



「あーいたいた、君、君ー!」

 聞いた事がない声に振り返って、アヴリーはギョッとした。

 その男はアヴリーと同じくらい美しい金髪で、真っ赤な目をしていた。
 そしてその美しい金髪からは真っ黒いねじくれた立派な角が、天へ向かって伸びていた。

「ひ!ひぃ!」

 お伽話でなら聞いた事がある悪魔の姿にそっくりだった。

「やあやあやあ!君だよね、間違いない」

 その角のある男は、親しげにアヴリーに近づいてきた。余りにもその姿が自然の為、ふと警戒心が緩む。

「ありがとうね!ありがとうね!」

 ここ最近、された事がなかった感謝を受けて、驚いた。アヴリーの両手を掴んでぶんぶんと振り回した。
 
「本当にありがとうねーーー!君が聖女全員を国から追い払ってくれたから、緩んだ封印結界を壊して出て来れたよぉ?」

 骨が悲鳴を上げるほど、強く握り絞められ、アヴリーは声もなく気絶し、その場に転がった。



 元セーブル子爵一家、今は養子縁組が滞りなく終わったので、ソール公爵一家は半日前まで住んでいた屋敷に帰って来た。

「だ、旦那様ぁーーー!」

 使用人達は泣きながら飛びついて来たので、ジュールはほっとし

「誰も怪我はないか?」

 皆の無事を確認し、使用人全員にマロードから追われた事、帝国の貴族になった事などをかいつまんで話した。

「そこで、皆はどうしたいか聞きたい。マロードにはまだつてがある。帝国に付きたくない者もいるだろう。すぐに答えの出ない者も多いと思うが、考えて置いて欲しい」

「あと、ヨシュアの嫁入りが決まった」

「「「えええええーーーー!」」」


 そちらの声の方が大きかったのは、どうした事だろうか。




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