【完結】スキル「癒し」のみですがまだ生き残っています!

鏑木 うりこ

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とある令嬢物語

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ご注意
 この章は令嬢モノ、ざまぁを書いてみたくてスキル一個のキャラクターを使って書いたものです。BLでもR18でもありませんし、内容も離れております。
 それでもよろしければ、お楽しみいただけると幸いですヽ(´▽`)/

 アナベル兄ちゃんが活躍しすぎなくて辛かったので、その補完の意味も込めて!

ーーーーーーーーーーーー



アルナ・ブランジは公爵令嬢である。
15歳で帝立学園に普通に入学した、この学園では割と普通の貴族である。

 そんな彼女が今夢中なのが

「見て見て!いらっしゃったわよ!」

 颯爽と一人で歩く令息である。彼は最近遅れて途中から入学してきたが、かなりの有名人だったので、皆色めきたった。

「素敵ねぇ。アナベル・ジュール侯爵令息様は……」

 ほう、とため息をつくのはアルナ以外にもたくさんいた。何せ完璧なのである。
 容姿は煌びやかではないものの、榛色の髪が優しい。その優しさが剣を抜くとガラリと変わる。
 何せスキル「剣聖」持ちで、先の魔族との戦いでは、「勇者皇帝」と肩を並べて戦った猛者でもある。
 家柄は皇帝から賜ったばかりとは言え、侯爵と高い。何せジュール家といえば末の弟が、男のくせに現皇帝の寵愛を一身に受ける妃である。

 今をときめく侯爵家なのだ。

 何でもない風で廊下を歩くアナベルは、風を纏ったかのように軽やかだ。剣聖として、実戦を超えた足運びは体重を感じさせないほど滑らか。
 曲がり角で手紙を持って突っ込んで来る令嬢を鮮やかに交わし、妬みから足を掛けようと出された令息の足を逆に踏んでも乱れる事はない。

「素敵ねぇ、立ち振る舞いも美しいわ」

 アルナの横で別の淑女が、また一つため息をする。
 そんな完璧子息がなぜ学園に来る必要があるのかと言えば

「私は剣もまだまだですし」

 そばにいる人が父の剣聖ジュールや勇者皇帝では、自分が見劣ってしまうのは仕方がない事だろうが…。

「帝国の歴史やマナーにも疎いです」

 確かに帝国に越してきて浅いが、弟君の「稀代の賢者」カレルや「帝国の生き字引」マクドルに比べたら、の話しである。

 彼の周りはなにかと凄すぎる。

「それと……友達と……恋人を見つけてこいと……」

 歯切れ悪く、頬を赤らめながら恥ずかしそうに呟いたアナベルは貴族子女たちを一気に虜にした。

「はぁ……アナベル様、今日も素敵……!」

 廊下から、窓から、遠くから。色々な場所から秋波を送られているが、表立って突撃する女子は少ない。

 何故ならーーー

「アナベル様のお父様とお母様のお話、聞きまして?」

「ええ!なんて素敵な愛なんでしょう!」

 そう。学生時代、マリーはほとんどジュールに話しかけた事はなく、卒業してから結婚したのだ。
 ただ、影から愛する人をじっと見守ったマリー。
 それに女子は憧れ……アナベルもそれを望んでいる!と思い込んでいるのだ。

 だが陰では女子同士の醜い落とし合いは開始されていた。

「アナベルさまぁ~!」

「おはようございます。リアン」

 そんなアナベルに背後から声をかけ、腕を絡ませようとして……避けられる少女が1人。リアン・レトレイ男爵令嬢だ。
 ピンク色のふわふわの髪に、制服の短めのスカートをふわりと翻す。鼻にかかったような甘い声が特徴的だ。

「アナベルさま、今日はリアンは朝ご飯をぜぇんぶ食べられたんですよぉー!」

 少し離れた物陰でみていた令嬢達が一斉に嫌なら顔をする。なぁにがぜぇんぶ食べられただ?このリアン・レトレイ男爵令嬢は毎日寮の朝食をペロリと平らげ、更におかわりまでする勢いなのを女子寮の者は皆知っている。
 しかも食べ方が美しくなくて、高位貴族らは眉をしかめていた。

「それはよかったですね。朝食をしっかり取りませんと、力が出ませんから」

「でもぉリアン、あんまり食べられなくて……フルーツは食べれました❤️」

 令嬢達が怒りにふるふる震えているが、アナベルは優しく笑う。

「自分の事は「わたくし」と言った方が良いですよ。公式の場で口から出てしまいますよ?」

「はぁい、アナベル様」

 屈託ない笑顔で返事をするリアンは勿論

 その公式の場に連れてってくれるんですよね?!

 と、期待に胸を膨らませている。

 しがない男爵の、しかも庶子。最近屋敷に入る事を許され、学園で高位貴族との縁談をもぎ取ってくるように指令を受けているリアンにとって、アナベルは格好の獲物だ。

 逃してなるものか!!!

 果敢に腕を取りに行くが、成功した試しがない。鮮やかに躱されるのである。
 
 ぎゅっとくっついて私のこの大きな胸を押しつけてやれば……純朴そうなアナベル様なら一撃よ!

 ふふ!薄笑いが漏れている。

「リアン、貴族と言うものは距離感が大切です。いくら親しい仲でも体を密着させるのは、好ましくないと以前も教えたはずですが」

 少し困ったように眉毛を下げるが、口調はとても優しい。

「はぁい」

 アナベルの言う事に素直に返事はするが

「私とアナベル様は、特別!ですから」

 男を射殺す必殺の笑顔で『あなたと私は特別』アピールをする。アナベルは優しく笑って

「特別、ですか。そう…かもしれませんね」

 小さくそう言ったので、リアンは上機嫌だった。リアンは1年の教室に、アナベルは2年の教室に分かれる。

 授業が始まる。

 アナベルは全てを満点近くでこなす。剣の実技は、教官より実力は上だが

「礼に適った剣はやはり苦手です」

 と、言い。座学では

「歴史は難しいです」「語学もまだまだです」「理論は……やはりお爺様やカレルの様には行きませんね」

 と、ため息をついている。

「「「はぁ……アナベル様、完璧!」」」

 アナベルを見つめる熱い令嬢の視線が一気に氷点下に下がる。

「アナベル様ぁ~!」

 お邪魔ピンクの登場だ。





 
 
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