【完結】スキル「癒し」のみですがまだ生き残っています!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
66 / 71
とある令嬢物語

1

しおりを挟む
 
ご注意
 この章は令嬢モノ、ざまぁを書いてみたくてスキル一個のキャラクターを使って書いたものです。BLでもR18でもありませんし、内容も離れております。
 それでもよろしければ、お楽しみいただけると幸いですヽ(´▽`)/

 アナベル兄ちゃんが活躍しすぎなくて辛かったので、その補完の意味も込めて!

ーーーーーーーーーーーー



アルナ・ブランジは公爵令嬢である。
15歳で帝立学園に普通に入学した、この学園では割と普通の貴族である。

 そんな彼女が今夢中なのが

「見て見て!いらっしゃったわよ!」

 颯爽と一人で歩く令息である。彼は最近遅れて途中から入学してきたが、かなりの有名人だったので、皆色めきたった。

「素敵ねぇ。アナベル・ジュール侯爵令息様は……」

 ほう、とため息をつくのはアルナ以外にもたくさんいた。何せ完璧なのである。
 容姿は煌びやかではないものの、榛色の髪が優しい。その優しさが剣を抜くとガラリと変わる。
 何せスキル「剣聖」持ちで、先の魔族との戦いでは、「勇者皇帝」と肩を並べて戦った猛者でもある。
 家柄は皇帝から賜ったばかりとは言え、侯爵と高い。何せジュール家といえば末の弟が、男のくせに現皇帝の寵愛を一身に受ける妃である。

 今をときめく侯爵家なのだ。

 何でもない風で廊下を歩くアナベルは、風を纏ったかのように軽やかだ。剣聖として、実戦を超えた足運びは体重を感じさせないほど滑らか。
 曲がり角で手紙を持って突っ込んで来る令嬢を鮮やかに交わし、妬みから足を掛けようと出された令息の足を逆に踏んでも乱れる事はない。

「素敵ねぇ、立ち振る舞いも美しいわ」

 アルナの横で別の淑女が、また一つため息をする。
 そんな完璧子息がなぜ学園に来る必要があるのかと言えば

「私は剣もまだまだですし」

 そばにいる人が父の剣聖ジュールや勇者皇帝では、自分が見劣ってしまうのは仕方がない事だろうが…。

「帝国の歴史やマナーにも疎いです」

 確かに帝国に越してきて浅いが、弟君の「稀代の賢者」カレルや「帝国の生き字引」マクドルに比べたら、の話しである。

 彼の周りはなにかと凄すぎる。

「それと……友達と……恋人を見つけてこいと……」

 歯切れ悪く、頬を赤らめながら恥ずかしそうに呟いたアナベルは貴族子女たちを一気に虜にした。

「はぁ……アナベル様、今日も素敵……!」

 廊下から、窓から、遠くから。色々な場所から秋波を送られているが、表立って突撃する女子は少ない。

 何故ならーーー

「アナベル様のお父様とお母様のお話、聞きまして?」

「ええ!なんて素敵な愛なんでしょう!」

 そう。学生時代、マリーはほとんどジュールに話しかけた事はなく、卒業してから結婚したのだ。
 ただ、影から愛する人をじっと見守ったマリー。
 それに女子は憧れ……アナベルもそれを望んでいる!と思い込んでいるのだ。

 だが陰では女子同士の醜い落とし合いは開始されていた。

「アナベルさまぁ~!」

「おはようございます。リアン」

 そんなアナベルに背後から声をかけ、腕を絡ませようとして……避けられる少女が1人。リアン・レトレイ男爵令嬢だ。
 ピンク色のふわふわの髪に、制服の短めのスカートをふわりと翻す。鼻にかかったような甘い声が特徴的だ。

「アナベルさま、今日はリアンは朝ご飯をぜぇんぶ食べられたんですよぉー!」

 少し離れた物陰でみていた令嬢達が一斉に嫌なら顔をする。なぁにがぜぇんぶ食べられただ?このリアン・レトレイ男爵令嬢は毎日寮の朝食をペロリと平らげ、更におかわりまでする勢いなのを女子寮の者は皆知っている。
 しかも食べ方が美しくなくて、高位貴族らは眉をしかめていた。

「それはよかったですね。朝食をしっかり取りませんと、力が出ませんから」

「でもぉリアン、あんまり食べられなくて……フルーツは食べれました❤️」

 令嬢達が怒りにふるふる震えているが、アナベルは優しく笑う。

「自分の事は「わたくし」と言った方が良いですよ。公式の場で口から出てしまいますよ?」

「はぁい、アナベル様」

 屈託ない笑顔で返事をするリアンは勿論

 その公式の場に連れてってくれるんですよね?!

 と、期待に胸を膨らませている。

 しがない男爵の、しかも庶子。最近屋敷に入る事を許され、学園で高位貴族との縁談をもぎ取ってくるように指令を受けているリアンにとって、アナベルは格好の獲物だ。

 逃してなるものか!!!

 果敢に腕を取りに行くが、成功した試しがない。鮮やかに躱されるのである。
 
 ぎゅっとくっついて私のこの大きな胸を押しつけてやれば……純朴そうなアナベル様なら一撃よ!

 ふふ!薄笑いが漏れている。

「リアン、貴族と言うものは距離感が大切です。いくら親しい仲でも体を密着させるのは、好ましくないと以前も教えたはずですが」

 少し困ったように眉毛を下げるが、口調はとても優しい。

「はぁい」

 アナベルの言う事に素直に返事はするが

「私とアナベル様は、特別!ですから」

 男を射殺す必殺の笑顔で『あなたと私は特別』アピールをする。アナベルは優しく笑って

「特別、ですか。そう…かもしれませんね」

 小さくそう言ったので、リアンは上機嫌だった。リアンは1年の教室に、アナベルは2年の教室に分かれる。

 授業が始まる。

 アナベルは全てを満点近くでこなす。剣の実技は、教官より実力は上だが

「礼に適った剣はやはり苦手です」

 と、言い。座学では

「歴史は難しいです」「語学もまだまだです」「理論は……やはりお爺様やカレルの様には行きませんね」

 と、ため息をついている。

「「「はぁ……アナベル様、完璧!」」」

 アナベルを見つめる熱い令嬢の視線が一気に氷点下に下がる。

「アナベル様ぁ~!」

 お邪魔ピンクの登場だ。





 
 
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 本編、両親にごあいさつ編、完結しました! おまけのお話を、時々更新しています。 本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。 弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。 そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。 でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。 そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います! ・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね? 本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。 そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。 お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます! 2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。 2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・? 2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。 2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

処理中です...