【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ

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3 貴方の姉である私はもういないのですよ?

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 学園では卒業パーティー後、少しの休暇があり、新学期が始まります。
 
 私はその休暇中にすべての手続きを終え、三年生として登校しました。

「おはようございます……え?」
「おはようございます」
「おはようございます。クリスティア、髪型変えたのですね?」
「ええ、セリス様。新しいお母様がどうしてもって。ふふ、ルーザ家には娘がいなかったでしょう? もう凄いんですよ」
「熱望していらしたものね、ライラ様。先日のお茶会でもキラキラした笑顔でクリスティアの事を自慢していましたわ」

 あらやだ恥ずかしい!お母様ったら。

「あ、あのセリス様と一緒にいらっしゃる方はどなただ?!」
「可愛いな……美しい」
「誰だ? え、クリスティア? あの地味メガネ?!」

 ずっと三つ編みにしていたせいで長い髪の毛はまだ少し波打ちます。色合いは茶色で地味ですが、良く手入れして貰って艶々と輝いているのです。
 厚いメガネは外し、令嬢らしい令嬢の微笑みを私は浮かべます。

「あまり得意ではないのですけれどもね。私は着飾るのより、領地経営の方が好きですから」
「そうでしたわね」

 並んでセリス様と三年生の教室に向かう。あと一年、しっかり政治と経済を学び、人脈を育てなければ。ただ……令嬢としての身だしなみは必要不可欠です。

「姉さん!」

 後ろから声がかかります。元弟のフィリップ・ノッカー子爵令息です。もうノッカー家との繋がりは絶ったというのに、分からない方もいらっしゃるものです。

「ご機嫌よう、ノッカー子爵令息。あなたの姉であるクリスティア・ノッカーはもうおりません。私を姉と呼ぶのはおよしになって下さらない? そう言う取り決めでしたわよね」

 冷たく言い放ちます。当たり前です。金輪際関わりにならない、学園でも極力声をかけないと言う取り決めで、ルーザ家から、少なくない金額がノッカー家に渡っているんですから。

「でも、姉さん! 領地が……」
「ノッカー子爵令息。契約を履行していただけないのなら、違約金をご用意いただけますか?」

 ぐっ……小さな声でフィリップは呻きます。そりゃあ領地はガタガタでしょうね、私が経営していたんですもの。
 もちろんノッカー家として行っている取り引きは残してきましたよ? それを扱えるか、回せるかはさておきとしても。
 私が新規に立ち上げた商会、農業、鉱山の事業、人材、ノウハウはすべて持ち出しました。

 当たり前じゃないですか。私がほぼ一から作り上げましたし、ほんの少しだけ使った初期投資は利息をつけて返しました。そこから何年も儲けを出し続けてノッカー家の財政を支えていましたが、私にはドレス一枚仕立ててはくれませんでしたけどね?
 ですから現場の人々に手紙を書き、私がノッカー家を捨てて、ルーザ家に行ったことをお伝えしました。そしてルーザ領で働きませんか ?とお誘いすると、たくさんの方が来てくださったのです。だって長年苦楽を共にした彼らを苦境になど叩き落したくなかったんですもの。

「今度の後ろ盾はでっかいなぁ!安心できるぜ!」

 そう手を叩いて喜んでくれました。ぜひにとおっしゃるので、お父様とお兄様……いいえ、婚約者様でしょうか? も新しくやってきた商人や工場長、鉱山の責任者ともすぐに話がまとまりましたし、ルーザ領にある、工場や鉱山に不満のない形で振り分けて貰えました。
その際にルーザ領にもあった宝石鉱山には、お母様も視察に行きたいと申されて大変でしたが、現場監督と打ち解けてくださって和やかに顔合わせは出来たと思います。
 淑女であるお母様が顔を出すにはいささか躊躇われる場所ではありますが、私が当たり前に鉱山に視察に行くのを知って、興味を持たれたようでした。実際に現場に行き、皆の顔を見て現物に触れたいと思われる優しいお気持ちはノッカー領ではありえないものでした。
 現場ではきちんと鉱山の責任者のいうことを聞き、不満や不安点をいくつか改善することを約束したそうです。最後に大きなお土産を貰って帰ってこられました。お母様の部屋にはその時貰った原石のままの紅玉が飾られております。

「磨かれた物も素敵ですが、原石のままというのも味わいがありますね」

 と、赤い光を楽しんでおられるようでした。本当にライラお母様は趣味が良いです。元義母様とは大違いですわ。ここから原石の輝きと将来性を愉しむという趣向を貴族女性に広く広がっていったようです……ありがとうございます。

 それにしてもノッカー家の収入が激減して、生活でも苦しくなったのかしらね? でも私にできることはもうないのに。
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