猫鍛冶屋(にゃんスミス)の猫武器(にゃんアームズ)なしの快適異世界生活

鏑木 うりこ

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21 抜け毛の先ほども興味がないもので

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「はあ……人間がエルフエルフってキャッキャしてウザいってことですか?」
「そ、そんなことは一言もいっていないわ! ただ私をそういう目で見る人間が多くて飽き飽きしていたから」
「はあ……まあ美人だとは思いますよ、俺だって」

 とりあえず会計カウンターの前にある椅子を進める。

「ありがとう」
「あっ! あんたはそっちじゃない! こっちのフカフカクッションが引いてあるのはケットシー様用だ! お供の人はこっちのクッションなしの椅子だ!」
「……」
「……」

 小さくてボロい店だけど俺の店なんだから、俺のルールには従ってもらう! ケットシー様にはお水をお出しして、エルフの女性の話を聞くことにした。

「私はエルフが多く暮らすグリーンフィル国からやってきました。我がグリーンフィルも魔族の侵攻を受けており、危機に瀕しているのです。ですから人間や多種族と協力し魔族を打ち倒したい……その為に力の弱いものは修行の旅に出るのです」
「ふうん」

 そりゃ大変だ、と思いながらも俺の視線はケットシーのバロン様に注がれているのだが。

「バロンさん、ぼくはとんかちだよ」
「ほう……とんかちは普通の猫ではないね? 妖精ではない……神の力が宿っている。何か強大な使命を帯びてこの地にやってきたのかな?」
「そうなんだにゃ! それなのにアキラが嫌だっていうんだにゃ……」
「ふむ、良ければ私に話を聞かせてくれないか? どうやらそれが私達の苦悩も解決できるかもしれない」
「バロンさん! ありがとにゃ!」

 カウンターの上でとんかちは香箱座りを華麗にキメて、椅子に座るバロンさんとにゃごにゃごとお話を始めた。くっ……いいな、猫語による猫達のお話……たまらん、なごむ~。
 俺がいい気分でとんかちとバロンさんの話に耳を傾けていたら、強い語調で名前を呼ばれた。

「アキラさん!? 私の話を聞いていますか!?」
「え?」
「ですから、私の話です! 私は人に無視されるのは好きではありません」
「はあ」

 そりゃ人に無視されて気分が良くなる奴は変態だけだろうけど。

「いや、特に聞いてなかったですよ。何かよくわからないけど、俺に関係なさそうな話だったし」
「~~!」

 どうやらこのルフィンというエルフの女性は、人間達にそっけない態度を取られることがなかったようだ。まあ美人だから、下心があるにせよあるにせよ(流石にないとは言い難いよな)ちやほやされながらここまできたんだろうな。うん、俺に何の関係もないよ。

「なんて失礼な! 私の話を無視する人間などいなかったのに!」
「だって俺に関係ないでしょ、あんたが旅立った理由とかなんて。まあケットシー様に逢わせて貰ったのは感謝してるけど……ああ、かっこいいなあ、ケットシー様」
「バロンのことはどうでもいいじゃないっ」
「どうでもよくない! 一番大事だろうっ……いや、一番はうちのとんかちだけど」

 うん、一番はやっぱりとんかちだな。それにしてもうるさい女性だ……イガグリのお供のマロンめ、変な奴に俺の店のことを喋るんじゃないって文句をいっておこう。まあイガグリ君に免じて出禁にはしないけど。イガグリ君に会いたいし……。
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