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12 逃げ遅れたステン
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「おはよう、パトリシア嬢」
「おはようございます、リオネル様。昨日はご迷惑をおかけしました」
「迷惑じゃないよ、これからもよろしくね」
昨日はあのあと、アレックスが駆け寄ってきて、ティーサロンからホテルまで馬車で帰ってきた。
「お嬢様を泣かせるとは何事ですかな?! 坊っちゃまっ」
「す、すまない、アレックス」
リオネル様は悪くないと説明してもアレックスは聞いてくれず、取っていた部屋でゆっくりするよう言ってくれた。そして日頃の疲れもあったせいかそのまま眠ってしまい、次の日の朝になってしまったのだ。部屋にはアレックスが起しに来てくれた。
「それにしてもステンは遅いですね。何名かメイドを連れてくるはずなのに、まだつきません。お嬢様にご不便をおかけしております」
「平気よ、アレックス。私はメイドがいなくても一人でなんでもできるわ」
レーゼン家には少ないがメイドはいた。でもメイド達はサリーさんやユリシアの我が儘に振り回されていつも手が空かなかった。だから忙しい彼女たちがやってくるのを待つより自分でやってしまった方が早い……。それに書類仕事に追われていた私は、ドレスで着飾ることもほとんどなかったし、おしゃれなお店へ出かけることもなかった……。
「お嬢様……」
申し訳なさそうに悲しい目をするアレックスに済んだことよ、と声をかけようとしてると何やら階下が騒がしい。ホテルのロビーに質の良くない客が現れたようだ。こんなたくさんの人達がいる場所で迷惑な人もいるものね、とため息をつこうとすると聞き覚えのある声が私達の名前を叫んだ。
「お嬢様~! アレックスさああんっ助けてください~~!」
「ステン!?」
「厄介ごとの気配しかしませんね」
急いで身支度を整えて、ロビーに急ぐと理由はすぐにわかって、私もアレックスも頭痛に頭を抱えた。
「パトリシア! パトリシアいるんでしょうっ、分かっているのよ! 出てきなさいっ」
「酷いですぅ~お姉様ぁ! お家のお金を全部盗んでいくなんて酷いですぅ~」
場所もわきまえずに醜い形相で叫ぶ元義母のサリーさんと元義妹のユリシアがステンの首根っこを掴みつつ騒ぎを起こしていた。
「だから荷物など最低限にしてさっさと出てきなさいと言ったのに。ステンの不手際です、あやつに責任を取らせましょう」
「でもあれだけ声高に私の名前を叫ばれると恥ずかしいわ。このままではリオネル様にもご迷惑をかけてしまうし」
サリーさんやユリシアから見えない位置でアレックスと声を顰めて相談していると、後ろから足音がしてリオネル様が現れた。
「なんて非常識な連中なんだろう。あんなのの相手をしなくちゃいけなかったなんてパトリシア嬢はとても大変だったね」
「リオネル様……」
「まあ野放しにもできないし、さっさと話しをつけてしまおう」
「申し訳ございません」
私とアレックスで何とかしようとしていたけれど、リオネル様は手を貸してくださるようだ。私達を促して一緒にロビーの真ん中で騒ぎ立てているサリーさんとユリシアへ近づいて行った。
「おはようございます、リオネル様。昨日はご迷惑をおかけしました」
「迷惑じゃないよ、これからもよろしくね」
昨日はあのあと、アレックスが駆け寄ってきて、ティーサロンからホテルまで馬車で帰ってきた。
「お嬢様を泣かせるとは何事ですかな?! 坊っちゃまっ」
「す、すまない、アレックス」
リオネル様は悪くないと説明してもアレックスは聞いてくれず、取っていた部屋でゆっくりするよう言ってくれた。そして日頃の疲れもあったせいかそのまま眠ってしまい、次の日の朝になってしまったのだ。部屋にはアレックスが起しに来てくれた。
「それにしてもステンは遅いですね。何名かメイドを連れてくるはずなのに、まだつきません。お嬢様にご不便をおかけしております」
「平気よ、アレックス。私はメイドがいなくても一人でなんでもできるわ」
レーゼン家には少ないがメイドはいた。でもメイド達はサリーさんやユリシアの我が儘に振り回されていつも手が空かなかった。だから忙しい彼女たちがやってくるのを待つより自分でやってしまった方が早い……。それに書類仕事に追われていた私は、ドレスで着飾ることもほとんどなかったし、おしゃれなお店へ出かけることもなかった……。
「お嬢様……」
申し訳なさそうに悲しい目をするアレックスに済んだことよ、と声をかけようとしてると何やら階下が騒がしい。ホテルのロビーに質の良くない客が現れたようだ。こんなたくさんの人達がいる場所で迷惑な人もいるものね、とため息をつこうとすると聞き覚えのある声が私達の名前を叫んだ。
「お嬢様~! アレックスさああんっ助けてください~~!」
「ステン!?」
「厄介ごとの気配しかしませんね」
急いで身支度を整えて、ロビーに急ぐと理由はすぐにわかって、私もアレックスも頭痛に頭を抱えた。
「パトリシア! パトリシアいるんでしょうっ、分かっているのよ! 出てきなさいっ」
「酷いですぅ~お姉様ぁ! お家のお金を全部盗んでいくなんて酷いですぅ~」
場所もわきまえずに醜い形相で叫ぶ元義母のサリーさんと元義妹のユリシアがステンの首根っこを掴みつつ騒ぎを起こしていた。
「だから荷物など最低限にしてさっさと出てきなさいと言ったのに。ステンの不手際です、あやつに責任を取らせましょう」
「でもあれだけ声高に私の名前を叫ばれると恥ずかしいわ。このままではリオネル様にもご迷惑をかけてしまうし」
サリーさんやユリシアから見えない位置でアレックスと声を顰めて相談していると、後ろから足音がしてリオネル様が現れた。
「なんて非常識な連中なんだろう。あんなのの相手をしなくちゃいけなかったなんてパトリシア嬢はとても大変だったね」
「リオネル様……」
「まあ野放しにもできないし、さっさと話しをつけてしまおう」
「申し訳ございません」
私とアレックスで何とかしようとしていたけれど、リオネル様は手を貸してくださるようだ。私達を促して一緒にロビーの真ん中で騒ぎ立てているサリーさんとユリシアへ近づいて行った。
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