搾取された令嬢、今度は幸せになる。あの人の親愛が溺愛に変わったんです。

鏑木 うりこ

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25 罠を仕掛けたクラウス伯父様

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「あ! そういえばさ~、今日手続きで城にいったんだけどね、もう笑っちゃったよー!バーグの野郎、顔の左半分がピンクだったんだ! んで凄い臭いんだよ。まさかあそこまできれいに嵌ってくれるとは私も思わなかった!」

 伯父様はコロリと表情を変えて、それはそれは愉快そうに話しだした。伯父様は本日、用事があると昼間にお城へ行くと言っていた。その時の話になるんだろう……バーグの野郎ってジュリアナの父親のバーグ伯爵のことに違いない。そしてピンク色と臭いには私にも既視感がある。

「顔がピンクで臭い……? 伯父様、今日ジュリアナも顔の下半分がピンク色で鼻につく嫌な臭いを発しながら学園に来ました」

 学園での騒ぎを思い出し伯父様に報告すると、伯父様とお祖父様それにお祖母様とリリー伯母様まで笑い出した。

「やっぱりか! きっと娘がセラフィーナ宛の荷物を無断で開けるのを横で呑気に見ておったんだろうな! ざまーみろだ! 行き交う人ほぼ全員から白い目で見られ、騎士達からは身構えられ……手続きも出来ずに帰ったようだぞ! これで城のほとんどの人間にバーグの野郎は罪人だと印象付けられたな!」
「えっと、そのことでジュリアナに殴られそうになったところをマイラス・ギビン侯爵令息に助けてただきました」
「おお! ギビン騎士団長の息子か。正義感の強い子供達だと聞いていたがそれはありがたいな! それに騎士団長にもしっかりこの話が伝わるな……ふふ、イヤリング一つにかいた欲のせいでバーグの野郎……ふふふふ……」

 伯父様が楽しそうだけれど含みと闇がありそうな笑いをしている。こんな伯父様で少し申し訳ない気がしてセルジオ先生の顔を見ると、こちらもとても嬉しそうで少し意外だった。

「セラフィーナさん。頼りになる伯父上様でよかったですね。私も嬉しいです」
「え、あ……はい!」

 セルジオ先生的にはアリなんだな、とちょっと胸を撫でおろしたけれど、きっとこういう事も貴族として生きていくには必要なんだ……私も見習おうと思う。

「それにしても伯父様、一体どういうことなんですか?」
「ああ、どうやらバーグ家のジュリアナという娘は盗癖があるようじゃないか、だから試させて貰ったんだよ。私が間違えたふりをしてセラフィーナ宛のアクセサリーをバーグ家へ届けさせたらきちんとセラフィーナの手元に届くかどうかを」
「だからあのイヤリング……」
「そうだ。そうしたら見事にあの泥棒娘は手をつけた。多分父親公認でそういうことをしているんだろうと踏んで、バーグの野郎が城に呼び出されている日の前後を狙って送りつけたらまあ、見事に引っかかってくれたってわけだ」
「そうだったんですね……」
「あの人体に害はないが酷い色と臭いが取れないインクは最近開発されたものでね。指定引き取り人以外が箱を開けると爆発をして辺り一面酷いことになる。バーグの野郎がどこで開封したかしらんが、ヤツの執務室だったらいいのになあ! 臭いし、インクは飛び散っているしでいい気味だ!」

 私も何度か足を踏み入れたことがあるバーグ伯爵の執務室。たしか高そうな置物が所狭しと置かれていてゴチャゴチャした成金のようなあの部屋が、一面臭くてピンク色……確かに笑えると思うし、バーグ伯爵にしたら倒れそうなほどショックだろうな。

「怪訝に見ている人もいたからな、バーグに話しかけてやったぜ。「おや、バーグ伯爵どうしましたか? まさかとは思うけれど、他人の荷物を無許可であけましたか? その色、その臭いは犯罪者を見分け、追いかけるためのインクですよ。そういえば私が姪に送った荷物がまだつかないんですよ、もしかして……?」 っていってやったら尻尾を巻いて逃げやがった! あれは愉快だったぞー!」

 ご機嫌に笑う伯父様とモルガット家の人達。敵に回す気はまったくないけれど、この人達と敵対するようなことをしてはいけないと、心に刻んでおく。
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