【完結】生き残りたい俺は死者と語る。

鏑木 うりこ

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50 命とその身の保証はしない

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「戦争だ」

「お待ちください!王よ!!」

 びゅっと薙いだ剣は諫めた騎士の首筋で一応は止まった。

「お前には絶対に相容れぬ憎い相手はいるか?」

 何故そう聞かれるか脳内を思考は駆け回っても、瞬時に答えることは出来なかったが、小さく「いいえ…‥」と答える。

「ならばそうさ、誰でも良い。お前の同僚でも良い。それがお前の奥方、いや娘か息子を我が物顔で蹂躙し、囲い込み犯し、毎晩楽しんでいる。それを指をくわえてみていろ。そういう事だな?」

「う……」

「しかもたった一人しかいない跡継ぎの息子をだ。さあ、お前の息子を差し出せ、今すぐに」

「お、お許しください……王よ……」

「私に意見する者は他にあるか?あれば自身の跡継ぎを差し出すがよい。グレイアッシュへの使者として立たせてやろう。無論、命とその身の保証はせん」

 グレイデールの家臣一同は黙りこくってしまう。自分の身ならまだしも、自分の子供を差し出すのは辛い。

「……王よ、まずナナ様を返すよう、グレイアッシュに交渉するべきなのでは……」

 城に長く仕える前公爵が一歩前へ出た。彼は家督を息子に譲っていて、隠居の身であるが蓄えた知識量の豊富さを乞われ、城に仕えていた。

「グレント翁ではそちの孫であるフェルデンで使者としてすぐに向かわせるがよい」

「お、王よ!お待ちください……ッ」

 グレントの孫のフェルデンは今6歳の可愛い盛りである。勿論、使者などと言う大役を果たせる年ではない。孫のフェルデンを目に入れても痛く無いグレントは慌てふためく。

「あのグレイアッシュが大人しくナナを引き渡すと思っているのか?恐ろしい無理難題を吹っかけてくるか、国でも寄越せと言ってくるだろうよ。さてどうする?使者を立てるか?」

「も、申し訳……ございません……」

 平伏するグレントを誰も咎めることは出来なかった。

「今宵出立する。準備せよ!」

「はっ!」

 誰も異論をはさむことは許さない。グレイデール王の怒りの炎は青い。



「ナナ」

「はい……」

 名前を呼べば嫌そうに答えるのを楽しいと感じるグレイアッシュの王アリディス。何故なのかは分からないが、そうしたいからそうする。ナナは触れられることを嫌がる、アレと同じように。だから気に入っているのだ、媚びへつらい寵愛を逃さぬように縋り付く女どもとは違うのもまた良い。

「ふふ……」

 首筋に舌を這わせれば、ナナが恐怖で震えて喉をひりつかせるのが分かる。それが楽しいのだ。可愛がりたいと思うがそれより、嫌がったり恐怖で震えたりの感情を感じるのが楽しい。

「お前も半分は同じ顔をするんだよなぁ?デール……」

 現グレイアッシュの王アリディスの魂は元はグレイルの双子の王子アッシュであった。

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