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55 諦めれば生き残れる
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「ど、どこから……」
「後ろをつけさせて貰ったよ。あんな古い通路良く知ってるねぇ?なんなんだい?君は」
「お、俺は……」
俺は知らなかった。でも先導してくれたお姉様方が知っていただけだ……ああ、せっかくみんなが逃がしてくれたのに、ここでつかまってしまうのか……。に、逃げなきゃ、何とか逃げないと……せっかく!
鎧の男は洞穴の入り口に立っている。俺はそこから少しでも遠ざかろうとじりじりと後ろに下がった。ここは森の中だ、早くは走れないかもしれないけれど、鎧を着ている奴より俺の方が木の間を抜けるのが早いかもしれない。よしっ!男に背を向けて走り出した途端に何かに思いっきりぶつかった!いてぇ!こんな所に木はなかったはずなのに!
「へえ、逃げる気力はあったんだ」
「ひ……」
鎧の男はもう一人いて、いつの間にか俺の後ろに回り込んでいたらしい。方向を変えて逃げようとする俺は腕を掴まれる。
「ほっそいな。ちゃんと肉食ってんのか?」
「は、離せ……っ」
肉なんて食ってない!出てくる肉料理は何か薬が混ぜられているもの!
「……なあ、ホントに?」
「ああ」
ジタバタもがいても、男は腕を放してくれなかった。
「じゃあ行こっか、「ナナちゃん」」
「あ……」
俺はまたあの城に戻されるのか。折角お姉様達が逃してくれたのに……ダメだった。俺は腕を引かれるまま、男達に連れて行かれる。
「もう抵抗しないの?」
「……殺さないで……」
「ナナちゃん、諦めるの早いね?」
「……ごめんなさい、殺さないで……」
俺は死にたくないんだ。何として生きていたいんだ。
「……諦めきっちゃって。でもこうやって生き延びて来たんだろうね。抵抗すると痛めつけられる、そういう事か」
「……」
分かってるなら聞かないで欲しい。そして分かってるなら俺を逃して欲しい。でもそれはゆるして貰えないんだろうな。彼らはグレイアッシュの兵士だ。俺を連れて帰らなければ王様に怒られるんだろう。もしかしたら殺されちゃうかもしれない。誰だって自分の命は大切だ……他人を不幸にしても助かりたい、俺だってそうだもん、文句なんて言えないよ。
黙って腕を引かれるまま着いて行く。きっとあの王様は俺を殺さないだろう。とても歪な古い魂の王様だった。魂は生まれ変わる度に何か新しさを取り入れて変化して行くはずなのに、あの人はずーっと頑なに新しさを拒み、元の魂を抱え続けている。強い想いに自らを括り付けている、そんな感じだ。
「ナナちゃん、おいで。抱っこしてあげる。ナナちゃんの足じゃ遅すぎて逃げきれない」
「……逃げないです……ちゃんという事を聞きます……」
伸ばされた手を振り払わず身を任せた。硬い胸鎧がヒヤリとして体の暖かさまで奪って行くようだ。一度逃げ出した俺はお仕置きとかされるんだろうか。もう二度と逃げないように鎖で繋がれたり、足を切られたりするんだろうか。
「はあ、ホント大人しいなぁ。もう少し抵抗してくれても可愛いのになぁ」
勝手な事を言わないでくれ。俺は死にたくないんだから……。
「後ろをつけさせて貰ったよ。あんな古い通路良く知ってるねぇ?なんなんだい?君は」
「お、俺は……」
俺は知らなかった。でも先導してくれたお姉様方が知っていただけだ……ああ、せっかくみんなが逃がしてくれたのに、ここでつかまってしまうのか……。に、逃げなきゃ、何とか逃げないと……せっかく!
鎧の男は洞穴の入り口に立っている。俺はそこから少しでも遠ざかろうとじりじりと後ろに下がった。ここは森の中だ、早くは走れないかもしれないけれど、鎧を着ている奴より俺の方が木の間を抜けるのが早いかもしれない。よしっ!男に背を向けて走り出した途端に何かに思いっきりぶつかった!いてぇ!こんな所に木はなかったはずなのに!
「へえ、逃げる気力はあったんだ」
「ひ……」
鎧の男はもう一人いて、いつの間にか俺の後ろに回り込んでいたらしい。方向を変えて逃げようとする俺は腕を掴まれる。
「ほっそいな。ちゃんと肉食ってんのか?」
「は、離せ……っ」
肉なんて食ってない!出てくる肉料理は何か薬が混ぜられているもの!
「……なあ、ホントに?」
「ああ」
ジタバタもがいても、男は腕を放してくれなかった。
「じゃあ行こっか、「ナナちゃん」」
「あ……」
俺はまたあの城に戻されるのか。折角お姉様達が逃してくれたのに……ダメだった。俺は腕を引かれるまま、男達に連れて行かれる。
「もう抵抗しないの?」
「……殺さないで……」
「ナナちゃん、諦めるの早いね?」
「……ごめんなさい、殺さないで……」
俺は死にたくないんだ。何として生きていたいんだ。
「……諦めきっちゃって。でもこうやって生き延びて来たんだろうね。抵抗すると痛めつけられる、そういう事か」
「……」
分かってるなら聞かないで欲しい。そして分かってるなら俺を逃して欲しい。でもそれはゆるして貰えないんだろうな。彼らはグレイアッシュの兵士だ。俺を連れて帰らなければ王様に怒られるんだろう。もしかしたら殺されちゃうかもしれない。誰だって自分の命は大切だ……他人を不幸にしても助かりたい、俺だってそうだもん、文句なんて言えないよ。
黙って腕を引かれるまま着いて行く。きっとあの王様は俺を殺さないだろう。とても歪な古い魂の王様だった。魂は生まれ変わる度に何か新しさを取り入れて変化して行くはずなのに、あの人はずーっと頑なに新しさを拒み、元の魂を抱え続けている。強い想いに自らを括り付けている、そんな感じだ。
「ナナちゃん、おいで。抱っこしてあげる。ナナちゃんの足じゃ遅すぎて逃げきれない」
「……逃げないです……ちゃんという事を聞きます……」
伸ばされた手を振り払わず身を任せた。硬い胸鎧がヒヤリとして体の暖かさまで奪って行くようだ。一度逃げ出した俺はお仕置きとかされるんだろうか。もう二度と逃げないように鎖で繋がれたり、足を切られたりするんだろうか。
「はあ、ホント大人しいなぁ。もう少し抵抗してくれても可愛いのになぁ」
勝手な事を言わないでくれ。俺は死にたくないんだから……。
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