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21 自分の為ですよ?

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 さて、私の初級ボーションですが、何故か知らないけれど無色透明のお水みたいになってしまった。でも飲めばなんか美味しい。うっすらと甘みがあってそれでいてすっきりしている。眠い時に飲めば眠気も取れるし、疲れた時に飲めば元気にもなるから、薬効成分はしっかりあるはず。

「……と、とりあえず。初級は置いておいて中級ポーションに取り掛かってみては?」

「あ、はい」

 薬学科の教授に何故こうなるか聞いても分からなかった……。まあ美味しいし回復するならポーションとして問題ないでしょう!うん。中級は混ぜる薬草も増えるし、配合する物も増えるから手間もかかるし、材料費もかかる……。

「……アルバイトかしら……?」

 私の実家は田舎の子爵家。一応貴族席は頂いていても都会の商家よりつつましい生活をしている貧乏貴族なので、実家を頼る事なんて出来ません。それに友人たちのご厚意に甘え続けてはこの先のレベルアップは辛いものがあります。そう、自分で何とかしなければいけないのです!

「一番使うのは薬草ですよね……そうだ!農家へ行こう!」

 これです!現地に直接いけば材料は安く買えると言う物。しかもいわゆる商品にならない半端ものなどもたくさんあるはず。そうとなれば……。

「まずはマダムのお店に行って暫く来れない事を伝えなくては……それから農業科の教授に相談したらいいかしら?」

 思ったら即行動。私はその日の学園終わりにマダムの店へ行き、事細かに伝えると

「マリーは勤勉ね……また冬……薬草が取れない時期には来てくれるわよね?あと、忙しい時期と……」

「勿論です!私はまだまだレベル不足ですからここで修業したいです!」

 そう言うとマダムもにっこり笑って応援してくれた。次の日に農業科の教授の所へ行ってみると薬学科の教授もいて話が早かった。

「この子だよ!馬鹿みたいに初級ポーション作りまくって、レベルアップとか言いながら透明な奴を完成させた天才は!」

「いや、話を聞けばこの子は天才ではなく、呆れるほどの努力家だ。努力の天才であるという点であれば間違いないぞ。して私に何か用かね?」

 天才?私は幸せを追い求める普通の生徒ですが、まあ目的は薬草農家を紹介してもらう事ですしね。お二人の教授に薬草農家でお手伝いをしたいと話すと二人とも飲んでいたお茶を吹き出してしまったので、とても汚いです。

「マ、マリーだったね。君は一体どこまで行きたいんだ……!?」

「行きたい場所などありませんが、私は幸せになる為にレベルアップしているだけなんです」

「幸せの為のレベルアップ……すると君は自分自身為にこれほど努力を積み重ねているのかい?」

 努力……なんでしょうか?大したことないとおもうのですが、お二人の尺度で私は相当な努力家らしいです。

「あ、はあ……まあ自分の為ではありますね」

 ポーションに関しては帰ってからの事もありますし、でも自領の為と考えれば自分の為になるでしょう。とにかくお二人の教授は良い農家さんを紹介してくれるとのことでしたので、とても助かります。

「あ、あの透明な初級ポーションですが、沸かしてあれでお茶を淹れると美味しいですよ」

 と、10本くらい置いてくると「まじかぁ……」と頭を抱えていらっしゃったので、不思議でした。だってたくさんあるんですから、ガブガブ飲まないと部屋がポーションで埋め尽くされてしまいます。

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