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59 光を通すような闇(フロウライト
しおりを挟む「もういい。適当な令嬢と結婚しろ」
「何ということを! お断りさせていただきます」
父が持ってくる婚約話はすべて断り続けるも、やはりマークのように人を癒す者であり、マラカイト・凛莉のように体が丈夫そうな人間はいなかった。伴侶探しに疲れてしまいつい神に愚痴のような祈りをしてしまった……。
それがいけなかったのか良かったのか。後日私は目を剥くことになった。
「マークは私だからだが?」
「!?」
目の前で何の変哲もない眼鏡をかけたマラカイト・凛莉はその特徴的な赤い目を紫に変化させそしてマークと同じ青い目に変わる。捉えどころのない闇暗殺者の気配はいつも街でニコニコ笑っている日向の花のようになったのだ。
目の前で起こったのに信じられない。あまりに呆然自失してしまい、気が付くと周りには誰もいなかった。夢うつつのまま、家に帰り、眠りにつき信じられない気持ちで職場へ向かえば更に信じられない噂が流れていた。
「団長団長、団長はマークさんのこと覚えてます?」
「あ、ああ……初級治癒術師の……だな」
マラカイト・凛莉の表の姿とは思えない柔らかい空気の気のいい青年。
「なんとそのマークさんが団長の事好きみたいって話、知ってます?」
「……初耳だが」
聞けば前々からそんな雰囲気はあったけれど、最近その思いを募らせているらしいと街でも噂になっている、らしい。あのマークが? というかあのマラカイト・凛莉が? 信じられないという思いと口々に肯定する部下達。
街へ出れば人々が口をそろえる。
「無理ってことは分かっているんですけれど、マークさんのこと考えてやってくれませんか? お願いします」
「私達はマークさんに幸せになって貰いたいんです。どうか、どうか団長様お願いします」
「いつもさ、自分のことは後回しで俺達に優しいだろ、あの人。俺達、あの人のために何かしてやりたいんだ」
そして私は皆の力を借り、何度かデートの末に愛の告白をした。マークの返事は何か潰れたような声だったが、確かに肯定だったはずだった……凛莉には少し怒られたが、彼は私を受け入れてくれた。
「ちょ、ちょっともう無理! やめて、やめてぇ! や、イ、イくうううっ!!」
シトリンが凛莉のことを酷く性的だと言っていたのを実感してしまった。どこに触れても気持ちがいい凛莉の体に溺れたといっても過言ではない。一晩中抱き続け、啼かせ……気が付くと朝になっていて、自分でもそんな事をした事が信じられなかった。
こっ酷く叱られたが、凛莉は後には引かない性格らしい。しかもあんなに怒ったのにその夜も結局求め合っていた。
「私も好きなんだよ、なんだかんだで」
魅せる妖艶さの中にさっぱりした性格が垣間見れる。ああ、マラカイト・凛莉は掴みどころがない。その美しい深い闇はそれでいて光を通してキラキラと眩しく輝く。
ああ、神よ! 私を彼と出会わせてくれて、手に取る事を許してくれてありがとうございます!
私の毎日は美しく彩り豊かで楽しいものに変化して行った。
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