【本編完結済】ポツン食らった悪役令息が大っきい人と幸せになる過程

鏑木 うりこ

文字の大きさ
2 / 135

02 運命、というものであっても

しおりを挟む
「父上」
「ア、アウラリス……」
「どうやら「そういうこと」らしいです……」
「……そうか……お前はそれでよいのか?」
「仕方ありません、運命……なのでしょう」

 婚約者にもほっぽられ、義兄にも放置された私は仕方がなくそれでも取り乱さず父上の元に歩いて行った。父上と共にいた母上は気を失って静かに運び出されて行く。
 聖女様しか目に入っていない我が婚約者様と我が義兄様はそれも目に入らないらしい。

 ゲームではこの後アウラリスが婚約者のリズティーアを怒鳴りつけ、義兄のダレンを馬鹿にして、聖女様に悪態をつき、夜会をめちゃくちゃにして摘み出されるのだが、そんなことを私はしない。
 冷静に父上と歩き出し、この夜会で一番位が高い国王陛下の方へ行く。これは国王陛下が聖女様をお披露目しようと開いた夜会だったんだ。
 ディーズ侯爵の跡継ぎが酷い屈辱を受けた現場をはっきりくっきり見た貴族達はザワザワとざわめきながらも、私と父上を通してくれた。本当なら国王陛下への挨拶は順番があるのだけれど、譲ってくれたんだ。
 陛下の前へ着くと父上と私はマナー通りの礼をし、敬意を示す。一通りの口上を述べてから苦々しく父上は言葉を続ける。

「陛下、至急我が家へ立ち返り協議すべき事柄が起こりました。申し訳ございませんが、今宵はここで失礼させていただきます」
「よい、許す」
「ありがとうございます」

 陛下も私を痛々しげな眼差しで見てそういってくださった。貴族としてはそれくらいあり得ない行動を私の信頼し、愛すべき関係者は行ったのだ。
 それでも私達は貴族だ。礼を欠くようなことをするべきではないと叩き込まれている。だから最低限の挨拶だけは行ってこの場を後にする。

「アウラリス……」
「……」

 国王陛下の隣にいた王太子殿下が、気遣わしげに声をかけてくださったがそれ以上傷を抉るようなことはしないでくれた。
 私は深く礼をしながら小さく答える。

「……殿下は、違えることなきよう……信じております」
「……っ……ああ……」

 私は知っているんだ。この王太子殿下も聖女鮫島君に運命を感じている隠し攻略対象者だって。でも選ぶルートによって王太子殿下はまるで出てこない。出てこないルートでは殿下は子供の時からの婚約者ときちんと結婚しているんだ……運命の番かもしれない聖女のことはきっぱりと諦めて、定められた婚約者と結婚する。すごい精神力だと思うし、国王になる者としてそれはそれで頼もしいと思う。

 そして私と父上、気絶した母上はディーズ侯爵家に帰宅した。まず最初にリズティーアとの婚約解消手続きを早急に取りまとめるために。
 
 可哀想に、俺の中でアウラリスの心は壊れて砕けていっている……そういう役回りなのだと知らないアウラリスの心と魂はバラバラに引き裂かれ、枯れ果て、死んでいく。
しおりを挟む
感想 188

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?

人生2929回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途な‪α‬が婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。 ・五話完結予定です。 ※オメガバースで‪α‬が受けっぽいです。

私を追い出した後に後悔しても知りません

天宮有
恋愛
伯爵家の次女マイラは、結婚してすぐ夫ラドスに仕事を押しつけられてしまう。 ラドスは他国へ旅行に行って、その間マイラが働き成果を出していた。 1ヶ月後に戻ってきた夫は、マイラの姉ファゾラと結婚すると言い出す。 ラドスはファゾラと旅行するために、マイラを働かせていたようだ。 全て想定していたマイラは離婚を受け入れて、家族から勘当を言い渡されてしまう。 その後「妹より優秀」と話していたファゾラが、マイラより劣っていると判明する。 ラドスはマイラを連れ戻そうとするも、どこにいるのかわからなくなっていた。

牙を以て牙を制す

makase
BL
王位継承権すら持てず、孤独に生きてきた王子は、ある日兄の罪を擦り付けられ、異国に貢物として献上されてしまう。ところが受け取りを拒否され、下働きを始めることに。一方、日夜執務に追われていた一人の男はは、夜食を求め食堂へと足を運んでいた――

第2王子は断罪役を放棄します!

木月月
BL
ある日前世の記憶が蘇った主人公。 前世で読んだ、悪役令嬢が主人公の、冤罪断罪からの巻き返し痛快ライフ漫画(アニメ化もされた)。 それの冒頭で主人公の悪役令嬢を断罪する第2王子、それが俺。内容はよくある設定で貴族の子供が通う学園の卒業式後のパーティーにて悪役令嬢を断罪して追放した第2王子と男爵令嬢は身勝手な行いで身分剥奪ののち追放、そのあとは物語に一切現れない、と言うキャラ。 記憶が蘇った今は、物語の主人公の令嬢をはじめ、自分の臣下や婚約者を選定するためのお茶会が始まる前日!5歳児万歳!まだ何も起こらない!フラグはバキバキに折りまくって折りまくって!なんなら5つ上の兄王子の臣下とかも!面倒いから!王弟として大公になるのはいい!だがしかし自由になる! ここは剣と魔法となんならダンジョンもあって冒険者にもなれる! スローライフもいい!なんでも選べる!だから俺は!物語の第2王子の役割を放棄します! この話は小説家になろうにも投稿しています。

王子様への置き手紙

あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯

王太子殿下のやりなおし

3333(トリささみ)
BL
ざまぁモノでよくある『婚約破棄をして落ちぶれる王太子』が断罪前に改心し、第三の道を歩むお話です。 とある時代のとある異世界。 そこに王太子と、その婚約者の公爵令嬢と、男爵令嬢がいた。 公爵令嬢は周囲から尊敬され愛される素晴らしい女性だが、王太子はたいそう愚かな男だった。 王太子は学園で男爵令嬢と知り合い、ふたりはどんどん関係を深めていき、やがては愛し合う仲になった。 そんなあるとき、男爵令嬢が自身が受けている公爵令嬢のイジメを、王太子に打ち明けた。 王太子は驚いて激怒し、学園の卒業パーティーで公爵令嬢を断罪し婚約破棄することを、男爵令嬢に約束する。 王太子は喜び、舞い上がっていた。 これで公爵令嬢との縁を断ち切って、彼女と結ばれる! 僕はやっと幸せを手に入れられるんだ! 「いいやその幸せ、間違いなく破綻するぞ。」 あの男が現れるまでは。

処理中です...