2 / 134
02 運命、というものであっても
しおりを挟む
「父上」
「ア、アウラリス……」
「どうやら「そういうこと」らしいです……」
「……そうか……お前はそれでよいのか?」
「仕方ありません、運命……なのでしょう」
婚約者にもほっぽられ、義兄にも放置された私は仕方がなくそれでも取り乱さず父上の元に歩いて行った。父上と共にいた母上は気を失って静かに運び出されて行く。
聖女様しか目に入っていない我が婚約者様と我が義兄様はそれも目に入らないらしい。
ゲームではこの後アウラリスが婚約者のリズティーアを怒鳴りつけ、義兄のダレンを馬鹿にして、聖女様に悪態をつき、夜会をめちゃくちゃにして摘み出されるのだが、そんなことを私はしない。
冷静に父上と歩き出し、この夜会で一番位が高い国王陛下の方へ行く。これは国王陛下が聖女様をお披露目しようと開いた夜会だったんだ。
ディーズ侯爵の跡継ぎが酷い屈辱を受けた現場をはっきりくっきり見た貴族達はザワザワとざわめきながらも、私と父上を通してくれた。本当なら国王陛下への挨拶は順番があるのだけれど、譲ってくれたんだ。
陛下の前へ着くと父上と私はマナー通りの礼をし、敬意を示す。一通りの口上を述べてから苦々しく父上は言葉を続ける。
「陛下、至急我が家へ立ち返り協議すべき事柄が起こりました。申し訳ございませんが、今宵はここで失礼させていただきます」
「よい、許す」
「ありがとうございます」
陛下も私を痛々しげな眼差しで見てそういってくださった。貴族としてはそれくらいあり得ない行動を私の信頼し、愛すべき関係者は行ったのだ。
それでも私達は貴族だ。礼を欠くようなことをするべきではないと叩き込まれている。だから最低限の挨拶だけは行ってこの場を後にする。
「アウラリス……」
「……」
国王陛下の隣にいた王太子殿下が、気遣わしげに声をかけてくださったがそれ以上傷を抉るようなことはしないでくれた。
私は深く礼をしながら小さく答える。
「……殿下は、違えることなきよう……信じております」
「……っ……ああ……」
私は知っているんだ。この王太子殿下も聖女鮫島君に運命を感じている隠し攻略対象者だって。でも選ぶルートによって王太子殿下はまるで出てこない。出てこないルートでは殿下は子供の時からの婚約者ときちんと結婚しているんだ……運命の番かもしれない聖女のことはきっぱりと諦めて、定められた婚約者と結婚する。すごい精神力だと思うし、国王になる者としてそれはそれで頼もしいと思う。
そして私と父上、気絶した母上はディーズ侯爵家に帰宅した。まず最初にリズティーアとの婚約解消手続きを早急に取りまとめるために。
可哀想に、俺の中でアウラリスの心は壊れて砕けていっている……そういう役回りなのだと知らないアウラリスの心と魂はバラバラに引き裂かれ、枯れ果て、死んでいく。
「ア、アウラリス……」
「どうやら「そういうこと」らしいです……」
「……そうか……お前はそれでよいのか?」
「仕方ありません、運命……なのでしょう」
婚約者にもほっぽられ、義兄にも放置された私は仕方がなくそれでも取り乱さず父上の元に歩いて行った。父上と共にいた母上は気を失って静かに運び出されて行く。
聖女様しか目に入っていない我が婚約者様と我が義兄様はそれも目に入らないらしい。
ゲームではこの後アウラリスが婚約者のリズティーアを怒鳴りつけ、義兄のダレンを馬鹿にして、聖女様に悪態をつき、夜会をめちゃくちゃにして摘み出されるのだが、そんなことを私はしない。
冷静に父上と歩き出し、この夜会で一番位が高い国王陛下の方へ行く。これは国王陛下が聖女様をお披露目しようと開いた夜会だったんだ。
ディーズ侯爵の跡継ぎが酷い屈辱を受けた現場をはっきりくっきり見た貴族達はザワザワとざわめきながらも、私と父上を通してくれた。本当なら国王陛下への挨拶は順番があるのだけれど、譲ってくれたんだ。
陛下の前へ着くと父上と私はマナー通りの礼をし、敬意を示す。一通りの口上を述べてから苦々しく父上は言葉を続ける。
「陛下、至急我が家へ立ち返り協議すべき事柄が起こりました。申し訳ございませんが、今宵はここで失礼させていただきます」
「よい、許す」
「ありがとうございます」
陛下も私を痛々しげな眼差しで見てそういってくださった。貴族としてはそれくらいあり得ない行動を私の信頼し、愛すべき関係者は行ったのだ。
それでも私達は貴族だ。礼を欠くようなことをするべきではないと叩き込まれている。だから最低限の挨拶だけは行ってこの場を後にする。
「アウラリス……」
「……」
国王陛下の隣にいた王太子殿下が、気遣わしげに声をかけてくださったがそれ以上傷を抉るようなことはしないでくれた。
私は深く礼をしながら小さく答える。
「……殿下は、違えることなきよう……信じております」
「……っ……ああ……」
私は知っているんだ。この王太子殿下も聖女鮫島君に運命を感じている隠し攻略対象者だって。でも選ぶルートによって王太子殿下はまるで出てこない。出てこないルートでは殿下は子供の時からの婚約者ときちんと結婚しているんだ……運命の番かもしれない聖女のことはきっぱりと諦めて、定められた婚約者と結婚する。すごい精神力だと思うし、国王になる者としてそれはそれで頼もしいと思う。
そして私と父上、気絶した母上はディーズ侯爵家に帰宅した。まず最初にリズティーアとの婚約解消手続きを早急に取りまとめるために。
可哀想に、俺の中でアウラリスの心は壊れて砕けていっている……そういう役回りなのだと知らないアウラリスの心と魂はバラバラに引き裂かれ、枯れ果て、死んでいく。
1,736
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです
天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。
その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。
元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。
代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる