【完結】ポツン食らった悪役令息が大っきい人と幸せになる過程

鏑木 うりこ

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19 黙っている訳がない

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「サウラス公爵、シシル子爵。聖女様はお二人の子息のことを思って我が息子に危害を加えたとのことですが、お二人は子息にどういう伝え方をしておったのですかな? 非常に遺憾でありますが?」
「サウラス家では確かにリズティーアの立ち位置は微妙な物になっております。多額の慰謝料、迷惑料をお支払いしましたがそれは我が息子が悪い……アウラリス殿にはなんの非もない。素晴らしき婿入り先まで失ったのもすべてリズティーアの不徳のいたす所」
「シシル子爵家としてもアウラリス様、ディーズ家に恩はあれど、不満など何もありません。契約を破ったから、養子縁組を破棄された。最初からその取り決めでありましたし。それに、卒業までの学園費用もディーズ家で負担していただき、それは請求しないとの温情までいただいております。今までディーズ家からいただいたお手当で何不自由なく暮らしていたのがなくなり、食事が質素になったり、衣服の快適度が下がっただけなのに……」

 今回の件で流石に父上が動いた。城で聖女様の後見人となっている王太子殿下とサウラス公爵、シシル子爵を呼び出し説明を求めたのだ。

「ディーズ侯爵、アウラリスの容体は」
「三日三晩うなされておりました。熱は腕を強く引かれたための負傷によるものでしたがあまりにひどいなじりに心が疲弊したようです……しかも床に何時間も座らされていたとか。一緒にいてくれた友人が涙ながらに詳細を教えてくれまして……怒りが抑え切れません」
「……し、しかし……聖女はまだこちらの世界に来たばかり」
「何度も! 何度も、何度も! イェルソン騎士団長子息に注意されていますよね?! 忘れたとは言わせませぬぞ、その度に報告書をあげさせていただいております故! なんなら写しをお持ちしました、何十枚あるとお思いか!」

 バサァッと書類を父上は投げつけたらしい。これには王太子殿下も口をつぐんだようだ。

「せ、聖女キミヒトのいうことにはアウラリスは何を聞いても答えないために仕方なくそうしたと……」
「殿下! 我が息子に心がないとお思いかっ! あれ程の無体を強いられ、アウラリスがほんの少しでも聖女様のことを恨まなかったとでも思っておられるのか!! アウラリスは常に言っておりました、聖女様に少しでも不快な思いをさせたくない。けれど、自分が口を開けば、きっと恨み言を申し上げてしまう……だから、口を閉ざしていると! 少しでも漏れ出てしまえば際限がなくなってしまいそうだと! 自分の心より聖女様が快適に過ごせることに苦心しているというのに、それすら汲んでいただけないか!」
「そ、それは……」

 父上以外が言い淀む中、言いたいことすべてをぶつけて来てくれたようだ……やはり父上は頼りになる!

「貴族の子息であれば学園を卒業できないのは以降の人生において落伍者の印を押される、故にサウラス公爵子息もシシル子爵子息も学園を去れとは言いますまい。しかし私個人としては二度とアウラリスの前に現れて欲しくないっ!」

 私もあの二人には会いたくないが、人生を潰したいまでは思っていない。

「……肝に銘じます……」

 シシル子爵は下を向いてつぶやいたそうだ。公爵家のリズティーアはまだ留学をするとか、色々選択肢はあるが、あまり裕福でないシシル子爵家は学園から追い出されたら大変な目に遭うだろう……そうでなくてもダレンの先はあまり明るくない。聖女に運命のつがいとして選ばれれば問題ないが、捨てられたら……平民と同じ生活になるだろう。うちでしっかり経営のことなどを学んでいるはずだから、少しは良い生活ができるだろうけど、ディーズ侯爵家で送るはずだった生活とは雲泥の差だろう。また、ダレンがシシル子爵家に送っていた仕送りもできなくなるだろうし、ディーズ侯爵家から送っていた支援金も届かなくなっている……でも仕方がない事だと思う。

「あ、あの……もし、よろしければ……ダレンの兄弟の誰かをまたディーズ侯爵家に……」

 流石に父上はシシル子爵を睨みつけたようだ。

「一度裏切ったものを二度と信用できないんですよ、分かりますか? その信用ならぬ者の近縁を? 冗談も休み休み言ってください」
「し、しかし……我が家はその赤字で、このままでは学園に通わせる金も……」
「契約の違約金を請求し直しても良いのですぞ?!」
「ひいっ! それだけはご勘弁を! そんなことをされては今すぐ爵位を売って一家離散しても足りませぬ!」

 シシル子爵も図々しいことを言わなきゃいいのに。

「それに、アウラリスが奮起しましてな。家の仕事について学ぼうとしませんでしたが、今ではすっかり勉強も捗り学んでいる……補佐など必要ないくらいですよ」
「な、なんと……」

 そうなんだ、やってみるとそんなに難しいことじゃなくて、休みの日には父上の書類整理を手伝ったり、視察に同行したりして仕事もわかってきたんだ。
 あと、ヨキシャとレンスンも学園卒業後にうちで働いてもらおうと思って今から色々手伝ってもらっているから大丈夫なんだ。



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