【本編完結済】ポツン食らった悪役令息が大っきい人と幸せになる過程

鏑木 うりこ

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26 比べてみてしまうのは仕方がないよね?

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「アウリー、いってらっしゃい。ヨキシャ、レンスン、頼んだよ」
「行ってまいります、アロウ様」
「はいっ頑張りますっアルバルスト様っ」
「がんばりまーす!」

 アロウ様は……なんというか過保護だ。私達が学園に向かう馬車にいつも同乗してきて校門まで送ってくれるし、帰りはかならず迎えにきている。

「分かってくれるかと思うんだけど、心配なんだ」
「……はい……っ」

 聖女の鮫島君はまだ諦めていないようで、あちこちで私に話しかけるタイミングを狙っているように見える。どうしてここまで追いかけてくるのか分からない……そっちはそっちでゲームの内容を進めればいいのに。

「あの聖女、私は好きじゃないし」
「はは……」 

 まだ他国民であるアロウ様ははっきり口にする。確かに初対面から印象は良くなかったから、気に入らないのは当たり前かもしれない。それにこうやって送ってくれている時にも何度も鉢合わせし、その度にアロウ様は眉を顰めている。

「今日もあの邪魔なデカブツがいる……」

 そんなことを言われ続けたら、好きになることはないだろう……でもアロウ様が鮫島君を冷たい目で見ることに、私は安堵を覚えていた。きっと少し顔に出ていたんだろう、ある日アロウ様に尋ねられてびっくりした。

「アウリー? ご機嫌だね。君はあの聖女を快く思っていないのに、どうしてそんなに嬉しそうなんだい?」
「えっ?! あ……」

 本当に不思議そうに尋ねられて、恥ずかしかったけれど、この人になら素直にいっても大丈夫だという謎の安心感から喋ってしまった。

「あ、あの……アロウ様なら聖女様を……好きにならないと思うと……もう奪われないって安心できるというか……すみません、ちょっと不謹慎ですね」

 口に出してからなんてことをいったんだと自覚して俯いてしまったら、思いっきりぎゅーっと抱きしめられた。

「ああ! 私の婚約者はなんて可愛いんだ! 美しくて可愛いなんて反則だろう! 私はアウリーのこと、絶対離さないからね!」
「……はいっ」

 ぷにっとした胸肉にほとんど埋まりかけたけれど、全然苦しくない。頼り甲斐もあるし、あったかくてやっぱりいい匂いがする……この人と一緒にいると、リズティーアのことなんてどうでもよくなってくる。つい二人を比べてリズティーアって本当に私のことを大切に思ってくれてなかったんだなぁって呆れた気持ちになる。会う時も義務みたいな月一のお茶会だったし、その時も二人っきりじゃなくてダレンが現れて二人で話をしていたり。お出かけもほとんどしていないし、買い物にいっても好きな物を買うといいよ、しかいわなかった。
 しかも買い物の支払いはディーズ家だったし……そりゃ自分の家で支払うなら好きな物を買うけど。それでもアウラリスはリズティーアと出かけるショッピングは楽しみにしていた。

 アロウ様は資産もかなりお持ちらしいし、すぐにディーズ家の経営にも参加してくださっていて、こちらの国でも儲けの算段をつけたらしい。よく買い物に誘ってくださって、色々な小物から大きなものまで買ってくれる。髪飾りが似合うとかスカーフがいいとか、靴はこっちがいいとか……全部、私に似合うし色味も金色と紫が入っていてあからさまに主張しつつもセンスはいい。

「紫……?」
「あー……えーと、私ね。目の色が紫なんだよねー……だめかな?」
「いえ! 嬉しいです!」
「うーん、顔は少し痩せようかなぁ……目が埋まってるって自覚はある……」
「可愛いですよ! 私は好きです」
「可愛いのはアウリーだよぉっ!」

 こんなことをお店で繰り返してしまって、そろそろあちこちの店主から笑われそうだ……。でも私とアロウ様の婚約を喜んでくれているようで、とても嬉しくなってしまう。
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