【本編完結済】ポツン食らった悪役令息が大っきい人と幸せになる過程

鏑木 うりこ

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57 ボコール伯爵

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「ワタクシが常に! ええ、このワタクシが常に皆様に訴えかけておりましたように、やはり聖女は不要! 不要なのです! このように大国フィーラの方も仰って下さっております! 聖女は不要! 皆様、ご理解頂けましたか!」

 一度見たら忘れないでその容姿、ボコール伯爵だ。声は初めて聞くことになったけれど、何とも心をざわつかせる嫌な声だ……。

「っ?! 伯爵、何をいうのだ……」
「王太子殿下! ワタクシは何度も訴えておるではないですか、聖女は不要と! その本当に必要かどうか分からない聖女にかける金があるなら、それを国内の事業に使ってはどうかと。特に我が領を通る街道の整備など……要望書も何度も送っておりますぞ! 今日はそのお話をするためにわざわざやってきたのですぞ!」
「それはできぬと何度も返答しておりますよ!」
「いやはや、しかしながらぁ? こうして、大国のお方も申されておるではないですかぁ? 聖女など不要。聖女はいらぬ、排除して然るべきとぉ? それを無視して良いのですかなぁ? よくないですよねぇ? 何せフィーラは大国、そこの尊きお方のお言葉ですよぉ?!」

 だ、だめだ、駄目だ駄目だ……! 私はアロウ様にしがみついたまま、震え始めた。こいつは、この男は駄目なんだ。
 この一度見たら忘れられないこの男は……ゲームで見たんだ。聖女に罵詈雑言を浴びせるアウラリスの後ろに控えるアウラリスの父のその後ろで気味の悪い笑みを浮かべるこの男を。
 ゲームでも確かにアウラリスは聖女のことを目の敵にしていた。だけれども最初は婚約者と義兄を奪われたから、それを取り戻そうとして動いていた……それなのに、いつの間にかディーズ家は聖女排斥派の筆頭に祭り上げられていた。それでもアウラリスにとってはある程度都合が良かった、だからそのまま否定はせずに排斥派の力を借りたこともあった。
 でも絶対にこの世界に聖女は必要な存在なんだ。ゲームでアウラリスとディーズ家が断罪された大きな理由が聖女が不必要と排斥派貴族の筆頭だったからだ。このボコール伯爵が最初に言い出したのに、いつの間にかディーズ家が旗頭となり……聖女の活動を邪魔したことになり……魔王が復活してしまうのだ。
 そして復活した魔王はたくさんの被害を出す……最終的には聖女とその一行に倒され封印されるが、人々の怒りはディーズ家に向けられる。それがアウラリスとディーズ家の没落の大きな要因になる。
 そんな運命に逆らう為に、私とディーズ家は鮫島君を否定しなかった。あれだけ理不尽な物言いにも黙って耐えた。それはひとえにディーズ家を聖女排斥派に加えない為だった。それが功を奏して今は中立、もしくは擁護寄りと言われている。
 だからまさかあのボコール伯爵が我が家ではなく、キリアスラル殿下、ひいてはフィーラ王家にすり寄るなんて思ってもみなかった。

だめ、駄目だ……。

 ボコール伯爵は酷く口が立つ。今だって殿下はそこまで鮫島君を否定していないし、排斥派でもないのに、まるでフィーラ王家が聖女の排斥を進めているみたいな論調に持って行かれている。

「ねぇ、皆さん。聖女に我が国はいくら金をかけているかご理解しておられるか? 安い金じゃあないですぞ? そんな無駄金を使うくらいなら、その金でフィーラ国に援助を求めた方がよいとは思いませぬかぁ?? 殿下、殿下もそう思われますでしょっ」
「……」

 キリアスラル殿下に揉み手をしながら笑いかけるボコール伯爵……駄目です、駄目なんです! そいつに何か言えば言葉端を捕まえて事実を歪め、湾曲され吹聴される。ボコール伯爵はそういう人間なんです!!



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