【本編完結済】ポツン食らった悪役令息が大っきい人と幸せになる過程

鏑木 うりこ

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「そうよ、あなたよ! わたくし達は新しいアルバルスト様の婚約者とかいうどこかの田舎の馬の骨が我が国にやって来るという情報を秘密裏に入手しましたからね! それで見張っていたら案の定ですわぁ」
「えええ~……」

 騎士の中でも私の容姿を知らない者は何名もいただろうが、皆首を傾げている。だって私、アウラリス・ディーズは水色の髪に青い目なのだ。それなのに指を差され困って汗をかいているレンスンはくすんだ金髪。まったく違う……どこでそうなったのか知らないけれど、フォッフ公爵令嬢はあまり高くない潰れ気味の鼻息を荒くして続ける。

「なんて地味な顔! なんて貧相な体付き! 本当にコレで侯爵令息かしらぁ?! 信じられませんわぁ~! しかも絶世の美貌のオメガなんて何の冗談かとおもいましたわよぉお~!」

 周りに吹聴するように大声を張り上げるご令嬢……うーん、声は大きいんだな。

「そりゃ侯爵令息でもないし、オメガでもないからなぁ」
「ヨキシャ! 訂正してあげてよ!」
「やだよ、関わりたくない」

 ぼそぼそと囁き合うヨキシャとレンスンの声は令嬢には届かない。

「ですからぁ! アルバルストさまはぁわたくしと、ね? 大丈夫ですわぁ、今度はちゃんと我慢しますからぁ~。ああほんと、どうしてそんなモンスターみたいに大きいのかしらぁ? 子供の頃はそうでもなかったのにぃ嫌になるわぁ~~」

 大仰に、そして私は悪くない、むしろ被害者だと言わんばかりの令嬢のため息に、カッと怒りが湧き上がった。

「我慢……? モンスター……? あの物体は何を言ってるんだ……ムカつく……」

 何か頭の何処かで怒りと共にカチリとスイッチが入った気がする。ムカつくなんて言葉、今の私はそんなに使わない……そう、ゲームの悪役令息アウラリスが良く口にしていたセリフが何の違和感もなく湧いてくる。馬車から出て、あのちんちくりんな桃のような物体を思う存分罵ってやりたい。
 馬車の椅子から立ち上がりかけた瞬間、低いアロウ様の声が聞こえて来た。

「最初から言っていた。フィーラの血を受け継ぐ我ら王族は背も高く、体も大きくなると。それでもそちらから是非にと請われての婚約だったはず。誓約書にも体の大きさ故の婚約破棄は絶対に認めないとしっかり明記されていたのに、それをも破って婚約破棄した……いい加減にするんだ」

 心の底から軽蔑している……あんな声、私に向けられたら絶対心臓が止まってショックで死んでしまうに違いない。一瞬入った私の悪役令息スイッチもしなしなと萎れてあっさりオフになった……。

「でもぉ~我が家はアルバルスト様がいなくなってぇ~お金がなくなって大変なんですぅ~!」

 あのアロウ様の冷えた感情を突き刺されてもまだ口が開くなんて、ある意味凄いな、あの令嬢は……。

「私にはもう関係ないことだ。確かに小さな頃、婚約を結んでからいずれ結婚し、生活する家の事だからと色々手を尽くして来たがもう必要なかろう……その時の人脈や経営術はディーズ家で役に立ったけれど、もうフォッフ公爵家のために何かすることはない」
「そんなこと言わずに~。そんな貧相で可愛らしくも何ともない婚約者なんて捨てて、またわたくしと暮らしましょう? 絶対それがいいわ、決まりよぉ~決まり! そして我が家にお金を運んできてちょうだい~~」

 またあり得ない酷い事を言っている! やっぱりあいつ、ムカつく! 絶対這いつくばらせて泣かせてやるっ! また悪役令息スイッチが入る。許さないっ!!このアウラリス・ディーズに逆らうとはいい度胸だって大声で叫んでやる!
 

 
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