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89 要らないものを差し出されても困ります
しおりを挟む晩餐会にはたくさんのフィーラ料理が並び、色鮮やかでどれも大盛りだった。
「その茄子を巻いた黒火牛の焼き物が美味しくてね、好きなんだ」
「食べたいです!」
「うんうん、このピリ辛ポテトもつけようね、美味しいよ」
「頂きます!」
あまり馴染みのないフィーラ料理だったけれど、アロウ様が好きなら私も食べてみたい! あれやこれやお皿にいただいて端から味わって行く。うーん、美味しいっ!
「食べてる姿も可憐だねぇ」
「上品だねぇ、ちっちゃいお口だ」
「我々より所作がきれいだ……ミラとミルはアウラリスちゃんを見習ったら良いんじゃない? 我らじゃガサツでダメだろ」
お料理は美味しいんだけれど、ご弟妹様の視線が……ちょっと多い……。ミラジェンダル様とミルフェリア様は、まあ良い……まだ10歳だし、物珍しくて私を観察したいのも分かるし、微笑ましい。問題はお三方、クォリシュア様とウェングリエフ様とストルフトラム様だ……視線を感じて目を上げると必ず合う。ということはお三方ともずっと私の方を見ていると言うことだ。
「クオ、ウェン、ストル。いい加減にしなさい。あなた方がどう頑張ってもアウラリスはあなた方の方を向きませんよ」
「でもゴルチェ義姉上」
「そうなんですよ、ゴルチェ義姉上」
「どうしても気になっちゃうんです、ゴルチェ義姉上」
「でもダメです!」
王妃殿下が少し強めに言ってくれても、お三方からの視線が途切れることがなくて、ずっと緊張してしまう……どうしよう。
「はあ……盗んでしまいましたね、アウラリスは」
「ん? アウラリスは何もしていないだろう? それにあの子が欲しい物があれば大抵の者は我先にと差し出すであろう? 何であっても」
「アウラリスが欲しくない物まで差し出されているから、あの子は困っているんですよ、あなた。あなただってあの子に王冠をあげようとしてたじゃないですか」
頭が痛いと言うように王妃殿下はため息をつき、シュバル国王陛下は首を傾げる。
「うん、そうだなぁ~でもアウラリスは要らないって言ったし」
「品物ならそれで良いのですよ……恋心と言う厄介な物を差し出されても困るだけでしょうに」
「ん??」
「はあ……アウラリスにはやはりフードを被せておいた方が良いのかもしれませんわね」
「んんん??」
つい耳に入ってしまった王妃殿下の呟き……えっ?! 私ってばお三方からそんな視線を向けられてたの?! す、凄く困る……。
「兄弟だからね……好みは似るんだけれど……ゴルチェ義姉上がいるシュバル兄上と自制が効くキリアス兄上は大丈夫だが……まったく、あの子らと来たら……もっとくっ付いてて、アウリー」
「はいっアロウ様っ」
お行儀が悪いことこの上ないけれど、アロウ様は椅子を私の方へ近づけてぴったり横にくっついてくれた……これなら安心だ。
「ほへぇ~これが有名な恋泥棒ってやつですかぁ~流石アウラリス様ですぅ~」
「何それ?」
「少し前に女性達が嗜む小説で流行ったんだよ、ヨキシャ。一目惚れのなんか凄いやつらしい」
「ほー? 流石アウラリス様だなぁ!」
「だよねぇ!」
そんな褒められ方をしても嬉しくも何ともないよ、二人とも! やっぱり少しだけもちもちが減ったアロウ様の横腹にぴったりくっ付いた。
「少し減りました」
「あー、違うんだ。アウリーに出会う前に結構体重が増えたんだよ。王家の人間としての務めを果たせなかった苛立ちから暴飲暴食をしたんだ。それがアウリー達との楽しい生活で元に戻っただけ。駄目かな?」
「駄目なことなんて何もないです! たとえアロウ様がぷくぷくになってもガリガリになっても駄目じゃないです……けど」
「けど?」
「ガリガリはくっつくと痛そうだから……ちょっと嫌かもしれません」
やっぱり安心できるこの感じが好きだなぁ~。
「ガリガリにはならないよ! だってアウリーといたらこんなに幸せなんだもの。そんな風になるわけないだろう?」
「ふふふ、嬉しいです」
やっぱりアロウ様が大好きだ~!
「取り入る隙間なんて何もないのに……いっそ哀れね」
王妃殿下の視線はお三方を捉えていたけれど、私にできることは何もなかった。
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