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7周目 人間をやめるぞおおおお?
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騒ぎが起こった。執事の狼男のガレンさんが連れて来た女性。どんな方法でかは聞かなかったが、その人が屋敷の地下に閉じ込められると一緒に、招かれざる客が闇に紛れて潜り込んだようだという。
「テリオス様の足元にも及びませんが、どこぞの中級の吸血鬼が領内にいるようです」
「目ざわりですね、消しておきなさい」
「はっ」
ガレンさんは恭しく頭を下げて消えた。広い領内で狩りをするんだろう。主人たるテリオス様のレベルが高いので、下僕のガレンさんも伸びていてかなりの強さだという。
俺には強いんだろうな!ってことしか分からない。次元を超えすぎているとさっぱりだ、ってやつだ。
「アルトゥス、一応警戒しておくように。必ず私の傍にいなさい」
「言われなくてもずっとお傍におりますよ」
そうですね、と俺を抱き寄せて指先に口づける。ああ、なんて冷たい口づけだ。でもそれが気持ちいいんだ。腕も足も体も全部体温を失っている吸血鬼。そのひやりとした肌が俺は大好きだった。
「テリオス様、少し厄介な相手で……」
しばらくして戻って来たガレンさんの服は裂けていた。
「ふむ、アルトゥスは屋敷から出ぬように」「はい」
ほんの一瞬だけ、俺はテリオス様から離れた。それがいけなかったようだ。
「テリオス……さま……」
「アルトゥス!あれほど離れてはいけないと」
俺はあの一瞬で、庭の端の木が生い茂る森との境目に誘導されてきていた。何が起こったか俺には分からなかったが、気が付いたらこの薄暗い森の中から、明るく日の差すバラ園をみていたんだ。
「たすけて……たすけて、テリオスさま……」
暗がりの中からテリオス様を呼ぶけれど、眷属でもなんでもない俺の声はなかなか届かない。
俺が傍に居ない事に気が付いたテリオス様がかすかな俺の声を拾ってくれたようだ。
「アルトゥス、そんな所にいないで出てきなさい、早く」
「……ううっでも……てりおすさま……」
命令は絶対だ、逆らえないし逆らってはいけない。でも、でも、でもテリオス様……。
「アルトゥス!」
「はい、テリオス様」
俺はバラ園へ、陽の光が差す中へ体を投げ入れた。
「アルトゥス!!」
「はい、テリオス様」
熱いな、とても熱い。今まで気持ちよいと感じていた陽の光はこんなに熱い物だったんだ。叫び声はあげたくなかった。熱くて痛いけれど、俺がギャーギャー騒いだら迷惑だろう?
「テリオス様!!ヤツの眷属化したメイドが!」
「アルトゥス!?まさか噛まれたのか!」
俺のいた薄暗い森の茂みから、メイドが一人陽の光の中へ放りだされた。
「ギャアアアアアアア!!」
燃えている、太陽の熱に焼かれる吸血鬼。テリオス様くらい特別な吸血鬼になれば平気だけど、そうではないもの、しかも噛まれて下僕となった吸血鬼なんかはこうなる。
さっきのメイドに噛まれてしまった俺も。
「すみません、気が付いたらここにいて……俺、逃げられなくて……」
嚙みつかれた痛みで正気に戻ったようなものだった。
「アルトゥス!」
「すみません、子供、産んであげられなかっ……」
ぼろり、と俺が崩れた。その先はもう何も分からない。熱さも痛みも何もなくなった。いいんだ、俺は大好きなテリオス様の腕の中で死んだんだから。
「私が、出て来いと言ったから、アルトゥスは陽の中に出て来て、燃えてしまったのだな」
テリオスは呟き、ガレンはそれに答えることはせずにただ、額を大地にこすりつけて平伏する。
「ガレンよ、まずは敵を捕らえよ。生きたまま連れてこい。どこの誰かわからんが、私の物に手を出した報いは受けてもらわねばならぬ」
「御意にて!」
ガレンは必死で駆け出した。今のテリオスは薄皮一枚で静かなだけだ。すぐにこの一帯は焦土と化すだろう。そしてそれを止められるものはこの世にはいなくなってしまった。
「アルトゥス、お前と永久の時を越えるのはきっと楽しかったであろうな。楽しみにしすぎて期を逸したな」
さらさらと白い灰をテリオスは空に撒く。足元には質の良いアルトゥスに着せていた服がそのまま落ちている。
「面白い人間であった。もうあのような者には会えぬのであろうな」
そしてくるりと背を向けた。咲き誇っていたバラがテリオスを中心に茶色に枯れ始める。全てから命を吸い上げていた。
「私はよほどアルトゥスが気に入っていたようだな、怒りでままならぬ。すまぬな、世界よ。この私の怒りをぶつけさせておくれ?」
テリオスは世界に宣戦布告し、血みどろの死者の時代が幕を開ける事となった。
7周目「神祖返り」吸血鬼テリオス編 おわり
「テリオスさまぁ……」
「アッーーー!お兄ちゃんが脳改造から戻ってない!はこべ先生!はこべ先生!お兄ちゃん治すの手伝ってぇ!」
「アヒャー!てりおっちにやられたもんねえ!手伝う手伝う!んでさ、次は産卵しようぜ!?」
「さ ん ら ん 」
「テリオスさま~うふふ~あはは~」
「テリオス様の足元にも及びませんが、どこぞの中級の吸血鬼が領内にいるようです」
「目ざわりですね、消しておきなさい」
「はっ」
ガレンさんは恭しく頭を下げて消えた。広い領内で狩りをするんだろう。主人たるテリオス様のレベルが高いので、下僕のガレンさんも伸びていてかなりの強さだという。
俺には強いんだろうな!ってことしか分からない。次元を超えすぎているとさっぱりだ、ってやつだ。
「アルトゥス、一応警戒しておくように。必ず私の傍にいなさい」
「言われなくてもずっとお傍におりますよ」
そうですね、と俺を抱き寄せて指先に口づける。ああ、なんて冷たい口づけだ。でもそれが気持ちいいんだ。腕も足も体も全部体温を失っている吸血鬼。そのひやりとした肌が俺は大好きだった。
「テリオス様、少し厄介な相手で……」
しばらくして戻って来たガレンさんの服は裂けていた。
「ふむ、アルトゥスは屋敷から出ぬように」「はい」
ほんの一瞬だけ、俺はテリオス様から離れた。それがいけなかったようだ。
「テリオス……さま……」
「アルトゥス!あれほど離れてはいけないと」
俺はあの一瞬で、庭の端の木が生い茂る森との境目に誘導されてきていた。何が起こったか俺には分からなかったが、気が付いたらこの薄暗い森の中から、明るく日の差すバラ園をみていたんだ。
「たすけて……たすけて、テリオスさま……」
暗がりの中からテリオス様を呼ぶけれど、眷属でもなんでもない俺の声はなかなか届かない。
俺が傍に居ない事に気が付いたテリオス様がかすかな俺の声を拾ってくれたようだ。
「アルトゥス、そんな所にいないで出てきなさい、早く」
「……ううっでも……てりおすさま……」
命令は絶対だ、逆らえないし逆らってはいけない。でも、でも、でもテリオス様……。
「アルトゥス!」
「はい、テリオス様」
俺はバラ園へ、陽の光が差す中へ体を投げ入れた。
「アルトゥス!!」
「はい、テリオス様」
熱いな、とても熱い。今まで気持ちよいと感じていた陽の光はこんなに熱い物だったんだ。叫び声はあげたくなかった。熱くて痛いけれど、俺がギャーギャー騒いだら迷惑だろう?
「テリオス様!!ヤツの眷属化したメイドが!」
「アルトゥス!?まさか噛まれたのか!」
俺のいた薄暗い森の茂みから、メイドが一人陽の光の中へ放りだされた。
「ギャアアアアアアア!!」
燃えている、太陽の熱に焼かれる吸血鬼。テリオス様くらい特別な吸血鬼になれば平気だけど、そうではないもの、しかも噛まれて下僕となった吸血鬼なんかはこうなる。
さっきのメイドに噛まれてしまった俺も。
「すみません、気が付いたらここにいて……俺、逃げられなくて……」
嚙みつかれた痛みで正気に戻ったようなものだった。
「アルトゥス!」
「すみません、子供、産んであげられなかっ……」
ぼろり、と俺が崩れた。その先はもう何も分からない。熱さも痛みも何もなくなった。いいんだ、俺は大好きなテリオス様の腕の中で死んだんだから。
「私が、出て来いと言ったから、アルトゥスは陽の中に出て来て、燃えてしまったのだな」
テリオスは呟き、ガレンはそれに答えることはせずにただ、額を大地にこすりつけて平伏する。
「ガレンよ、まずは敵を捕らえよ。生きたまま連れてこい。どこの誰かわからんが、私の物に手を出した報いは受けてもらわねばならぬ」
「御意にて!」
ガレンは必死で駆け出した。今のテリオスは薄皮一枚で静かなだけだ。すぐにこの一帯は焦土と化すだろう。そしてそれを止められるものはこの世にはいなくなってしまった。
「アルトゥス、お前と永久の時を越えるのはきっと楽しかったであろうな。楽しみにしすぎて期を逸したな」
さらさらと白い灰をテリオスは空に撒く。足元には質の良いアルトゥスに着せていた服がそのまま落ちている。
「面白い人間であった。もうあのような者には会えぬのであろうな」
そしてくるりと背を向けた。咲き誇っていたバラがテリオスを中心に茶色に枯れ始める。全てから命を吸い上げていた。
「私はよほどアルトゥスが気に入っていたようだな、怒りでままならぬ。すまぬな、世界よ。この私の怒りをぶつけさせておくれ?」
テリオスは世界に宣戦布告し、血みどろの死者の時代が幕を開ける事となった。
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「テリオスさまぁ……」
「アッーーー!お兄ちゃんが脳改造から戻ってない!はこべ先生!はこべ先生!お兄ちゃん治すの手伝ってぇ!」
「アヒャー!てりおっちにやられたもんねえ!手伝う手伝う!んでさ、次は産卵しようぜ!?」
「さ ん ら ん 」
「テリオスさま~うふふ~あはは~」
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