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アルプラゾラム王国編
フェノバール公爵夫人
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しばらくしてミッシェル殿下からフェノバール公爵夫人の乗った船がアルプラゾラム王国の港に停泊するのでその間に会えるから一緒に行こうと誘われた。
もちろん断る理由もない。
港に着くと大きな客船が止まっていた。
「あの船ですか?」
「ああそうだよ。世界を3ヶ月かけてゆっくりまわるんだ。船の中は巨大なホテルのようになっているそうだよ。行こう」
私はミッシェル殿下に手を引かれ船に乗り込んだ。
外から見ていても凄かったが中も凄い。船中とは思えない。
ミッシェル殿下は船の中の来客者用のサロンで会う約束をしているという。
サロンは個室になっていて受付で名前を言うと取り次いでくれ、確認が取れると案内してくれる。
サロンでミッシェル殿下とふたりで待っていると、ものすごくキラキラした美形のおじさまと小柄でとても可愛い感じの女性が現れた。
「フェノバール公爵、並びに夫人、ご無沙汰しています」
ミッシェル様が立ち上がり挨拶をした。
「久しぶりですね。今日はミディアと約束をされていたようですが、ついてきてしまいました。おじゃまですかね?」
この人が狭量な公爵か。なるほどミッシェル殿下を威嚇してるわ。夫人はそれを見て呆れた顔をしている。
「とんでもこざいません。公爵にも来ていただいて感謝です」
殿下の話ではフェノバール公爵は元々はノルスバン国の王族で今の女王とプレジデントのお父様だという。ミッシェル殿下もフェノバール公爵閣下も、どちらも高貴な人だったのね。
ミッシェル殿下が私の紹介を始めた。
「こちらはミオリア・リスミー侯爵令嬢です。ミディア様に是非とも紹介したく連れて参りました」
「ミオリア・リスミーでございます」
私はカーテシーで挨拶をした。
「まぁ、可愛いわね。ミディアローズよ。ミッシェル殿下からお話は聞いているわ。大変だったわね」
夫人はとても人懐っこい笑顔で私の緊張を解きほぐしてくれている。
私は今まで私に起こった生まれ変わりの話を自分の口からもう一度話した。
にわかに信用してはもらえないと思うけど、この人は全てを受け入れてくれるような気がした。
「生まれ変わりなのね」
「はい、にわかには信じ難いと思います」
「どうして信じ難いの? 信じるわよ。うちの嫡男とそのお嫁ちゃんとそこの嫡男も生まれ変わりだし、三男とそのお嫁ちゃんも転生者よ。嫡男家族はあなたと同じ大昔の自分の生まれ変わりで三男夫婦は違う世界の全く違う人の生まれ変わりなの」
え? 生まれ変わりってそんなに沢山いるの? しかもこの人、それが普通のことみたいに話す。
私は驚いて固まってしまった。
「ミディア、普通の人にいきなりそんなことを言っては驚くよ、もっとゆっくり話してあげなさい」
公爵閣下がミディアローズ様の肩にふれた。
「ごめ~ん、そうね。こんなこと言ったらびっくりしちゃうわよね。でも我が家ではこれが普通なのよ。ちなみに長女と次男は神様よ」
は? 神様? もはや理解不能だ。
フェノバール公爵閣下とミッシェル殿下は私を見てクスクス笑っている。
「ね、面白いでしょう?」
ミッシェル殿下は私の顔を覗きこむ。
「は、はい。なんだか悩んでいた私がおかしいみたいに思えてきます」
ミディアローズ様はお茶をひと口飲んでまっすぐに私を見た。
「ふたり分の人生を楽しむのもありだけどメインはあなた、ミオリア・リスミーよ。ミランダ・ノルバスクの記憶は使えるなら使えばいいし、使えないなら勝手に忘れちゃうんじゃ無いかしら?」
「はい、もうミランダの記憶は薄れてしまってほとんどないし、会話もできません。なのにまわりは私をミランダとして見る。辛いです」
ミディアローズ様は頬に手を当て首を少し傾げる。
「ミランダは思い残すことがなくなったから昇華したんじゃないかな? うちの嫡男家族も幸せになってから過去世を思い出さないみたいよ。過去世のスキルや感覚は魂に焼き付いているから、必要な時には出てくるみたい。あなたとミランダもそんな感じかもね。周りはまだ思い残しがあるからあなたにミランダを求めるのね。そんなの自己満足じゃない。ミランダがその人達に何かをして欲しかったのならまだ昇華してないはずよね。ミランダがもういないのだから諦めて解放して欲しいわよね」
私は涙が溢れていた。ミディアローズ様の仰る通りだ。もう私を解放してほしい。
ミディアローズ様は席を立ち私の側に来て抱きしめてくれた。
「辛かったね。よく頑張ったわね。あなたはミオリアよ。ミオリアがやりたいことをすればいい。それをミランダも望んでいるわ。さぁ、ここからはこれからあなたがやりたいことの話をしましょう」
ミディアローズ様は私の頭をぽんぽんと撫でながら優しく微笑んだ。
*ミディアローズ様は
「魅了が解けた元王太子と結婚させられてしまいました。何で私なの? 勘弁してほしいわ」の主人公です。
読んでなくても大丈夫ですが、読んでもらえるて、ミディアの面白さがわかり、よりミオリアに共感できると思います。
ちょっと宣伝してしまいました。
もちろん断る理由もない。
港に着くと大きな客船が止まっていた。
「あの船ですか?」
「ああそうだよ。世界を3ヶ月かけてゆっくりまわるんだ。船の中は巨大なホテルのようになっているそうだよ。行こう」
私はミッシェル殿下に手を引かれ船に乗り込んだ。
外から見ていても凄かったが中も凄い。船中とは思えない。
ミッシェル殿下は船の中の来客者用のサロンで会う約束をしているという。
サロンは個室になっていて受付で名前を言うと取り次いでくれ、確認が取れると案内してくれる。
サロンでミッシェル殿下とふたりで待っていると、ものすごくキラキラした美形のおじさまと小柄でとても可愛い感じの女性が現れた。
「フェノバール公爵、並びに夫人、ご無沙汰しています」
ミッシェル様が立ち上がり挨拶をした。
「久しぶりですね。今日はミディアと約束をされていたようですが、ついてきてしまいました。おじゃまですかね?」
この人が狭量な公爵か。なるほどミッシェル殿下を威嚇してるわ。夫人はそれを見て呆れた顔をしている。
「とんでもこざいません。公爵にも来ていただいて感謝です」
殿下の話ではフェノバール公爵は元々はノルスバン国の王族で今の女王とプレジデントのお父様だという。ミッシェル殿下もフェノバール公爵閣下も、どちらも高貴な人だったのね。
ミッシェル殿下が私の紹介を始めた。
「こちらはミオリア・リスミー侯爵令嬢です。ミディア様に是非とも紹介したく連れて参りました」
「ミオリア・リスミーでございます」
私はカーテシーで挨拶をした。
「まぁ、可愛いわね。ミディアローズよ。ミッシェル殿下からお話は聞いているわ。大変だったわね」
夫人はとても人懐っこい笑顔で私の緊張を解きほぐしてくれている。
私は今まで私に起こった生まれ変わりの話を自分の口からもう一度話した。
にわかに信用してはもらえないと思うけど、この人は全てを受け入れてくれるような気がした。
「生まれ変わりなのね」
「はい、にわかには信じ難いと思います」
「どうして信じ難いの? 信じるわよ。うちの嫡男とそのお嫁ちゃんとそこの嫡男も生まれ変わりだし、三男とそのお嫁ちゃんも転生者よ。嫡男家族はあなたと同じ大昔の自分の生まれ変わりで三男夫婦は違う世界の全く違う人の生まれ変わりなの」
え? 生まれ変わりってそんなに沢山いるの? しかもこの人、それが普通のことみたいに話す。
私は驚いて固まってしまった。
「ミディア、普通の人にいきなりそんなことを言っては驚くよ、もっとゆっくり話してあげなさい」
公爵閣下がミディアローズ様の肩にふれた。
「ごめ~ん、そうね。こんなこと言ったらびっくりしちゃうわよね。でも我が家ではこれが普通なのよ。ちなみに長女と次男は神様よ」
は? 神様? もはや理解不能だ。
フェノバール公爵閣下とミッシェル殿下は私を見てクスクス笑っている。
「ね、面白いでしょう?」
ミッシェル殿下は私の顔を覗きこむ。
「は、はい。なんだか悩んでいた私がおかしいみたいに思えてきます」
ミディアローズ様はお茶をひと口飲んでまっすぐに私を見た。
「ふたり分の人生を楽しむのもありだけどメインはあなた、ミオリア・リスミーよ。ミランダ・ノルバスクの記憶は使えるなら使えばいいし、使えないなら勝手に忘れちゃうんじゃ無いかしら?」
「はい、もうミランダの記憶は薄れてしまってほとんどないし、会話もできません。なのにまわりは私をミランダとして見る。辛いです」
ミディアローズ様は頬に手を当て首を少し傾げる。
「ミランダは思い残すことがなくなったから昇華したんじゃないかな? うちの嫡男家族も幸せになってから過去世を思い出さないみたいよ。過去世のスキルや感覚は魂に焼き付いているから、必要な時には出てくるみたい。あなたとミランダもそんな感じかもね。周りはまだ思い残しがあるからあなたにミランダを求めるのね。そんなの自己満足じゃない。ミランダがその人達に何かをして欲しかったのならまだ昇華してないはずよね。ミランダがもういないのだから諦めて解放して欲しいわよね」
私は涙が溢れていた。ミディアローズ様の仰る通りだ。もう私を解放してほしい。
ミディアローズ様は席を立ち私の側に来て抱きしめてくれた。
「辛かったね。よく頑張ったわね。あなたはミオリアよ。ミオリアがやりたいことをすればいい。それをミランダも望んでいるわ。さぁ、ここからはこれからあなたがやりたいことの話をしましょう」
ミディアローズ様は私の頭をぽんぽんと撫でながら優しく微笑んだ。
*ミディアローズ様は
「魅了が解けた元王太子と結婚させられてしまいました。何で私なの? 勘弁してほしいわ」の主人公です。
読んでなくても大丈夫ですが、読んでもらえるて、ミディアの面白さがわかり、よりミオリアに共感できると思います。
ちょっと宣伝してしまいました。
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