8 / 21
ランス様が隣国に出かけました
しおりを挟む
今日からランス様は王太子殿下のお供で隣国へ行く。1ヶ月くらい留守にするらしい。
王太子殿下が王女を娶る前に国王や王妃様に挨拶に行くらしい。
ランス様は側近、そして護衛としてついていくのだそうだ。
私は閨事から解放され、しばらくひとりでゆっくりできるとウキウキしていた。
昨夜は旅立つ前ということもあってか、いつもより激しくこってり濃い閨事だった。この2週間、毎日大変だったが少し慣れたつもりの私をあざ笑うくらいのヘビーさだった。
やはり騎士の体力は普通じゃない。もし生まれ変わることがあるなら、今度は絶対文官と結婚しよう。騎士はもう懲り懲りだ。
鉛のような重い体を引きずり、なんとかドロシーに着替えを手伝ってもらい、ヘアメイクもばっちりし、旅立つランスロット様の見送りに玄関ポーチまで来た。
「ランス様、いってらっしゃいませ」
「うん」
また「うん」かよ。
ランス様は私をじっと睨んでいる。ちょっと怖いんですけど。せっかく辛い身体で頑張って見送りに来たのに、優しい言葉もないし、優しい顔が無理ならせめていつもの無表情でお願いします。睨まれたらさすがに心が折れるわ。
「では……」
ランス様は馬に乗り、王宮に向かった。
「やっと行ったわね」
お義母様は苦笑いをしている。
「さぁ、お茶にしましょうか? べべちゃん、身体は大丈夫? 辛かったら休んでいいのよ」
優しい言葉はうれしいが、ちょっと恥ずかしい。私の身体が辛い原因が原因だからね。
「大丈夫ですわ。ランス様がしばらくお戻りにならないかと思ったら元気が出ました」
あっ、失言だわ。あんなのでも、お義母様には息子だもんね。
私は思わず手で口を押さえた。
「いいのよ。わかるわ。ランスは粘着質ですものね。全く誰に似たのだか。旦那様も私もどちらかといえばさっぱりしているし、オリヴィアはあの通りだしね。ささ、ランスがいない間に食べようと思って今流行っているお菓子を買ってきたのよ。食べましょうね」
ランス様が行った後、サロンでお義母様とお茶をしている。この家に嫁いできて、こんな時間に起きていてお義母様とお茶なんて初めてだ。
「そうだ、べべちゃん、王妃様があなたが着ていたウエディングドレスと夜会のドレスの刺繍が物凄く素敵だったとおっしゃってね。それでね、殿下の婚約者に刺繍をしたドレスを贈りたいそうなのよ。ドレスに刺繍をしてほしいそうなのだけどダメかしら?」
「隣国の王女様ですよね?」
お嫁さんになる方のプレゼントに私の刺繍をなんて感激だわ。
「私の刺繍でよろしければいつでも刺させていただきますわ」
私の答えにお義母様はうれしそうだ。お義母様と王妃様は姉妹なのだ。お義母様が妹にあたる。
「王妃様は時間があればお話をしたいので王宮にきてほしいそうなのだけどどうかしら?」
「大丈夫ですわ。しばらくランス様はお戻りになられないし、日時はお義母様におまかせします」
私はお義母様と一緒に王妃様に会いに行くことになった。
王妃様は私の刺繍の上得意様で、夜会やお茶会でさりげなく私の刺繍したものを身につけ宣伝してくれるので、同じようなものが欲しいと注文して下さる方が沢山いて、私は刺繍作家としても結構忙しい。
ただ今はランス様のせいで身体がちょっと辛いので注文はストップしている。これからしばらくランス様がいないので、昼間は小公爵夫人として仕事をし、夜はまた刺繍の仕事をしようかと思っていた。
王妃様はこの世のものとは思えないくらいに美しく、上品で慈愛に満ちている。そんな王妃様と久しぶりにゆっくりお話できるなんて嬉しい。
憧れの王妃様と縁続きになれたことはランス様と結婚して、お義母様の義娘になれたからだ。お義母様も素敵だし、お義姉様もカッコいい。ランス様以外はみんな優しくて、私をとても大事にしてくれる。
だから子供を産むだけのお飾り妻でも構わないのだ。ランス様なんて気にせず、私は私の好きな方々に望まれるまま、好きな刺繍をバンバンしようと思う。
せっかくなのでお土産にハンカチに刺繍をしたものをお渡ししよう。私は早速絹のハンカチに絹の糸で刺繍を始めた。
いよいよ王妃様に会いに王宮に行く日が来た。
髪とお化粧はドロシーが良い感じに仕上げてくれた。そしてお義母様が誂えてくれ、それに私が刺繍を足したドレスにした。
サロンに降りて行くと、お義母様はシンプルなドレスに私が刺繍をした絹のストールを巻いていた。
自分でいうのもなんだが、刺繍のストールめちゃくちゃ素敵。惚れ惚れする。
「お義母様、今日は王妃様のお土産にハンカチに刺繍をしてみたのですが、いかがでしょうか?」
私はハンカチを義母に見せた。
「素敵ね~、べべちゃんの刺繍はいつ見ても惚れ惚れするわ。王妃様きっと大喜びよ」
よっしゃあ~! 心の中でガッツポーズを決める。
私は義母と共に馬車に乗り、王宮を目指した。
王太子殿下が王女を娶る前に国王や王妃様に挨拶に行くらしい。
ランス様は側近、そして護衛としてついていくのだそうだ。
私は閨事から解放され、しばらくひとりでゆっくりできるとウキウキしていた。
昨夜は旅立つ前ということもあってか、いつもより激しくこってり濃い閨事だった。この2週間、毎日大変だったが少し慣れたつもりの私をあざ笑うくらいのヘビーさだった。
やはり騎士の体力は普通じゃない。もし生まれ変わることがあるなら、今度は絶対文官と結婚しよう。騎士はもう懲り懲りだ。
鉛のような重い体を引きずり、なんとかドロシーに着替えを手伝ってもらい、ヘアメイクもばっちりし、旅立つランスロット様の見送りに玄関ポーチまで来た。
「ランス様、いってらっしゃいませ」
「うん」
また「うん」かよ。
ランス様は私をじっと睨んでいる。ちょっと怖いんですけど。せっかく辛い身体で頑張って見送りに来たのに、優しい言葉もないし、優しい顔が無理ならせめていつもの無表情でお願いします。睨まれたらさすがに心が折れるわ。
「では……」
ランス様は馬に乗り、王宮に向かった。
「やっと行ったわね」
お義母様は苦笑いをしている。
「さぁ、お茶にしましょうか? べべちゃん、身体は大丈夫? 辛かったら休んでいいのよ」
優しい言葉はうれしいが、ちょっと恥ずかしい。私の身体が辛い原因が原因だからね。
「大丈夫ですわ。ランス様がしばらくお戻りにならないかと思ったら元気が出ました」
あっ、失言だわ。あんなのでも、お義母様には息子だもんね。
私は思わず手で口を押さえた。
「いいのよ。わかるわ。ランスは粘着質ですものね。全く誰に似たのだか。旦那様も私もどちらかといえばさっぱりしているし、オリヴィアはあの通りだしね。ささ、ランスがいない間に食べようと思って今流行っているお菓子を買ってきたのよ。食べましょうね」
ランス様が行った後、サロンでお義母様とお茶をしている。この家に嫁いできて、こんな時間に起きていてお義母様とお茶なんて初めてだ。
「そうだ、べべちゃん、王妃様があなたが着ていたウエディングドレスと夜会のドレスの刺繍が物凄く素敵だったとおっしゃってね。それでね、殿下の婚約者に刺繍をしたドレスを贈りたいそうなのよ。ドレスに刺繍をしてほしいそうなのだけどダメかしら?」
「隣国の王女様ですよね?」
お嫁さんになる方のプレゼントに私の刺繍をなんて感激だわ。
「私の刺繍でよろしければいつでも刺させていただきますわ」
私の答えにお義母様はうれしそうだ。お義母様と王妃様は姉妹なのだ。お義母様が妹にあたる。
「王妃様は時間があればお話をしたいので王宮にきてほしいそうなのだけどどうかしら?」
「大丈夫ですわ。しばらくランス様はお戻りになられないし、日時はお義母様におまかせします」
私はお義母様と一緒に王妃様に会いに行くことになった。
王妃様は私の刺繍の上得意様で、夜会やお茶会でさりげなく私の刺繍したものを身につけ宣伝してくれるので、同じようなものが欲しいと注文して下さる方が沢山いて、私は刺繍作家としても結構忙しい。
ただ今はランス様のせいで身体がちょっと辛いので注文はストップしている。これからしばらくランス様がいないので、昼間は小公爵夫人として仕事をし、夜はまた刺繍の仕事をしようかと思っていた。
王妃様はこの世のものとは思えないくらいに美しく、上品で慈愛に満ちている。そんな王妃様と久しぶりにゆっくりお話できるなんて嬉しい。
憧れの王妃様と縁続きになれたことはランス様と結婚して、お義母様の義娘になれたからだ。お義母様も素敵だし、お義姉様もカッコいい。ランス様以外はみんな優しくて、私をとても大事にしてくれる。
だから子供を産むだけのお飾り妻でも構わないのだ。ランス様なんて気にせず、私は私の好きな方々に望まれるまま、好きな刺繍をバンバンしようと思う。
せっかくなのでお土産にハンカチに刺繍をしたものをお渡ししよう。私は早速絹のハンカチに絹の糸で刺繍を始めた。
いよいよ王妃様に会いに王宮に行く日が来た。
髪とお化粧はドロシーが良い感じに仕上げてくれた。そしてお義母様が誂えてくれ、それに私が刺繍を足したドレスにした。
サロンに降りて行くと、お義母様はシンプルなドレスに私が刺繍をした絹のストールを巻いていた。
自分でいうのもなんだが、刺繍のストールめちゃくちゃ素敵。惚れ惚れする。
「お義母様、今日は王妃様のお土産にハンカチに刺繍をしてみたのですが、いかがでしょうか?」
私はハンカチを義母に見せた。
「素敵ね~、べべちゃんの刺繍はいつ見ても惚れ惚れするわ。王妃様きっと大喜びよ」
よっしゃあ~! 心の中でガッツポーズを決める。
私は義母と共に馬車に乗り、王宮を目指した。
201
あなたにおすすめの小説
君を自由にしたくて婚約破棄したのに
佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」
幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。
でもそれは一瞬のことだった。
「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」
なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。
その顔はいつもの淡々としたものだった。
だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。
彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。
============
注意)ほぼコメディです。
軽い気持ちで読んでいただければと思います。
※無断転載・複写はお断りいたします。
婚約破棄した相手が付き纏ってきます。
沙耶
恋愛
「どうして分かってくれないのですか…」
最近婚約者に恋人がいるとよくない噂がたっており、気をつけてほしいと注意したガーネット。しかし婚約者のアベールは
「友人と仲良くするのが何が悪い!
いちいち口うるさいお前とはやっていけない!婚約破棄だ!」
「わかりました」
「え…」
スッと婚約破棄の書類を出してきたガーネット。
アベールは自分が言った手前断れる雰囲気ではなくサインしてしまった。
勢いでガーネットと婚約破棄してしまったアベール。
本当は、愛していたのに…
妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるラナーシャは、妹同伴で挨拶をしに来た婚約者に驚くことになった。
事前に知らされていなかったことであるため、面食らうことになったのである。
しかもその妹は、態度が悪かった。明らかにラナーシャに対して、敵意を抱いていたのだ。
だがそれでも、ラナーシャは彼女を受け入れた。父親がもたらしてくれた婚約を破談してはならないと、彼女は思っていたのだ。
しかしそんな彼女の思いは二人に裏切られることになる。婚約者は、妹が嫌がっているからという理由で、婚約破棄を言い渡してきたのだ。
呆気に取られていたラナーシャだったが、二人の意思は固かった。
婚約は敢え無く破談となってしまったのだ。
その事実に、ラナーシャの両親は憤っていた。
故に相手の伯爵家に抗議した所、既に処分がなされているという返答が返ってきた。
ラナーシャの元婚約者と妹は、伯爵家を追い出されていたのである。
程なくして、ラナーシャの元に件の二人がやって来た。
典型的な貴族であった二人は、家を追い出されてどうしていいかわからず、あろうことかラナーシャのことを頼ってきたのだ。
ラナーシャにそんな二人を助ける義理はなかった。
彼女は二人を追い返して、事なきを得たのだった。
婚約者の心変わり? 〜愛する人ができて幸せになれると思っていました〜
冬野月子
恋愛
侯爵令嬢ルイーズは、婚約者であるジュノー大公国の太子アレクサンドが最近とある子爵令嬢と親しくしていることに悩んでいた。
そんなある時、ルイーズの乗った馬車が襲われてしまう。
死を覚悟した前に現れたのは婚約者とよく似た男で、彼に拐われたルイーズは……
完結 愛される自信を失ったのは私の罪
音爽(ネソウ)
恋愛
顔も知らないまま婚約した二人。貴族では当たり前の出会いだった。
それでも互いを尊重して歩み寄るのである。幸いにも両人とも一目で気に入ってしまう。
ところが「従妹」称する少女が現れて「私が婚約するはずだった返せ」と宣戦布告してきた。
妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルリアは、婚約者の行動に辟易としていた。
彼は実の妹がいるにも関わらず、他家のある令嬢を心の妹として、その人物のことばかりを優先していたのだ。
その異常な行動に、アルリアは彼との婚約を破棄することを決めた。
いつでも心の妹を優先する彼と婚約しても、家の利益にならないと考えたのだ。
それを伝えると、婚約者は怒り始めた。あくまでも妹のように思っているだけで、男女の関係ではないというのだ。
「妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?」
アルリアはそう言って、婚約者と別れた。
そしてその後、婚約者はその歪な関係の報いを受けることになった。彼と心の妹との間には、様々な思惑が隠れていたのだ。
※登場人物の名前を途中から間違えていました。メレティアではなく、レメティアが正しい名前です。混乱させてしまい、誠に申し訳ありません。(2024/08/10)
※登場人物の名前を途中から間違えていました。モルダン子爵ではなく、ボルダン子爵が正しい名前です。混乱させてしまい、誠に申し訳ありません。(2024/08/14)
身代わりーダイヤモンドのように
Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。
恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。
お互い好きあっていたが破れた恋の話。
一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)
塩対応の婚約者に婚約解消を提案したらおかしなことになりました
宵闇 月
恋愛
侯爵令嬢のリリアナは塩対応ばかりの婚約者に限界がきて婚約解消を提案。
すると婚約者の様子がおかしくなって…
※ 四話完結
※ ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる