【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す

金峯蓮華

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35話 コンスタン

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 地下に降りて、長い廊下を進むと重い鉄のような扉があった。ジオトリフがそれを押し開くと、そこは広々とした庭だった。地下に降りたはずなのに庭? 俺とリドカインは顔を見合わせた。

 庭の向こうに大きな建物があった。

「ここは暗部の鍛錬所だ。普段は魔法で誰も近づけなくしている。レルトはしばらくここで暗部の訓練を受ける。リドは無理だろう? 今日だけ見学だな」

 青くなるリドカインを見てジオトリフは笑う。からかってやるなよ。リドカインは無理だと言われてほっとしたようだ。奴はインドア派なので、格闘は向いていない。ニヤニヤしていたくせに急に真顔になった。

「ここにコンスタンがいる。外の世界とは接触できない。奴は暗部の諜報員として訓練を受けている」

「コンスタンは記憶があるのですよね?」

 リドカインがジオトリフに尋ねている。

「潜在意識にはしっかりと染み付いている。だが、魔法で空っぽにしている。ミオ達の浄化魔法で、闇からこの世界に戻ったら徐々に記憶を戻していく予定だ。変な説明になったから、わからんか? まぁ、わからんでいい。お前はコンスタンと仲が良かったか?」

 リドカインは首を振った。

「ほとんど話をしたことはないです。コンスタンはあの女に出会う前からいつも僕を見下して馬鹿にしていました。「無効」じゃなくて「無能」だろうってね。コンスタンがあの女に命じられてやっていたことをほとんど僕は見て知っています。魔法のせいかもしれないけど、酷かった。僕はコンスタンと仲良くなれることはないと思います」

 苦々しい表情だ。確かに子供の頃からリドカインはコンスタンにいじめられていた。俺もそんなコンスタンが嫌いだったので、よく、仲裁に入り、コンスタンを懲らしめていた。

 あいつはそれを逆恨みし、俺を貶めようとして、破落戸を雇い、俺に怪我をさせようとしたこともある。もちろん、破落戸達を叩きのめし、騎士団に渡した。堪忍袋の緒が切れた俺は、夜中にあいつの部屋に忍び込み、これ以上やったら手足と舌を斬ってやると脅しをかけた。

 あいつは余程怖かったのか、ちびって、それから俺とリドカインを避けるようになった。でも、それからも俺に隠れてあちこちでよからぬことをしていたようだ。

 時が戻った後のこの世界のコンスタンが善良とは思えない。時が戻る前の世界のコンスタンは7歳の時にはすでに性悪だった。

 さっき、ミオナールがジェミニーナと一緒に浄化魔法をかけて、心を綺麗にすると言っていたが、綺麗になるのだろうか? 偏見を持ってはいけないが信じるのも難しい。

 俺が難しい顔をしていたせいか、ジオトリフはニヤリと笑った。

「コンスタンは余程嫌な奴だったんだな。さっき、ルナ姫さんも嫌悪感丸出しで嫌がっていたし、リドもすげー嫌いな感じだしよ。それにいつも無表情なお前まで苦虫を噛み潰したような顔してるぜ。せっかく女神が諜報要員として使えと神託を出したんだ。なんとかものにしたい。嫌だろうけど手伝ってくれよな」

 肩をポンと叩かれた。

「俺は別に……」

 それより、俺っていつも無表情なのか? 初めて知った。

 屋敷に入り、コンスタンがいるという部屋の扉を開くと、コンスタンはくらい部屋の隅で膝を抱えて俯いて座っていた。

「よぉ、コンスタン。お前と一緒に訓練を受けるレルトだ」

 ジオトリフの声にコンスタンは全く反応しない。ジオトリフが近づき、頭に手を乗せる。手から光が出て、コンスタンの身体を包み込んだ。

「レルト……俺は……俺は……」

 頭を抱えて苦しみ出した。

「レルト……レルト……」

 ぎゃーと叫んで意識を失った。

 ジオトリフは呆れた顔をして俺を見た。

「お前、怖がられているな。余程怖い目に遭わせたのか?」

「いや、特に何もしていない」

「そうか、こいつの潜在意識にお前は超怖い存在としてあるみたいだぞ。リドのことは忘れているな」

 ケラケラと笑う。

「どうせ僕は薄いですよ」

 リドカインが拗ねる。それより、意識を失ったコンスタンをどうするんだ?

 こいつと一緒に訓練か。なんだかめんどくさいな。

「まぁ、女神のミッションだからよぉ、我慢しろよな。とりあえず、訓練所に連れて行って水でも被せよう。こいつにはエクアって奴がくっついて教える。お前は俺とエクアのふたりでシゴくぞ。まぁ、時が戻る前にほとんど終わっているから、影の仕事をちょろ~っとやるだけ。あとは、ミオとニーナちゃんの聖女魔法の手伝いとかやってくれればいい。フェンタニルはまだ動きがない。こいつが使えるようになる頃には動き出すだろう。それまでのんびりやろうや」

 ジオは楽しそうな顔でコンスタンを担ぎ上げた。



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