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43話 王宮へ
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王妃がミオナールと一緒に転移魔法でセレニカに戻った。俺は頼んでいた魔道具をリドカインから受け取った。リドカインは「渾身の作だよ」と自慢げな顔で渡した。渾身の作か、楽しみだな。
俺達はそれぞれの場所に戻った。
しばらく経ったある日、ユーロジンから連絡が入り、俺はユーロジンや大公と共に王宮に向った。ジェミニーナも女神の愛し子として何かできるはずだと俺達についてきていた。
俺の記憶では、フェンタニルは女神信仰ではなかったはず。それなのに時が戻ってからのフェンタニルはセレニカやリルゾールと同じ女神を信仰していた。
「ニナ、どうしてあの時は違うかったのに、今はフェンタニルが女神信仰なのか知っているか?」
「ええ、その話は私もミオ様から聞いたのだけれど、時を戻す時に、女神がフェンタニル王国の神から国を取り上げたらしいわ。他国に迷惑をかける国にしたのはあなたの責任だ。私に任せて、あなたはもっと学びなさいと怒鳴りつけて、その神の位を落としたそうなのよ」
女神が怒鳴りつけるのか? それに神に位があるのか? そしてそれを落としたり上げたりできるくらい女神は偉いのか? 女神の力に驚いてしまった。まぁいい。そういうことなら神はこちら側の味方だ。
俺達が王宮に向かったのはスターシスが消えたと報告があったとユーロジンから聞いたからだ。
そして、ソリターからもスターシスは王都に向かっていると連絡が入った。
ユーロジンの兄のスターシスは生まれながらに闇魔法の使い手だったそうだ。大公家の嫡男が闇魔法使いとは大変だと、闇魔法が覚醒しないように魔導師達に覚醒を抑える魔法をかけさせてらしい。そして光魔法の使い手を探していた。闇魔法の使い手は光魔法の使い手と共にいれば、魔法が中和される。しかし、なかなかスターシスと同じくらいのレベルの光魔法の使い手は見つからない。そんな時に、スターシスが自分の現状に怒りを覚え、闇魔法を発動し、魔法暴走を起し、魔導師達に怪我を負わせてしまった。それ以来、何重にも抑制魔法をかけられて領地に幽閉されているという。
だが、抑制魔法を解き、スターシスは領地の屋敷から姿を消してしまった。見張の魔導師や騎士達は皆、倒れてしまっていたそうだ。
「スターシスは陛下の命を狙っているのかもしれない。本来なら自分が国王になるはずだったのに、奪われた地位を取り返すと言っていたようだ」
嫡男のやらかした所業に大公は苦々しい表情だ。
「奪われた地位ですか?」
俺の問いに大公が口を開く。
「陛下は私の弟だ。本当なら嫡男である私が父の後を継ぎ国王になるはずだった。だが、私は身体が弱く、国王をつとめるのは難しかった。それゆえに弟に任せ、私は大公として補佐する立場を選んだ。決して奪われたわけではない。それは子供達もわかっているはずだったのに……」
「はい。私達はいつも父上からそう聞かされていて、理解しています。何故兄上がそう思ったのか理解しかねます」
ユーロジンは項垂れる。
俺は王宮にいるコンスタンも連絡をした。
「大丈夫だ。王宮はすでにフェンタニルの影から連絡がはいっていて、臨戦態勢は整っている。陛下や妃殿下達は安全な場所におられるから大丈夫だ。俺にもさっき、ソリターから陛下を守れと連絡があった。ソリターもスターシスを追いながらこちらに向かっている」
「頼むぞ」
「任せろ」
コンスタンの言葉に安堵し、ソリターに連絡をした。
「スターシスは今、どのあたりだ?」
「それが……消えた」
「消えた? 転移魔法か?」
「いや、転移魔法ではない。突然黒い雲のようなものが出てきて、スターシスの身体を包み込んだと思ったら跡形もなく消えてしまった。痕跡から場所を特定しようとしたが痕跡がないのだ。闇魔法かどうかわからないが、とにかく、王宮に向かう。コンスタンには連絡をした。お前達も早急に王宮に向かえ」
ソリターはかなり焦っている。あいつが焦るなんて初めてだ。
ジェミニーナが俺の手を掴み顔を見た。
「レル様、転移魔法で王宮に入りましょう」
「そうだな。ぐずぐずしている場合じゃないな」
「ええ。大公殿下、ユーロジン様、私と、レル様と手を繋いで下さい。レル様、行きましょう!」
「わかった」
転移魔法が使えない、大公やユーロジンの手を掴み、俺達は王宮に飛んだ。
王宮に到着した瞬間、俺の目に飛び込んできたのは、真っ黒い雲のようなものに包まれた男が手に血まみれのナイフを持っている姿と、その前に血を流し倒れているコンスタン。呆然としている国王、王妃。そして泣き叫ぶ王女の姿だった。
俺達はそれぞれの場所に戻った。
しばらく経ったある日、ユーロジンから連絡が入り、俺はユーロジンや大公と共に王宮に向った。ジェミニーナも女神の愛し子として何かできるはずだと俺達についてきていた。
俺の記憶では、フェンタニルは女神信仰ではなかったはず。それなのに時が戻ってからのフェンタニルはセレニカやリルゾールと同じ女神を信仰していた。
「ニナ、どうしてあの時は違うかったのに、今はフェンタニルが女神信仰なのか知っているか?」
「ええ、その話は私もミオ様から聞いたのだけれど、時を戻す時に、女神がフェンタニル王国の神から国を取り上げたらしいわ。他国に迷惑をかける国にしたのはあなたの責任だ。私に任せて、あなたはもっと学びなさいと怒鳴りつけて、その神の位を落としたそうなのよ」
女神が怒鳴りつけるのか? それに神に位があるのか? そしてそれを落としたり上げたりできるくらい女神は偉いのか? 女神の力に驚いてしまった。まぁいい。そういうことなら神はこちら側の味方だ。
俺達が王宮に向かったのはスターシスが消えたと報告があったとユーロジンから聞いたからだ。
そして、ソリターからもスターシスは王都に向かっていると連絡が入った。
ユーロジンの兄のスターシスは生まれながらに闇魔法の使い手だったそうだ。大公家の嫡男が闇魔法使いとは大変だと、闇魔法が覚醒しないように魔導師達に覚醒を抑える魔法をかけさせてらしい。そして光魔法の使い手を探していた。闇魔法の使い手は光魔法の使い手と共にいれば、魔法が中和される。しかし、なかなかスターシスと同じくらいのレベルの光魔法の使い手は見つからない。そんな時に、スターシスが自分の現状に怒りを覚え、闇魔法を発動し、魔法暴走を起し、魔導師達に怪我を負わせてしまった。それ以来、何重にも抑制魔法をかけられて領地に幽閉されているという。
だが、抑制魔法を解き、スターシスは領地の屋敷から姿を消してしまった。見張の魔導師や騎士達は皆、倒れてしまっていたそうだ。
「スターシスは陛下の命を狙っているのかもしれない。本来なら自分が国王になるはずだったのに、奪われた地位を取り返すと言っていたようだ」
嫡男のやらかした所業に大公は苦々しい表情だ。
「奪われた地位ですか?」
俺の問いに大公が口を開く。
「陛下は私の弟だ。本当なら嫡男である私が父の後を継ぎ国王になるはずだった。だが、私は身体が弱く、国王をつとめるのは難しかった。それゆえに弟に任せ、私は大公として補佐する立場を選んだ。決して奪われたわけではない。それは子供達もわかっているはずだったのに……」
「はい。私達はいつも父上からそう聞かされていて、理解しています。何故兄上がそう思ったのか理解しかねます」
ユーロジンは項垂れる。
俺は王宮にいるコンスタンも連絡をした。
「大丈夫だ。王宮はすでにフェンタニルの影から連絡がはいっていて、臨戦態勢は整っている。陛下や妃殿下達は安全な場所におられるから大丈夫だ。俺にもさっき、ソリターから陛下を守れと連絡があった。ソリターもスターシスを追いながらこちらに向かっている」
「頼むぞ」
「任せろ」
コンスタンの言葉に安堵し、ソリターに連絡をした。
「スターシスは今、どのあたりだ?」
「それが……消えた」
「消えた? 転移魔法か?」
「いや、転移魔法ではない。突然黒い雲のようなものが出てきて、スターシスの身体を包み込んだと思ったら跡形もなく消えてしまった。痕跡から場所を特定しようとしたが痕跡がないのだ。闇魔法かどうかわからないが、とにかく、王宮に向かう。コンスタンには連絡をした。お前達も早急に王宮に向かえ」
ソリターはかなり焦っている。あいつが焦るなんて初めてだ。
ジェミニーナが俺の手を掴み顔を見た。
「レル様、転移魔法で王宮に入りましょう」
「そうだな。ぐずぐずしている場合じゃないな」
「ええ。大公殿下、ユーロジン様、私と、レル様と手を繋いで下さい。レル様、行きましょう!」
「わかった」
転移魔法が使えない、大公やユーロジンの手を掴み、俺達は王宮に飛んだ。
王宮に到着した瞬間、俺の目に飛び込んできたのは、真っ黒い雲のようなものに包まれた男が手に血まみれのナイフを持っている姿と、その前に血を流し倒れているコンスタン。呆然としている国王、王妃。そして泣き叫ぶ王女の姿だった。
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