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恨んでいる理由
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ヒューイ殿下は来年から我が国のアカデミーに留学されるそうだ。
今回はその手続きや挨拶も兼ねてこの国にきたそうだ。
滞在先はノバック公爵家になるらしい。
「え? ジェフリー様の屋敷に?」
驚いた私に、「色々あるんだよ」とウィル様はいつもの悪い顔で微笑む。
それにしてもヒューイ殿下はなぜグリーデン公爵を恨んでいるのだろうか?
私はヒューイ殿下に聞いてみた。ヒューイ殿下は辛そうな顔になった。
「言い辛いことでしたら気がずとも大丈夫です。すみません」
「いや、知っておいてほしい。あいつは酷い奴だからね」
ヒューイ殿下はゆっくりと話し出した。
「私の侍女がグリーデン公爵に殺されたんだよ。私は母上を早くに亡くし、侍女に育てられたようなもんだったんだ。侍女は元はこの国の出身でね。グリーデン公爵家の分家の令嬢だったんだ」
そうなのか。分家の令嬢がなぜ殺されたのだろう? 殿下は話を続ける。
「ヨーセット王国の伯爵家に嫁いでいたんだけど、父上の側近だった夫が亡くなって未亡人になり、子供もいなかったので私の侍女になったんだ。侍女は自分の母親の葬儀の為にこの国に戻って来た時にグリーデン公爵に目をつけられて、妾になれと言われたようで、もちろん断ったのだが侍女の父親は公爵から圧力をかけられて娘を差し出してしまったんだ」
なんだそれ! 腹立つわ。
「酷いですわ」
殿下は頷く。
「酷いのはそれだけじゃないんだ。公爵に抵抗した侍女は監禁されて、人間としての尊厳を奪われるような目に遭い、自ら命を断ってしまった。なかなか戻ってこないので心配になり、文を送ったけど、病で戻れないと返事が来た。似せてはいるが侍女の字と違うような気がして影を使い調べてみたらそう言うことだったんだよ」
ヒューイ殿下は目を伏せた。
「ヨーセット王国の国王から父上に抗議があったが、父上はグリーデン公爵に丸め込まれているから、たいして調べもせず、急な病で亡くなったとヨーセット王国に返事をしたらしい」
ウィル様が補足する。
何それ? グリーデン公爵ってエロジジイだったの?
「グリーデン公爵ってエロジジイなんですか?」
「うん。愛妾が沢山いるよ。実は側妃もグリーデン公爵と関係があるようなんだ」
セレスも目を丸くして驚いている。
「側妃様と? 親子ですわよね?」
は~? 義理でも親子でしょ? 私は空いた口が塞がらない。
「アデライドも本当に父上の子なのかな。だって父上に似たところある?」
「瞳の色は同じですよね」
「うん。でも公爵も同じ色だよ」
確かに。
セレスは目をキラキラ輝かせている。
「だったらグリーデン公爵に愛憎がらみで恨んでいる人も多いのではないですか?」
「そうだよ。今はまだ時期尚早だから公爵を泳がしている。我々がもう少し年をとるまでね」
ウィル様は楽しそうだ。ふたりともやっぱり腹黒だ。
「私は絶対あいつを許さない」
ヒューイ殿下は拳を握りしめる。
「私も我がグラン辺境伯家も許さないわ」
セレスも怖い顔をしている。
「私も倍返しさせてもらうつもりだよ」
ウィル様も続く。
「私も……」
私は王女、ジェフリー様、ノバック公爵、父にしか恨みはないんだけど、元を辿ればグリーデン公爵なのかしら。
私は王女に仕返ししたい。ジェフリー様やノバック公爵や父に仕返ししたい。それだけなのよ。
なんかみんなと温度差が違うのでちょっと戸惑ってしまうが、とりあえず話を合しておくしかないな。
私は胸に感じた小さな違和感を打ち消しながら微笑んだ。
今回はその手続きや挨拶も兼ねてこの国にきたそうだ。
滞在先はノバック公爵家になるらしい。
「え? ジェフリー様の屋敷に?」
驚いた私に、「色々あるんだよ」とウィル様はいつもの悪い顔で微笑む。
それにしてもヒューイ殿下はなぜグリーデン公爵を恨んでいるのだろうか?
私はヒューイ殿下に聞いてみた。ヒューイ殿下は辛そうな顔になった。
「言い辛いことでしたら気がずとも大丈夫です。すみません」
「いや、知っておいてほしい。あいつは酷い奴だからね」
ヒューイ殿下はゆっくりと話し出した。
「私の侍女がグリーデン公爵に殺されたんだよ。私は母上を早くに亡くし、侍女に育てられたようなもんだったんだ。侍女は元はこの国の出身でね。グリーデン公爵家の分家の令嬢だったんだ」
そうなのか。分家の令嬢がなぜ殺されたのだろう? 殿下は話を続ける。
「ヨーセット王国の伯爵家に嫁いでいたんだけど、父上の側近だった夫が亡くなって未亡人になり、子供もいなかったので私の侍女になったんだ。侍女は自分の母親の葬儀の為にこの国に戻って来た時にグリーデン公爵に目をつけられて、妾になれと言われたようで、もちろん断ったのだが侍女の父親は公爵から圧力をかけられて娘を差し出してしまったんだ」
なんだそれ! 腹立つわ。
「酷いですわ」
殿下は頷く。
「酷いのはそれだけじゃないんだ。公爵に抵抗した侍女は監禁されて、人間としての尊厳を奪われるような目に遭い、自ら命を断ってしまった。なかなか戻ってこないので心配になり、文を送ったけど、病で戻れないと返事が来た。似せてはいるが侍女の字と違うような気がして影を使い調べてみたらそう言うことだったんだよ」
ヒューイ殿下は目を伏せた。
「ヨーセット王国の国王から父上に抗議があったが、父上はグリーデン公爵に丸め込まれているから、たいして調べもせず、急な病で亡くなったとヨーセット王国に返事をしたらしい」
ウィル様が補足する。
何それ? グリーデン公爵ってエロジジイだったの?
「グリーデン公爵ってエロジジイなんですか?」
「うん。愛妾が沢山いるよ。実は側妃もグリーデン公爵と関係があるようなんだ」
セレスも目を丸くして驚いている。
「側妃様と? 親子ですわよね?」
は~? 義理でも親子でしょ? 私は空いた口が塞がらない。
「アデライドも本当に父上の子なのかな。だって父上に似たところある?」
「瞳の色は同じですよね」
「うん。でも公爵も同じ色だよ」
確かに。
セレスは目をキラキラ輝かせている。
「だったらグリーデン公爵に愛憎がらみで恨んでいる人も多いのではないですか?」
「そうだよ。今はまだ時期尚早だから公爵を泳がしている。我々がもう少し年をとるまでね」
ウィル様は楽しそうだ。ふたりともやっぱり腹黒だ。
「私は絶対あいつを許さない」
ヒューイ殿下は拳を握りしめる。
「私も我がグラン辺境伯家も許さないわ」
セレスも怖い顔をしている。
「私も倍返しさせてもらうつもりだよ」
ウィル様も続く。
「私も……」
私は王女、ジェフリー様、ノバック公爵、父にしか恨みはないんだけど、元を辿ればグリーデン公爵なのかしら。
私は王女に仕返ししたい。ジェフリー様やノバック公爵や父に仕返ししたい。それだけなのよ。
なんかみんなと温度差が違うのでちょっと戸惑ってしまうが、とりあえず話を合しておくしかないな。
私は胸に感じた小さな違和感を打ち消しながら微笑んだ。
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