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レティシア・ゲイル
5話 コンラート
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コンラートは実家の子爵家の使用人部屋に幽閉されていた。
下級使用人の部屋らしく、かなり狭い。部屋の中にご不浄や小さな水場があるので、狭いは狭いなりに上手く作られている。
コンラートは古く、ボロいベッドの上に膝を抱えて座っていた。
髪も髭も伸び放題。まぁまぁ、それなりに美男子だった面影はどこへやらだ。
「俺は悪くない。悪いのは義姉上なんだ。義父上も義母上も父上も母上も兄上もおかしい。あんなに優しくて清らかで美しいミランダに危害を加えたのは義姉上なんだ。処刑されて当たり前なんだ。これって逆恨みだよな。まぁ、きっと殿下やミランダが助けに来てくれる。それまでの辛抱だ。正義は必ず勝つ。頑張ろう」
独り言をぶつぶつと言っている。
「正義は必ず勝つのなら、あなたは惨敗だわね」
いつもの頭を手に抱えた姿ではなく、普通の姿でコンラートの前に出てみた。コンラートは大きく目を見開き、口も開いたままだ。
「義姉上……生きていたのか……」
「まさか、幽霊よ。断首されて生きている訳ないじゃない」
コンラートはまだ固まったままなので勝手に話を続けてみた。
「誰も助けにこないわ。ブルーノもフィリップも私が無実だったと認めたし、殿下も幽閉されているわよ。ミランダは知らないけど」
フィリップは両親だけどね。
「フィリップが新聞社にリークしたの。国中があなた達5人が私を陥れたこと知っているわ」
リークしたのも両親だけどね。
私の言葉にコンラートの顔が青くなっていく。
「嘘だ! そんなの嘘に決まっている!」
「ふふふ、幽霊は嘘つかないわよ」
私はベッドに腰を下ろした。
「ミランダは殿下だけじゃく、フィリップとも深い関係だったみたいね。ブルーノやあなたにも粉かけてたんでしょ?」
「ま、まさか。ミランダはそんな子じゃない。本当に好きなのは俺だと言ってくれた。でも、殿下に好きだと言われたら断れないって。いつも俺を気にかけてくれていて、優しい子なんだ」
馬鹿だわ。甘い言葉にころっと騙されたのね。
「あなたはいつも頑張っているわ。無理をしないでね、とか言われたの? 公爵教育と側近の仕事で大変でしょう。たまには休んでね。とか?」
「そうだよ。優しい言葉をかけてくれた」
「バカね。それで信じたの? あなたのことを本当に思うなら立派な次期公爵になれるようにもっと頑張りなさいと叱咤激励するんじゃないの。あなたは頭が良くてうちの養子になったけど、努力が嫌いで心が弱かった。楽な方に逃げようとしたわ。学ぶのがいやなら、子爵家に戻ればよかったのよ。公爵にはなりたい、名誉やお金は欲しい。でも、しんどい事は嫌。楽をしたい。そんなのは無理よ」
「そ、そんなことはない! 俺は一生懸命やっていた!」
「あれで一生懸命? 価値観が違うわね」
コンラートは黙り込んだ。
「あなた、私の義弟なのに、私が飛び級で卒業して、学園に行って無かったこと知らなかったの? ミランダは私に直に嫌がらせをされたと言ったのでしょう? どうして裏を取らなかったの? ミランダが嫌がらせをされていた時、私がどこで何をしていたか、ちょっと調べればすぐにわかることよね? そのあたりがあなたのダメなところね。王太子の側近も次期公爵もやっぱり無理だわ」
コンラートは何だかショックを受けている様な顔になった。
「忘れていた……」
「ミランダに美味しいことを言われて浮かれていたのね。あなたはやっぱり公爵の器じゃなかった。ごめんなさい。父があなたを養子にしなければ、こんなことに巻き込まれることもなく、田舎の子爵家の三男としてのんびり暮らせていたのにね」
コンラートは私が飛び級になったことを忘れていたことがショックだったようだ。
「義姉上は本当にミランダを害してなかったのですか?」
あらま、言葉遣いが変わったわね。
「いつ害する時間があるの? 私はずっと王宮にいたわ。それに学園には影がうようよいるのよ。もし、私がそんな真似をしたらすぐに陛下に報告がいくでしょう。私のアリバイは影に聞けばすぐにわかるわ」
「確かに……」
「余程、ミランダが上手だったのね。単純な殿下やブルーノはともかく、フィリップやあなたまで騙されるなんて……」
「えっ?」
私の言葉にコンラートは顔を上げた。
「私やフィリップ様?」
「そうよ。あなた達は優秀だもの。まぁ、フィリップはミランダと共謀していたようだけどね。托卵して王家乗っ取りをするつもりだったらしいわ。彼は自分より無能な殿下が国王になるのが許せなかったみたい。ミランダが主犯かフィリップが主犯かわからないけど、あなたは素直だし、ブルーノは脳筋だからコロリと騙されちゃったのね」
コンラートは俯いて唇を噛んでいる。
「まぁ、それでも罪は罪よ。もう次期公爵にも、次期宰相にもなれない。実家の子爵家にも籍はない。罪を償った後は平民として生きていくしかないわね。生きていたらね」
「生きていたら?」
目を見開き私を見つめる。
「だって、罪もない公爵令嬢を陥れ殺害したのよ。死罪もありえるでしょう?」
私はふふふと笑った。
「じゃあね。もうあなたのところには化けて出ないわ。自業自得、身から出た錆をしっかり味わいなさい。さようなら」
スッと姿を消した。
「義姉上! 義姉上!」
呼んだってもう出てやらないわ。処分が決まるまでその部屋で自分がやったことを悔いなさい。コンラートに絶望を与えられてよかったわ。
さぁ、次はミランダにしようかしら。殿下はは最後にとっておきましょう。
私はまた公爵邸にある自分の部屋に戻り、ベッドに入りゆっくり眠ることにした。
⭐︎明日もまた21時更新予定です。よろしくお願いします。
下級使用人の部屋らしく、かなり狭い。部屋の中にご不浄や小さな水場があるので、狭いは狭いなりに上手く作られている。
コンラートは古く、ボロいベッドの上に膝を抱えて座っていた。
髪も髭も伸び放題。まぁまぁ、それなりに美男子だった面影はどこへやらだ。
「俺は悪くない。悪いのは義姉上なんだ。義父上も義母上も父上も母上も兄上もおかしい。あんなに優しくて清らかで美しいミランダに危害を加えたのは義姉上なんだ。処刑されて当たり前なんだ。これって逆恨みだよな。まぁ、きっと殿下やミランダが助けに来てくれる。それまでの辛抱だ。正義は必ず勝つ。頑張ろう」
独り言をぶつぶつと言っている。
「正義は必ず勝つのなら、あなたは惨敗だわね」
いつもの頭を手に抱えた姿ではなく、普通の姿でコンラートの前に出てみた。コンラートは大きく目を見開き、口も開いたままだ。
「義姉上……生きていたのか……」
「まさか、幽霊よ。断首されて生きている訳ないじゃない」
コンラートはまだ固まったままなので勝手に話を続けてみた。
「誰も助けにこないわ。ブルーノもフィリップも私が無実だったと認めたし、殿下も幽閉されているわよ。ミランダは知らないけど」
フィリップは両親だけどね。
「フィリップが新聞社にリークしたの。国中があなた達5人が私を陥れたこと知っているわ」
リークしたのも両親だけどね。
私の言葉にコンラートの顔が青くなっていく。
「嘘だ! そんなの嘘に決まっている!」
「ふふふ、幽霊は嘘つかないわよ」
私はベッドに腰を下ろした。
「ミランダは殿下だけじゃく、フィリップとも深い関係だったみたいね。ブルーノやあなたにも粉かけてたんでしょ?」
「ま、まさか。ミランダはそんな子じゃない。本当に好きなのは俺だと言ってくれた。でも、殿下に好きだと言われたら断れないって。いつも俺を気にかけてくれていて、優しい子なんだ」
馬鹿だわ。甘い言葉にころっと騙されたのね。
「あなたはいつも頑張っているわ。無理をしないでね、とか言われたの? 公爵教育と側近の仕事で大変でしょう。たまには休んでね。とか?」
「そうだよ。優しい言葉をかけてくれた」
「バカね。それで信じたの? あなたのことを本当に思うなら立派な次期公爵になれるようにもっと頑張りなさいと叱咤激励するんじゃないの。あなたは頭が良くてうちの養子になったけど、努力が嫌いで心が弱かった。楽な方に逃げようとしたわ。学ぶのがいやなら、子爵家に戻ればよかったのよ。公爵にはなりたい、名誉やお金は欲しい。でも、しんどい事は嫌。楽をしたい。そんなのは無理よ」
「そ、そんなことはない! 俺は一生懸命やっていた!」
「あれで一生懸命? 価値観が違うわね」
コンラートは黙り込んだ。
「あなた、私の義弟なのに、私が飛び級で卒業して、学園に行って無かったこと知らなかったの? ミランダは私に直に嫌がらせをされたと言ったのでしょう? どうして裏を取らなかったの? ミランダが嫌がらせをされていた時、私がどこで何をしていたか、ちょっと調べればすぐにわかることよね? そのあたりがあなたのダメなところね。王太子の側近も次期公爵もやっぱり無理だわ」
コンラートは何だかショックを受けている様な顔になった。
「忘れていた……」
「ミランダに美味しいことを言われて浮かれていたのね。あなたはやっぱり公爵の器じゃなかった。ごめんなさい。父があなたを養子にしなければ、こんなことに巻き込まれることもなく、田舎の子爵家の三男としてのんびり暮らせていたのにね」
コンラートは私が飛び級になったことを忘れていたことがショックだったようだ。
「義姉上は本当にミランダを害してなかったのですか?」
あらま、言葉遣いが変わったわね。
「いつ害する時間があるの? 私はずっと王宮にいたわ。それに学園には影がうようよいるのよ。もし、私がそんな真似をしたらすぐに陛下に報告がいくでしょう。私のアリバイは影に聞けばすぐにわかるわ」
「確かに……」
「余程、ミランダが上手だったのね。単純な殿下やブルーノはともかく、フィリップやあなたまで騙されるなんて……」
「えっ?」
私の言葉にコンラートは顔を上げた。
「私やフィリップ様?」
「そうよ。あなた達は優秀だもの。まぁ、フィリップはミランダと共謀していたようだけどね。托卵して王家乗っ取りをするつもりだったらしいわ。彼は自分より無能な殿下が国王になるのが許せなかったみたい。ミランダが主犯かフィリップが主犯かわからないけど、あなたは素直だし、ブルーノは脳筋だからコロリと騙されちゃったのね」
コンラートは俯いて唇を噛んでいる。
「まぁ、それでも罪は罪よ。もう次期公爵にも、次期宰相にもなれない。実家の子爵家にも籍はない。罪を償った後は平民として生きていくしかないわね。生きていたらね」
「生きていたら?」
目を見開き私を見つめる。
「だって、罪もない公爵令嬢を陥れ殺害したのよ。死罪もありえるでしょう?」
私はふふふと笑った。
「じゃあね。もうあなたのところには化けて出ないわ。自業自得、身から出た錆をしっかり味わいなさい。さようなら」
スッと姿を消した。
「義姉上! 義姉上!」
呼んだってもう出てやらないわ。処分が決まるまでその部屋で自分がやったことを悔いなさい。コンラートに絶望を与えられてよかったわ。
さぁ、次はミランダにしようかしら。殿下はは最後にとっておきましょう。
私はまた公爵邸にある自分の部屋に戻り、ベッドに入りゆっくり眠ることにした。
⭐︎明日もまた21時更新予定です。よろしくお願いします。
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