【完結】冤罪で処刑された令嬢は、幽霊になり復讐を楽しむ

金峯蓮華

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レティシア・ゲイル

8話 身の振り方

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 それぞれの刑が決まった。王太子は廃嫡の上、北の塔に生涯幽閉。死刑を免れ、平民にはならずに済んだようだ。ただ、ひとりぼっちで幽閉されるのは、案外死刑より辛いかもしれない。ミランダとフィリップは予想通り死刑、ブルーノとコンラートも廃嫡、廃籍され平民になり、労働刑となった。

 もともとフィリップはブルーノ達と同じで労働刑だったのだが、私が陛下の枕元に立ち、托卵し、王家を乗っ取る計画を企てていたとチクり、怒り狂った陛下はフィリップを死刑にした。私の時とは違い、きちんと裏を取り証拠を揃えた陛下はさすがに国王だ。約束どおり、フィリップの両親は何も知らなかったということで、監督不行届で領地の1/5を没収されたが、降爵は免れた。フィリップをすでに廃籍していて、公爵家とは関係ないとしたことも功を奏した。

 それにしても口から出まかせで、托卵して王家を乗っ取るつもりだと言ったのに、陛下の調べで、本当にフィリップとミランダがそう計画していたとわかった。

 いやぁ~、フィリップって本当に悪者だったのね。ミランダにそんな頭はない。主犯はフィリップだったのね。ミランダもそこまで背伸びしないで、子爵家か伯爵家あたりにしておけば、処刑なんてされなくて済んだのに。私も死ぬ事はなかったのになぁ~。

 身の程を知るのは大事だと思うよ。

 私は名誉を回復され、我が家は王家や側近達の家からかなりの賠償金をもらったが、父はそれらを全額各地の孤児院に寄附したという。さすがお父様だ。

 父と母に姿は見せず、お別れの言葉だけ告げた。

「お父様、お母様、全ての決着がつきました。私もそろそろ、天に昇ろうと思います。最後にお別れが言えなかったので、今日参りました。先に天に行くことをお許しくださいませ」

 父は上に向かって腕を伸ばしている。

「レティシアか? 姿を、姿を見せてはくれぬか? コンラートやブルーノはお前の姿を見たと言っていると聞いた。私達の前にも現れてくれ。頼む。頼むレティシア」

 父も母も涙を流している。姿を現したら別れが辛くならないかしら。でも、本当にお別れだしな……。

 私は生きていた頃と同じ姿で父母の前に現れた。

「お久しぶりでございます……」

 父が私を抱きしめ、母も抱きつく。

「会いたかった。あの時、私がこの国にいたら、王太子でも成敗してやったのに、実は戻ってすぐ城に行き、部屋で幽閉されていた王太子をボコボコにしてやったが、それでも気がすまなかった」

 ボコボコって、お父様ったら。それで、私が行った時、ヴェルナー殿下は微妙に顔が腫れていたり、傷があったのね。

「私も妃殿下に頼んで、殿下に会わせてもらい、顔を引っ掻いてやったわ」

 お母様まで。全くふたりとも間違いなく私の親だわ。

「コンラートの父親は腹を掻っ捌いてお前に詫びると自死しようとしていたので、やめさせて、生きている限り、お前の墓守をしてくれと頼んだ。それでいいか?」

「もちろんですわ。子爵は何も悪くありませんもの。コンラートも罪を償ったあと、領地に戻り、一緒に墓守をしてくれるといですね」

 コンラートも根は素直な良い子だ。まだ、若いし、更生の余地はある。

「わかった。そうするよ」

「レティシア、まだ慌てて天に行かなくてもいいのでしょう? お祖父様やお祖母様もあなたに会いたがっているの。皆を呼んであなたのお別れ会をしましょう」

 母が突飛もないことを言い出した。もう本当にお別れだし、あの時、誰にも挨拶ができなかった。まぁ、いいか。

「ええ。少しくらい遅くなっても大丈夫ですわ。みんなに挨拶をしてから旅立ちます」

 結局、祖父母や叔父叔母達、それに友人達が屋敷に詰めかけ、大宴会となった。他国に住む母方の祖父母まで、魔法を使いやってきた。皆、幽霊なのに怖くないようで、生きている時と何ら変わりなく、いや、それ以上に私に優しくしてくれた。

 朝、皆が寝ているうちに屋敷を出て、城に向かい、陛下と妃殿下にもお礼を告げた。

 さぁ、いよいよお別れだ。私は天に昇る。

 しかし、天に昇るにはどうすれば良いのかしら? とりあえず大聖堂の祭壇の前に行き、神の使いを呼んでみた。

「神の使いさん、そろそろ天に昇りたいのですがどうすれば良いでしょうか?」

 私の目の前にあの日と同じ、白い服を着て、背中に羽根をつけた神の使いがふわりと現れた。

「レティシア様、魂が身体から抜けてから35日以内でないと天には行けないのです。私はあの時にそう申しましたよね?」

 そういえば、そんなことを言っていたような……。

「では、私はずっと幽霊のままなの?」

 まぁ、最悪幽霊のままでも、それはそれで楽しいかもしれない。私がそんなことを思っていたら、神の使いは首を振る。

「いえ、あの時、持ち帰って神と相談いたしました。レティシア様は元々の寿命がまだ残っておりますので、なんとかならないものかと皆で思案致しました」

 このままずっと幽霊かと思ったが、そうでもないのかしら?

 神の使いはファイルの様なものを広げ、私に見せてくれる。

「バーレント王国に病でもうすぐ儚くなる予定の姫様がおります。その姫様の魂が抜けたあと、身体に入り、その姫様として、本来の寿命の年まで生きるのはいかがてしょう? レティシア嬢であれば、他国の姫様となっても何の問題もありません。今度亡くなる時は幽霊になどならず、私が迎えに参りましたら、すぐに天に昇ってください。どうですか? それでよろしいでしょうか?」

 他人になって生きるのか。それも楽しいかもしれない。ずっと王太子妃になるために全てを犠牲にして生きてきた。その姫になればやれなかったことがやれるかもしれない。わがまま姫になって暴れるのもいいな。

「神の使いさん、それでお願いします」

「承知致しました。その姫様の身体にレティシア嬢の魂が入る時、生まれてから亡くなるまでの姫様の記憶も共有できるようにしておくのでご安心くださいませ」

「ありがとうございます」

「それでは、今度は年老いたお姿でお会い致しましょう。そうそう、姫様の御名前はレティシア様でございます。同じなので馴染みやすいですね。では、ご武運をお祈りします」

 神の使いはそう言うと煙のように消えた。ご武運って? 戦いに行くみたいね。名前が同じなら馴染みやすいわ。レティシア・バーレントはどんな人生を生きてきたのだろう。今度こそ寿命をちゃんと生きて年老いた姿で神の使いさんと会いたいもんだわね。

 私は瞼が重くなり、意識を手放した。



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