【完結】冤罪で処刑された令嬢は、幽霊になり復讐を楽しむ

金峯蓮華

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レティシア・バーレント

33話 とんとん拍子で

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「私はレティのことが好きだ。バーレント王国のような大国の姫がうちのような小国に嫁いできてくれるなんて、ありえないことはわかっている。でも、何も言わないで帰国するレティの後ろ姿を見送るのは嫌だったんだ。当たって砕けないと前に進めない」

 ジークハルト様は椅子から立ち上がり、私の前に跪いた。

「レティシア姫、私と結婚してください」

 いやぁ~、何が起こったのか全く理解できず、私は固まってしまった。

「やっぱりダメだよね。国の格が違いすぎる。レティなら大国に嫁げるし……」

 ジークハルト様は俯き寂しそうに呟く。

「ダメじゃない!」

 口から勝手に言葉が出た。

「えっ?」

「小国とか、大国とか関係ないわ。政略ではなく、ジーク様が本当に私を好きだと思ってくれて、結婚を申し込んでくれたのなら嬉しいわ。でも、私の一存では返事はできない。父にも相談してみないと」

「陛下の許しはもう、貰っている。君がOKなら反対はしないと」

 えっ? 根回し早すぎない? 仕事の早い人ですこと。

 どうするレティシア? ジークハルト様と結婚しちゃう?

 また、このアレンスに戻ってくる?

 王妃教育も終わってるし、アレンス王国の王太子妃にならすぐにでもなれる。でも……。

 ジークハルト様のことは好きだ。

 レティシア・ゲイルの時は弟みたいに可愛くて、大好きだった。

 レティシア・バーレントでは、年上の頼れる人。優しくて、賢くて、強くて、話も合うし、カッコいいし、なんだ、断る理由なんてないじゃない。

 けど、ジークハルト様は前の私が好きだったんじゃないの? 私は私の身代わりなんて嫌だ。

「ジーク様は亡くなったレティシア様が好きだったと以前言っていたけど、レティシア様のことはふっきれたのですか? 私は大輪の真紅の薔薇にはなれないわ。カッコいいレティシア様じゃなく、ちょこまかしたちっこい私でいいの?」

 ジークハルト様はばつのわるそうな顔をして、頭を掻いている。

「レティに会って、レティシア嬢のことを忘れてしまったんだ。レティシア嬢以上の人なんて現れないと思っていたのに、レティは彼女を軽々と飛び越えてしまった。今ではレティシア嬢の顔も思い出せないんだ。私は薄情なのだな」

「薄情なんかじゃないですよ。昇華したんだと思う。初恋は綺麗なまま昇華したのね」

 だって、あの頃の私、ジークハルト様が作り上げた虚像とはかなりかけ離れていたのよ。もし、生きていたらきっと現実を知り、幻滅していたと思う。

 バーレントも好きだけど、やっぱり私は生まれ育ったこのアレンスが好きだ。アレンスに戻ろう。

「結婚します! 私はじゃじゃ馬だけど後悔しない?」

「後悔なんてするわけない。レティ、愛してる! ありがとう!」

 立ち上がり、私を持ち上げてくるくると周りだした。

 いやいや、幼児じゃないんだからやめてよ。幸せそうな顔でくるくるしているジークハルト様を見ていると幼児じゃないけどまぁいいかと思えてくる。

 あんな死に方をして、悔しかったけど、幽霊になって、楽しく復讐もしたし、レティシア・バーレントになって、バーレント王国の姫として、楽しい毎日を過ごせた。

 まさか、またアレンス王国に戻れるなんて信じられない。あの時、もう二度と戻ることはない、両親にも陛下や妃殿下にも二度と会えないと思っていたのに、陛下と妃殿下にはまた会えた。

 ジークハルト様と結婚するとしたら、また両親にも会えるはず。

 私がレティシアだったとカミングアウトはしないけど、肉親ならメイのようになんとなくわかるかもしれないな。

 これも寿命より早く死んじゃった私を憐れんだ神様達のギフトなのかしら? それなら有難くもらっちゃおうかな。


 それからしばらくして、ジークハルト様と私の婚約が結ばれた。

 結婚は私が18歳になってから。それまでは、アレンス王国の学校に通いながら、王太子妃教育を受けることになった。

 王宮に住めばいいとジークハルト様は言ったのだが、宰相閣下が是非とも我が家に滞在して学校に通って欲しいと願い出たらしく、私は元の実家に戻ることになった。

 私が亡くなってから、ゲイルの母は塞ぎ込むことが多くなり、養子もとっていなかったそうだ。

 ゲイルの父は「娘の代わりと言っては申し訳ないが、本来なら娘が家から王家に嫁ぐはずだった。姫を本当の娘だと思って嫁ぐ日までお世話をしたい。妻もそう望んでいる」と陛下に懇願したそうだ。

 陛下は、ゲイル家の望みを無下になどできないと私はゲイル公爵家に住むことになった。

 私とフィーネはゲイル公爵邸、ラルフは軍隊の宿舎、ゲオルグとフランチェスカは学校の留学生用の宿舎に住み、2年をこのアレンス王国の地で過ごす事になった。
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