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レティシア・バーレント
34話 母娘
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アレンス王国に留学してからも、魔馬車を使い、バーレント王国に戻ったり、姉の嫁ぎ先の国に遊びに行ったりしていた。
婚約者のジークハルト様と一緒にアレンス王国復興のために、あちこちに勉強に行ったりもした。
いちばん多く通ったのはドメル王国かもしれない。ドメル王国はジークハルト様が留学していた国で、バーレントの母とアレンスの母、ふたりの母の故郷だ。
アレンスに戻るまで全く知らなかったのだが、バーレントの母はドメルの元王女で、アレンスの母はドメルの公爵令嬢だった。なんと二人は親戚でドメル時代は姉妹のように仲良しだったらしい。
アレンスがクレールに攻め込まれた時、ゲイルの母のことが心配になったバーレントの母は暗部を使い、アレンスの様子を調べたり、国連に仲裁に入るように進言したりしていたそうだ。
そういえばアレンス行きが決まった時に、何かあったらゲイルを頼れと言っていたな。あの時は不思議に思っただけで、深く追求しなかった。
二人が親戚で仲良しというのも神様のギフトなのかもしれない。
私とジークハルト様はドメル王国で魔馬車がなくても一人で移動できる、瞬間移動魔法を学んだり、回復魔法を学んだりした。
あれから2年。
アレンス王国はすっかり復興した。
バーレント王国の指導で始まった軍隊も形になったし、ドメル王国は魔法医師や魔法看護師を派遣して、魔法医療を広めていった。
私の王太子妃教育はあっという間に終わり、2年で全てを習得した天才だと教師達に絶賛されている。
本当は全然天才じゃなくて、レティシア・ゲイルだった頃、長い時間をかけて学んだんだもの、魂に刻み込まれているのよね。
学校での留学生活も楽しかった。ゲオルグとフランチェスカがいてくれたおかげで、学校に慣れるまでも寂しくなかったし、ゲイル時代の友達の妹や弟も同じクラスにいたので、みんな良くしてくれた。
ゲイルの母はあちらこちらのお茶会に私を連れていってくれ、横の繋がりを作ってくれた。ゲイルの両親は本当に実の娘のように接して可愛がってくれた。
(実の娘だけど)
結婚式の日が近づいてきた。
私は一旦、バーレントに戻り、バーレントから嫁入りする。
ゲイルの両親とは一旦お別れだ。二人は私のアレンスの親として後ろ盾になってくれるそうだ。大国バーレントとゲイル公爵家が後ろについている王太子妃に危害を加えようなんて強者はいないだろう。
ゲイルの母と中庭のガゼボでお茶を飲んでいた。
「ねぇ、あなた本当はレティなんでしょ?」
母は私の顔を見つめる。
「レティですが?」
「そうじゃなくて、レティシア・ゲイルなんでしょ? 亡くなってしまった私の大切な娘。あの時は天に昇るとお別れしたけど、天に昇らずレティシア・バーレントになったのではなくて?」
母はするどい。カミングアウトする気はなかったが、隠すこともないか。
「どうしてわかったのですか?」
「やっぱりね。だって私が産んだ娘だもの。18歳まで手塩にかけて育てた娘よ。外見は別人だけど、中身は全くレティなんだもの。最初に会った時からそんな気がしてたの。だから旦那様に頼んでうちで面倒を見ることにしてもらったのよ。一緒に過ごすうちにレティに違いないと確信したわ」
母はすごいな。血のつながり以上に魂のつながりだろう。
「すみません。隠すつもりはなかったのですが、カミングアウトすると皆さんが混乱するかと思って黙っておりました」
「そうね。お父様や陛下や妃殿下はきっと混乱してパニックになるわね。ジークハルト殿下は真実を知ったら喜ぶかもしれないからタイミングが合えばカミングアウトしてあげてもいいと思うけど、それまでは私達ふたりの秘密にしましょう」
いたずらっ子のように母は微笑んだ。
私は母に、あの時お別れしてから、レティシア・バーレントになるまでの経緯を話した。
「そうだったの。あの子は旅立ったのね。あの頃、バーレントのお従姉様から、末娘が病でもうダメだと聞いていたわ。距離的に離れていたから、あの子とは一度も会ったことはなかったのだけど、あなたと同じ名前だし気にはなっていたの。元気になったらいいのにと思っていたのよ。あなたとお別れしてから、しばらくしてあの子が元気になったと連絡があったから、ひょっとしてと思ったけれど、そんなこと誰にも言えないし、あなたがアレンスに留学すると聞いて、もしかしてレティかもしれないと会うのを楽しみにしていたのよ」
「もっと早く仰ってくれればよかったのに」
「確信がなかったから、そんなこと言ったら頭のおかしなおばさんだと思われちゃうでしょう?」
母はクスクス笑う。
「この2年で間違いないと確信したわ。お父様は気づいていないけど」
一緒にいる時間がちがうからかな。
「レティ、また私達のところに戻ってきてくれてありがとう。そして、お従姉様のところに生まれ変わってくれて有難う。きっと先にいったレティシアも喜んでくれていると思うわ」
それから、ひと月後、私とジークハルト様は結婚した。
婚約者のジークハルト様と一緒にアレンス王国復興のために、あちこちに勉強に行ったりもした。
いちばん多く通ったのはドメル王国かもしれない。ドメル王国はジークハルト様が留学していた国で、バーレントの母とアレンスの母、ふたりの母の故郷だ。
アレンスに戻るまで全く知らなかったのだが、バーレントの母はドメルの元王女で、アレンスの母はドメルの公爵令嬢だった。なんと二人は親戚でドメル時代は姉妹のように仲良しだったらしい。
アレンスがクレールに攻め込まれた時、ゲイルの母のことが心配になったバーレントの母は暗部を使い、アレンスの様子を調べたり、国連に仲裁に入るように進言したりしていたそうだ。
そういえばアレンス行きが決まった時に、何かあったらゲイルを頼れと言っていたな。あの時は不思議に思っただけで、深く追求しなかった。
二人が親戚で仲良しというのも神様のギフトなのかもしれない。
私とジークハルト様はドメル王国で魔馬車がなくても一人で移動できる、瞬間移動魔法を学んだり、回復魔法を学んだりした。
あれから2年。
アレンス王国はすっかり復興した。
バーレント王国の指導で始まった軍隊も形になったし、ドメル王国は魔法医師や魔法看護師を派遣して、魔法医療を広めていった。
私の王太子妃教育はあっという間に終わり、2年で全てを習得した天才だと教師達に絶賛されている。
本当は全然天才じゃなくて、レティシア・ゲイルだった頃、長い時間をかけて学んだんだもの、魂に刻み込まれているのよね。
学校での留学生活も楽しかった。ゲオルグとフランチェスカがいてくれたおかげで、学校に慣れるまでも寂しくなかったし、ゲイル時代の友達の妹や弟も同じクラスにいたので、みんな良くしてくれた。
ゲイルの母はあちらこちらのお茶会に私を連れていってくれ、横の繋がりを作ってくれた。ゲイルの両親は本当に実の娘のように接して可愛がってくれた。
(実の娘だけど)
結婚式の日が近づいてきた。
私は一旦、バーレントに戻り、バーレントから嫁入りする。
ゲイルの両親とは一旦お別れだ。二人は私のアレンスの親として後ろ盾になってくれるそうだ。大国バーレントとゲイル公爵家が後ろについている王太子妃に危害を加えようなんて強者はいないだろう。
ゲイルの母と中庭のガゼボでお茶を飲んでいた。
「ねぇ、あなた本当はレティなんでしょ?」
母は私の顔を見つめる。
「レティですが?」
「そうじゃなくて、レティシア・ゲイルなんでしょ? 亡くなってしまった私の大切な娘。あの時は天に昇るとお別れしたけど、天に昇らずレティシア・バーレントになったのではなくて?」
母はするどい。カミングアウトする気はなかったが、隠すこともないか。
「どうしてわかったのですか?」
「やっぱりね。だって私が産んだ娘だもの。18歳まで手塩にかけて育てた娘よ。外見は別人だけど、中身は全くレティなんだもの。最初に会った時からそんな気がしてたの。だから旦那様に頼んでうちで面倒を見ることにしてもらったのよ。一緒に過ごすうちにレティに違いないと確信したわ」
母はすごいな。血のつながり以上に魂のつながりだろう。
「すみません。隠すつもりはなかったのですが、カミングアウトすると皆さんが混乱するかと思って黙っておりました」
「そうね。お父様や陛下や妃殿下はきっと混乱してパニックになるわね。ジークハルト殿下は真実を知ったら喜ぶかもしれないからタイミングが合えばカミングアウトしてあげてもいいと思うけど、それまでは私達ふたりの秘密にしましょう」
いたずらっ子のように母は微笑んだ。
私は母に、あの時お別れしてから、レティシア・バーレントになるまでの経緯を話した。
「そうだったの。あの子は旅立ったのね。あの頃、バーレントのお従姉様から、末娘が病でもうダメだと聞いていたわ。距離的に離れていたから、あの子とは一度も会ったことはなかったのだけど、あなたと同じ名前だし気にはなっていたの。元気になったらいいのにと思っていたのよ。あなたとお別れしてから、しばらくしてあの子が元気になったと連絡があったから、ひょっとしてと思ったけれど、そんなこと誰にも言えないし、あなたがアレンスに留学すると聞いて、もしかしてレティかもしれないと会うのを楽しみにしていたのよ」
「もっと早く仰ってくれればよかったのに」
「確信がなかったから、そんなこと言ったら頭のおかしなおばさんだと思われちゃうでしょう?」
母はクスクス笑う。
「この2年で間違いないと確信したわ。お父様は気づいていないけど」
一緒にいる時間がちがうからかな。
「レティ、また私達のところに戻ってきてくれてありがとう。そして、お従姉様のところに生まれ変わってくれて有難う。きっと先にいったレティシアも喜んでくれていると思うわ」
それから、ひと月後、私とジークハルト様は結婚した。
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