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腹黒は腹黒を知る(メトロファン伯爵視点)
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リカルドから話を聞き、正直驚いた。まさかルーファスがそんなことを考えていたなんて。
ヴィオは私達の計画どおり、第2王子との婚約が解消となり、ユリウスと結婚が決まった。ユリウスとの結婚はユリウス自体が望んでいることもあるが、アンソニー殿下とアルブラン公爵家、そして王妃殿の総意だ。
妻のパトリシアも絶対アルブラン家に嫁がせたいと望んでいる。
妻はアルブラン公爵夫人とは従姉妹で姉妹のように仲が良い。そしてアルブラン公爵夫人の親友の王妃殿にも妹のように大事にしてもらっている。
あのふたりはヴィオが王命で第2王子の婚約者にされたのが嫌だった。
王妃殿は「なんで可愛い大事なヴィオちゃんがあんな側妃の馬鹿息子と結婚しなきゃならないの! あんな女の口車に乗せらてよくも王命なんか出したわね!」と怒り、国王は小さくなっていた。
アルブラン公爵夫人も弟である国王には容赦ない。第2王子との婚約が解消されて1番喜んでいるのは国王かもしれない。
国王は優しくて良い人なのだが、優柔不断で気が弱い。そこを側妃や王弟につけ込まれやらかしてしまうことが度々あった。
王弟と側妃が断罪され、ほっとしているのだろう「もう側妃はいらん!」と声を大にしていた。
「旦那様、ルーファス様はほんとにヴィオと結婚したいのかしら?」
「さあな、もしそうならどう思う?」
「私はユリウスの方がいいわ。お姉さまの息子だし、アルブラン家なら将来的にも安泰でしょ? どんなことがあってもヴィオを守ってくれるわ。それにヴィオを国外に出したくないの。この国の王太子妃になどなったらすぐに会えないじゃない?」
確かに妻の言う通りだ。そしてこの国は不安定なところがある。ヴィオがアルブラン夫人のような人間だったら、王太子妃になってもいいだろうが、いかんせんヴィオは呑気で朗らかな娘だ。腹黒策士の中で腹芸をしながら生きるなんてことはさせられないし、できるわけがない。
リカルドの言うように早く縁談をまとめてしまおう。
「旦那様、お姉さまから早文よ」
さすが、アルブラン夫人。もう動いているのか。
「北の国に第1王女か」
「北の国の王妃様は旦那様のお姉さまでしたわね」
「あぁ、アルブラン公爵夫人とは確か同じ時期に東の国に留学していたと思う。姉上もアルブラン公爵夫人も腹黒同士仲良かったんじゃないか」
「まぁ、またそんなことを仰って。おふたりとも腹黒ではないですわ。いつも民の幸せを考えているので、人が嫌がる汚い仕事もやってくださっているのです。ほんとにとてもお優しくてよ」
ヴィオは妻に良く似ている。こんなナチュラルな人間達は腹の黒い私達が守ってやらなくてはならない。
私は兄上に呼ばれた。
「北の国の姉上から娘をルーファスの妃にどうかと言ってきたのだが、お前はどう思う?」
「姉上の娘というと、アンナマリーでしょうか? たいそう美しく賢いと噂を聞いたことがあります」
アルブラン公爵夫人、やることが早い。
「ルーファスはヴィオレッタが好きなようなんだがな」
「兄上、ヴィオレッタは婚約者がおります。それにあれは王妃など無理です。いくらルーファスがそう思ってくれてもお断りします」
「そうだな。ヴィオレッタに王妃は無理だな。特に我が国は不安定だ。大国の北の国に王女なら国にとって良いかもしれんな」
北の国は大国だ。強い兵力もある。この国にとって北の国との縁を深めるのは得策だ。さすがアルブラン公爵夫人、いいところに目をつけたな。ルーファスが拒んでも決まってしまうだろう。
さて、そろそろ私達も国に戻ろうか。自分の育った国ではあるが、なんだかつまらない。フィルやライザがこの国を出たがっているのもあの頃の私と同じ理由だろうか?
「旦那様、ユリウスが迎えに来てくれましたわ」
兄との話が終わり部屋に戻ると妻のパトリシアが嬉しそうに駆けてきた。
結婚して16年になるが、いつ見てもパトリシアは可愛い。ユリウスがヴィオを溺愛する気持ちがよくわかる。
腹黒な男はこういう平和で穏やかでのんびりした女の側がいちばん落ち着くのだ。
アルブラン公爵は大変だろうな。あの家には癒しがいない。だからヴィオが欲しいのかもしれないな。
ユリウスも迎えに来たことだし、さっさと帰ろう。
ヴィオは私達の計画どおり、第2王子との婚約が解消となり、ユリウスと結婚が決まった。ユリウスとの結婚はユリウス自体が望んでいることもあるが、アンソニー殿下とアルブラン公爵家、そして王妃殿の総意だ。
妻のパトリシアも絶対アルブラン家に嫁がせたいと望んでいる。
妻はアルブラン公爵夫人とは従姉妹で姉妹のように仲が良い。そしてアルブラン公爵夫人の親友の王妃殿にも妹のように大事にしてもらっている。
あのふたりはヴィオが王命で第2王子の婚約者にされたのが嫌だった。
王妃殿は「なんで可愛い大事なヴィオちゃんがあんな側妃の馬鹿息子と結婚しなきゃならないの! あんな女の口車に乗せらてよくも王命なんか出したわね!」と怒り、国王は小さくなっていた。
アルブラン公爵夫人も弟である国王には容赦ない。第2王子との婚約が解消されて1番喜んでいるのは国王かもしれない。
国王は優しくて良い人なのだが、優柔不断で気が弱い。そこを側妃や王弟につけ込まれやらかしてしまうことが度々あった。
王弟と側妃が断罪され、ほっとしているのだろう「もう側妃はいらん!」と声を大にしていた。
「旦那様、ルーファス様はほんとにヴィオと結婚したいのかしら?」
「さあな、もしそうならどう思う?」
「私はユリウスの方がいいわ。お姉さまの息子だし、アルブラン家なら将来的にも安泰でしょ? どんなことがあってもヴィオを守ってくれるわ。それにヴィオを国外に出したくないの。この国の王太子妃になどなったらすぐに会えないじゃない?」
確かに妻の言う通りだ。そしてこの国は不安定なところがある。ヴィオがアルブラン夫人のような人間だったら、王太子妃になってもいいだろうが、いかんせんヴィオは呑気で朗らかな娘だ。腹黒策士の中で腹芸をしながら生きるなんてことはさせられないし、できるわけがない。
リカルドの言うように早く縁談をまとめてしまおう。
「旦那様、お姉さまから早文よ」
さすが、アルブラン夫人。もう動いているのか。
「北の国に第1王女か」
「北の国の王妃様は旦那様のお姉さまでしたわね」
「あぁ、アルブラン公爵夫人とは確か同じ時期に東の国に留学していたと思う。姉上もアルブラン公爵夫人も腹黒同士仲良かったんじゃないか」
「まぁ、またそんなことを仰って。おふたりとも腹黒ではないですわ。いつも民の幸せを考えているので、人が嫌がる汚い仕事もやってくださっているのです。ほんとにとてもお優しくてよ」
ヴィオは妻に良く似ている。こんなナチュラルな人間達は腹の黒い私達が守ってやらなくてはならない。
私は兄上に呼ばれた。
「北の国の姉上から娘をルーファスの妃にどうかと言ってきたのだが、お前はどう思う?」
「姉上の娘というと、アンナマリーでしょうか? たいそう美しく賢いと噂を聞いたことがあります」
アルブラン公爵夫人、やることが早い。
「ルーファスはヴィオレッタが好きなようなんだがな」
「兄上、ヴィオレッタは婚約者がおります。それにあれは王妃など無理です。いくらルーファスがそう思ってくれてもお断りします」
「そうだな。ヴィオレッタに王妃は無理だな。特に我が国は不安定だ。大国の北の国に王女なら国にとって良いかもしれんな」
北の国は大国だ。強い兵力もある。この国にとって北の国との縁を深めるのは得策だ。さすがアルブラン公爵夫人、いいところに目をつけたな。ルーファスが拒んでも決まってしまうだろう。
さて、そろそろ私達も国に戻ろうか。自分の育った国ではあるが、なんだかつまらない。フィルやライザがこの国を出たがっているのもあの頃の私と同じ理由だろうか?
「旦那様、ユリウスが迎えに来てくれましたわ」
兄との話が終わり部屋に戻ると妻のパトリシアが嬉しそうに駆けてきた。
結婚して16年になるが、いつ見てもパトリシアは可愛い。ユリウスがヴィオを溺愛する気持ちがよくわかる。
腹黒な男はこういう平和で穏やかでのんびりした女の側がいちばん落ち着くのだ。
アルブラン公爵は大変だろうな。あの家には癒しがいない。だからヴィオが欲しいのかもしれないな。
ユリウスも迎えに来たことだし、さっさと帰ろう。
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