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一目惚れです
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15歳になったばかりの私は母と一緒に選んだ白いデビュタントのドレスを着て、父のエスコートで今夜、夜会にデビューすることになった。
この国では15歳になると成人貴族の仲間入りと見なされ、夜会に出ることができる。基本エスコートは家族が務めるが、婚約者がいる人はもちろん婚約者がエスコートする。
私はまだ婚約者がいないので父とともに入場する。
今日デビューする令息、令嬢は爵位順に国王陛下と王妃様に挨拶をし、お言葉をもらう。うちは侯爵家なので順番がくるのは早い方だ。
今日は王太子殿下もいらっしゃるらしく令嬢達は皆浮足だっているようだ。
父はそんな様子を見て苦笑している。
「皆、王太子妃の座をねらっているのだろうか? シャーロットはどうだ?」
「ご遠慮いたしますわ」
確か、王太子殿下は私より6~7歳位年上だったはず、年齢が離れているのであまり現実味がないような気がする。
それにここだけの話、絵姿でしか見たことはないが、王太子殿下の見た目は私の好きなタイプではない。
そんなことより、さっさと謁見を済まし、父と1曲踊り、ご馳走様を心ゆくまで堪能したい。
私は色気より食い気なのだ! きっと王家の夜会は美味しいものが沢山あるはず。そのためにコルセットもちょっと緩めに締めてもらっている。
食べるぞ! 食べるぞ! ご馳走様を想像してにまにましてしまった。
『シュープリームス公爵シャーロット嬢』
おっと、呼ばれた。
「さぁ、お父様行きますわよ」
次は我がシュープリームス侯爵家の番だ。私と父は謁見の間に向かって歩き出した。
謁見の間では、国王陛下、王妃様、王太子殿下が揃っていた。
私は頭を下げて陛下のお言葉を待つ。
「おめでとうシャーロット嬢」
「敬愛なる国王陛下、王妃様、王太子殿下、本日は夜会にご招待いただきありがとうございます。これからは貴族の一員として、この国にお尽くしする所存でございます」
「よろしく頼むぞ。頭を上げなさい」
必死で覚えた挨拶を済ませ、顔を上げた。その時、私は雷が上から落ちてきたかのような衝撃を受けた。
「シャーロット嬢どうした? 大丈夫か?」
国王陛下は固まる私を見ている。
「ご無礼致しました。大丈夫でございます」
口ではそう言ったが、全然大丈夫じゃない。まさか、私の理想そのものの人がこんなところにいるなんて。私は頭をクラクラさせながら、なんとか謁見を終えその場をあとにした。
「シャーロット、大丈夫か? 顔が真っ赤だぞ」
父が私の顔を覗きこむ。
「だ、大丈夫ですわ」
私の答えに父は笑っている。
「王太子殿下はそれ程格好良かったか?」
「王太子殿下?」
「王太子殿下の方を見て固まっていただろう。さっきは遠慮すると言っていたが実際会ったら一目惚れだったようだな」
王太子殿下? どんな顔だった? 全く印象にない。
一目惚れ? そう、一目惚れなんだわ。私、あの方に恋をしてしまったんだわ。
私は自分の気持ちを自覚してしまった。
「確かに私は一目惚れをしてしまったようですわ。でも王太子殿下ではありません」
父は首を捻っている。
「国王陛下か?」
「お父様は馬鹿ですか」
あの方は誰なんだろう?
私はもうデビュタントどころではなかった。
この国では15歳になると成人貴族の仲間入りと見なされ、夜会に出ることができる。基本エスコートは家族が務めるが、婚約者がいる人はもちろん婚約者がエスコートする。
私はまだ婚約者がいないので父とともに入場する。
今日デビューする令息、令嬢は爵位順に国王陛下と王妃様に挨拶をし、お言葉をもらう。うちは侯爵家なので順番がくるのは早い方だ。
今日は王太子殿下もいらっしゃるらしく令嬢達は皆浮足だっているようだ。
父はそんな様子を見て苦笑している。
「皆、王太子妃の座をねらっているのだろうか? シャーロットはどうだ?」
「ご遠慮いたしますわ」
確か、王太子殿下は私より6~7歳位年上だったはず、年齢が離れているのであまり現実味がないような気がする。
それにここだけの話、絵姿でしか見たことはないが、王太子殿下の見た目は私の好きなタイプではない。
そんなことより、さっさと謁見を済まし、父と1曲踊り、ご馳走様を心ゆくまで堪能したい。
私は色気より食い気なのだ! きっと王家の夜会は美味しいものが沢山あるはず。そのためにコルセットもちょっと緩めに締めてもらっている。
食べるぞ! 食べるぞ! ご馳走様を想像してにまにましてしまった。
『シュープリームス公爵シャーロット嬢』
おっと、呼ばれた。
「さぁ、お父様行きますわよ」
次は我がシュープリームス侯爵家の番だ。私と父は謁見の間に向かって歩き出した。
謁見の間では、国王陛下、王妃様、王太子殿下が揃っていた。
私は頭を下げて陛下のお言葉を待つ。
「おめでとうシャーロット嬢」
「敬愛なる国王陛下、王妃様、王太子殿下、本日は夜会にご招待いただきありがとうございます。これからは貴族の一員として、この国にお尽くしする所存でございます」
「よろしく頼むぞ。頭を上げなさい」
必死で覚えた挨拶を済ませ、顔を上げた。その時、私は雷が上から落ちてきたかのような衝撃を受けた。
「シャーロット嬢どうした? 大丈夫か?」
国王陛下は固まる私を見ている。
「ご無礼致しました。大丈夫でございます」
口ではそう言ったが、全然大丈夫じゃない。まさか、私の理想そのものの人がこんなところにいるなんて。私は頭をクラクラさせながら、なんとか謁見を終えその場をあとにした。
「シャーロット、大丈夫か? 顔が真っ赤だぞ」
父が私の顔を覗きこむ。
「だ、大丈夫ですわ」
私の答えに父は笑っている。
「王太子殿下はそれ程格好良かったか?」
「王太子殿下?」
「王太子殿下の方を見て固まっていただろう。さっきは遠慮すると言っていたが実際会ったら一目惚れだったようだな」
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一目惚れ? そう、一目惚れなんだわ。私、あの方に恋をしてしまったんだわ。
私は自分の気持ちを自覚してしまった。
「確かに私は一目惚れをしてしまったようですわ。でも王太子殿下ではありません」
父は首を捻っている。
「国王陛下か?」
「お父様は馬鹿ですか」
あの方は誰なんだろう?
私はもうデビュタントどころではなかった。
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