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4話 アマーリアがカナリアだったらいいのに
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東にある領地から魔獣討伐願いが来た。
それほど強い魔獣ではないが、田畑を荒らしたり、家畜を襲ったりするらしい。私は父に呼ばれた。
「リオ、すぐに東の領地に飛んでくれ。魔獣討と浄化のあとに嫁探しをしてきていい。とにかく先に魔獣を壊滅させろ。嫁探しは後だぞ」
「わかってる。きっちり魔獣を壊滅させてから探す。東の領地は農家が多い、早く被害を食い止めないと食い物がなくなるからな」
身体が完全に治る頃に、俺はすっかりリオンハルトの話し方に戻っていた。俺の中でリオネルが奥の方に潜んで、リオンハルトが浮上してきてしまったようだ。
今はまだ、完全に混ざり合うところまでいっていない。だが、そのうち融合し、リオネルとリオンハルトはひとつになるはずだ。そして、俺はリオネルの記憶をもったアウラー王国の第一王子、リオンハルト・アウラーとなる。
◇◇◇
今回の東の領地に行くメンバーはいつものメンバーだ。
俺の従者でなんでもそつなくこなせる器用で切れ者の茶クマのキース。
騎士隊を率いる最強第一騎士隊長ロルフ。
そして魔導士団を率いる回復魔法が得意な天才魔導士、白い子グマのツェツィーだ。
ちなみに、毛色だが、黒は王族。他は茶色。白は魔導士だ。
俺は黒だが魔力が強いので、胸のあたりに三日月のような白い模様がある。
キースもロルフも魔力が強い。キースは茶色と白が混ざったような薄い金色のクマでロルフは濃い茶色で胸に俺と同じような白い三日月の模様がある。
そうはいっても普段は人間化しているので、髪色にそれが出るくらいだ。俺は黒髪、キースはブロンド、ロルフは茶色。そしてツェツィーは白だ。
他の獣人の国では、人間化しても耳や尻尾が残る獣人もいるが、我々は耳も尻尾も残らず、見た目は人間となんら変わらない。俺達はまぁまぁイケメントリオなわけだ。
俺達3人は幼い頃からの付き合いで、いつもの討伐でも一緒なので気心もしれている。
途中から加わったツェツィーはまだ7歳だが天才魔導士と呼ばれ魔力は凄い。俺より上かもしれない。
ツェツィーには姉がふたりいる。中でも長姉のアマーリアは俺達世代の憧れの的。
美人でスタイルもいい。胸は大きいしウエストは細い。
だが、まぁ、これは人間化している時の話で、クマの姿は見たことがない。
クマ獣人が閨事をする時は、人間化した姿でもクマの姿でもどちらでもありだ。それは好みの問題でお互いの同意し行う。俺はアマーリアとなら人間化した姿でやりたいなぁ~。
脳内でグラマラスなアマーリアとのあんなことやこんなことをしている姿を思い浮かべていたら、ロルフが話しかけてきた。
「ツェツィーの力は認めるけど、やっぱり一緒に行くならアマーリアがよかったよなぁ。なぁ、リオ?」
「そうだなぁ~」
子グマだもんなぁ……って何を考えてるんだ俺。
ツェツィーは馬鹿にしたような顔で俺達を見た。
「アマーリア姉様はリオもロルフも興味ない。下衆な男は嫌いなんだよ」
あかんベーと右手の人差し指で右目の下瞼を下げ舌を出した。
ロルフは顔を真っ赤にして怒っている。
「お前、アマーリアに俺達の悪口を言ってるんだろう?」
「言わない。あんた達のことなんか話題にあがらないもん」
「ひで~、話題にしてくれよ~」
「嫌だ」
全くふたりは年が10歳も離れているとは思えないほど同じレベルで戯れている。
それにしてもアマーリアがカナリアだったらいいのに。リオネルの記憶が戻ってからずっとそう思っていた。アマーリアは俺と同じ年。カナリアと似ている気もする。そしてアマーリアは俺を避けているようで、なかなか会ってくれない。
カナリアにも記憶があったら、俺なんて許せるはずがない。自分を裏切り処刑した男なんて憎いだろう。
本当にアマーリアがカナリアなら俺はどんなことでもして償いたい。そしてやり直したい。
でも、アマーリアはカナリアのような気もするし、カナリアでないような気もするのだ。俺の中でガツンとくる感じがない。前世でカナリアと初めて会った時のようなインパクトがない。
ツェツィーが俺の上着の裾を引っ張る。
「リオ、お嫁さん探すの?」
「え? なんで知ってるんだ?」
「王妃様が言ってた。アマーリア姉様のことはあきらめるの?」
母上のお喋りめ! う~ん。なんと言えばいいのかわからない。俺は黙ったまま考えこんでしまった。
しばらくの沈黙のあと、俺の口から言葉が出た。
「人を探しているんだ。花嫁になってくれるかどうかはまだわからない。アマーリアのこともわからない。ごめん」
「謝らなくてもいいよ。アマーリア姉様は好きな人がいるんだ。だから諦めた方がいい」
ツェツィーは隣で座っている俺の頭をポンポンと撫で、椅子からぴょんと飛び降りた。
ツェツィはあんまり人間化しない。クマの姿でいる方が好きらしい。今もクマ姿のままだ。子グマに慰められる俺っていったい……。
ツェツィーはキースに抱っこをねだり、俺達に「じゃあね」と手を振りサロンからキースとともに出て行った、
「アマーリアに好きな男がいるって?」
ロルフは青い顔をしている。俺達一緒に失恋だな。
やっぱりアマーリアはカナリアではないのか。
俺は東の領地でカナリアと会える事を願った。
それほど強い魔獣ではないが、田畑を荒らしたり、家畜を襲ったりするらしい。私は父に呼ばれた。
「リオ、すぐに東の領地に飛んでくれ。魔獣討と浄化のあとに嫁探しをしてきていい。とにかく先に魔獣を壊滅させろ。嫁探しは後だぞ」
「わかってる。きっちり魔獣を壊滅させてから探す。東の領地は農家が多い、早く被害を食い止めないと食い物がなくなるからな」
身体が完全に治る頃に、俺はすっかりリオンハルトの話し方に戻っていた。俺の中でリオネルが奥の方に潜んで、リオンハルトが浮上してきてしまったようだ。
今はまだ、完全に混ざり合うところまでいっていない。だが、そのうち融合し、リオネルとリオンハルトはひとつになるはずだ。そして、俺はリオネルの記憶をもったアウラー王国の第一王子、リオンハルト・アウラーとなる。
◇◇◇
今回の東の領地に行くメンバーはいつものメンバーだ。
俺の従者でなんでもそつなくこなせる器用で切れ者の茶クマのキース。
騎士隊を率いる最強第一騎士隊長ロルフ。
そして魔導士団を率いる回復魔法が得意な天才魔導士、白い子グマのツェツィーだ。
ちなみに、毛色だが、黒は王族。他は茶色。白は魔導士だ。
俺は黒だが魔力が強いので、胸のあたりに三日月のような白い模様がある。
キースもロルフも魔力が強い。キースは茶色と白が混ざったような薄い金色のクマでロルフは濃い茶色で胸に俺と同じような白い三日月の模様がある。
そうはいっても普段は人間化しているので、髪色にそれが出るくらいだ。俺は黒髪、キースはブロンド、ロルフは茶色。そしてツェツィーは白だ。
他の獣人の国では、人間化しても耳や尻尾が残る獣人もいるが、我々は耳も尻尾も残らず、見た目は人間となんら変わらない。俺達はまぁまぁイケメントリオなわけだ。
俺達3人は幼い頃からの付き合いで、いつもの討伐でも一緒なので気心もしれている。
途中から加わったツェツィーはまだ7歳だが天才魔導士と呼ばれ魔力は凄い。俺より上かもしれない。
ツェツィーには姉がふたりいる。中でも長姉のアマーリアは俺達世代の憧れの的。
美人でスタイルもいい。胸は大きいしウエストは細い。
だが、まぁ、これは人間化している時の話で、クマの姿は見たことがない。
クマ獣人が閨事をする時は、人間化した姿でもクマの姿でもどちらでもありだ。それは好みの問題でお互いの同意し行う。俺はアマーリアとなら人間化した姿でやりたいなぁ~。
脳内でグラマラスなアマーリアとのあんなことやこんなことをしている姿を思い浮かべていたら、ロルフが話しかけてきた。
「ツェツィーの力は認めるけど、やっぱり一緒に行くならアマーリアがよかったよなぁ。なぁ、リオ?」
「そうだなぁ~」
子グマだもんなぁ……って何を考えてるんだ俺。
ツェツィーは馬鹿にしたような顔で俺達を見た。
「アマーリア姉様はリオもロルフも興味ない。下衆な男は嫌いなんだよ」
あかんベーと右手の人差し指で右目の下瞼を下げ舌を出した。
ロルフは顔を真っ赤にして怒っている。
「お前、アマーリアに俺達の悪口を言ってるんだろう?」
「言わない。あんた達のことなんか話題にあがらないもん」
「ひで~、話題にしてくれよ~」
「嫌だ」
全くふたりは年が10歳も離れているとは思えないほど同じレベルで戯れている。
それにしてもアマーリアがカナリアだったらいいのに。リオネルの記憶が戻ってからずっとそう思っていた。アマーリアは俺と同じ年。カナリアと似ている気もする。そしてアマーリアは俺を避けているようで、なかなか会ってくれない。
カナリアにも記憶があったら、俺なんて許せるはずがない。自分を裏切り処刑した男なんて憎いだろう。
本当にアマーリアがカナリアなら俺はどんなことでもして償いたい。そしてやり直したい。
でも、アマーリアはカナリアのような気もするし、カナリアでないような気もするのだ。俺の中でガツンとくる感じがない。前世でカナリアと初めて会った時のようなインパクトがない。
ツェツィーが俺の上着の裾を引っ張る。
「リオ、お嫁さん探すの?」
「え? なんで知ってるんだ?」
「王妃様が言ってた。アマーリア姉様のことはあきらめるの?」
母上のお喋りめ! う~ん。なんと言えばいいのかわからない。俺は黙ったまま考えこんでしまった。
しばらくの沈黙のあと、俺の口から言葉が出た。
「人を探しているんだ。花嫁になってくれるかどうかはまだわからない。アマーリアのこともわからない。ごめん」
「謝らなくてもいいよ。アマーリア姉様は好きな人がいるんだ。だから諦めた方がいい」
ツェツィーは隣で座っている俺の頭をポンポンと撫で、椅子からぴょんと飛び降りた。
ツェツィはあんまり人間化しない。クマの姿でいる方が好きらしい。今もクマ姿のままだ。子グマに慰められる俺っていったい……。
ツェツィーはキースに抱っこをねだり、俺達に「じゃあね」と手を振りサロンからキースとともに出て行った、
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