5 / 13
なんで・・・恋愛が嫌いな私が、よりにもよって恋愛シュミレーションゲームの主人公にして転生してるのよ、冗談じゃない!(5話)
しおりを挟む入学式の最中、カレンはソッと懐から手帳を取り出し、ケンゴに関するページを開いた。
「(第2の攻略キャラ、ケンゴ・オールドマン。 戦闘狂の一族、戦う事が大好きな脳筋バカ、考えるより先に行動するタイプ。 だけど明るくて無邪気で面倒見が良くて男気があって誰かを見下したり批判したりしない。その反面負けず嫌いで、誤解されやすく、言葉が足りず、口が悪い。 金にも権力にも執着をしていない一族だから、戦闘での報酬は必要な分だけを貰ったら、後はすべて領地に回している。 だから領地は他のキャラ達の中で1番に広い)」
そこまで読むとカレンは手帳をまた懐にしまった。
「(金と権力に執着心がないって言うのは魅力的だな。 何より整備が整った広い領地は、食料も人も豊富で商売のやりがいがある。 ゲームの時から1番気にいっているキャラなんだよなぁ)」
壇上を見ると、理事長がまだ長い挨拶をしていた。
この世界においてカレンが女であると言う事を知っているのは、両親達以外では国王、司祭様そしてこの聖オルフェン王立学園の理事長だけ。
「(この世界において人に魔力を与えるのは妖精達だ。 魔力持ち同士の両親がいたとしても、その子供が魔力を持って生まれてくるわけじゃない。 だから私が王妃なったところでその子供が必ずしも魔力持ちになるとは限らない事を国王もよくわかっている、それよりも私が高い地位の誰かの嫁になる事で、戦争になる可能性の方を危惧して回避に手を貸してくれてる、技術対抗戦でみんなを納得させる事ができれば……)」
そして学園生活が始まった。
本来のゲームならキャラクター達と接触をし、早々に何かしらのイベントの1つや2つは行われていたはずなのだが、今の自分は男のふりをしている。
キャラ達が遠巻きに学園生活を送る自分を見ているが、それ以上の接触はない。
ただ1人、ケンゴを除いては。
「レン! 今日こそは俺と勝負だ!」
「あ! ケンゴ、ちょうどいいところに来た、今度お店を出す商品としてパンケーキを作ったんだ、食べて感想聞かしてくれないか」
昼休み食堂で女子達と話をしていたところケンゴが現れた。
戦闘モード全開のケンゴに対してカレンは生クリームやベリーできれいに飾ったふわふわのパンケーキを笑顔で差し出した。
ケンゴはそれを受け取ると無言のまま食べ始めた。
「そこまで甘くないから、結構うまい! 上に乗ってるこの白いのなんだ?」
「生クリームだよ、牛乳とバターの間的な食べ物、甘さはハチミツの量を自分で調節できるからね」
説明するカレンを尻目にパンケーキが気に入ったのか、ハムスターのように口いっぱいに頬張る。
幾度と無くケンゴはカレンに戦いを申し込んでくるので、すでにカレンの周りにいる女子達はケンゴに慣れてきた。
もっともカレン自身、その申し出をのらりくらりと躱していて、今のところ戦った事は1度もない。
「レン様、またお店を出されるのですか?」
「え! その妖精のカメオを出している雑貨店のほかに何かやるんですか?」
「はい、商店街にある雑貨屋の近くにスイーツ専門店を開こうと思っているんです。 領地の方でも売っていたワッフルやクレープ、パイやタルトとクッキーの他にもこのパンケーキと後、アイシングクッキーも出します」
「このふわふわのパンケーキをいつでも食べられるなんて幸せですわぁ」
貴族令嬢達も平民の少女達もみんな幸せそうにパンケーキを頬張っていた。
「アイシングクッキーって何ですか?」
訪ねてきた女子生徒にサンプル品のアイシングクッキーを見せた。
ドレスやアクセサリー、花や蝶などの形をした色とりどりのアイシングクッキーに女子達が騒ぐ。
「(……大学生時代、友達に付き合ってあんまり興味が無かった、スイーツ研究同好会に参加していた事がところで役に立つとは思わなかったな~)」
そう思いながら、はしゃぐ女子達を見つめていると、後ろからボソっと男子の声が聞こえた。
「チッ! 女に媚びやがって」
「成金貴族のくせして」
チラッと後ろを振り返ると数人の男子達がこっちを睨んでいた。
「男の嫉妬ってみっともないなぁ」
「あ? なんのことだ?」
ボソっと言ったカレンの一言に隣でパンケーキを食べ終え、アイシングクッキーを頬張っているケンゴが反応した。
「……いいや、何でもない。 美味しい?」
「おお! でも剣の形がいい」
「ブフっ。 考慮に入れておくよ、ありがとう」
ケンゴの反応にカレンは思わず吹き出してしまった。
そんな2人の様子を影から覗き込む人物がいた。
そしてその人物が話しかけてきたのは、その週の休みの朝だった。
その日は、朝早くから新しいお店の下準備やお店に出すスイーツの反応が良かった物のリストをまとめたりと忙しい中、彼は来た。
「朝も早くからアポも取らずにすみません。 お邪魔しています、レン・アルフォード」
身長143センチの小柄な体型を隠すように、フリルのついた白いブラウスにグレーの半幅マントと同じ色の半ズボンのスーツ、クリーム色のベリーショートの髪に瞳と同じモスグリーンの杖を持った、愛らしい少年がニコニコしながら立っていた。
その名はヒューイット・ランチェスター、ちなみに年齢は13歳、飛び級で学園に入学するほどの天才。
「これは、ランチェスター卿ではありませんか、ご連絡いただければお出迎えしましたのに、私に何か御用でしょうか?」
「うん! 1つ気になる事があってね」
何の連絡もなく唐突に書斎まで来ると言うのには、こちらの商品を気にしての事だろうと言う事は分かっていた。
何しろランチェスターの家は大貴族でありながら何世代も続く商人の家系でもある。
しかしこちらも商売、そうやすやすと手の内を見せるわけにはいかない、と並べていた資料を見られる前に手早く閉まった。
実際この空中都市の商店街にあるお店の半分近くはランチェスターのお店、敵に回すのも得策ではないと、持て成す事になった。
ヒューイットを客間に通して持て成している間に、カレンは資料と仕事を職人達に割り振った後で、客間に向かった。
向かう途中、手帳を開いた。
「(第3の攻略キャラ、ヒューイット・ランチェスター、商人一家の次男、ランチェスター家始まって以来の天才児、ついた異名はランチェスターの申し子。 備えあれば憂いなしがモットーの性格、好奇心旺盛で人を惹きつけまとめる。 しかしその反面、束縛を嫌い、ワンマンになりやすく、わがままでちょっと皮肉っぽい、そこら辺は子供のまんまねぇ。 てか、前世は30歳、今世で15歳合わせると45歳のおばちゃんから見たら13歳なんて子供でしかない、恋愛対象どころじゃないわ)」
と、ため息と共に手帳を閉まった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた
ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。
シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。
そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。
恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。
気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる