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なんで・・・恋愛が嫌いな私が、よりにもよって恋愛シュミレーションゲームの主人公にして転生してるのよ、冗談じゃない!(6話)
しおりを挟む「お待たせしてしまって申し訳ありません、ランチェスター卿」
部屋に入るなり挨拶をするカレン。
「構いませんよ、アポを取らずにきたのは僕ですから。 それよりこのアイスクリームも新商品なんですよね! 大概のものは見ただけで作り方が分かるけど、これははっきり言って分かりません。 気になります」
美味しそうにアイスを食べながら、訪ねてきた。
「ええ、スイーツ専門店に出そうか迷っている商品です。 原材料が高いのと造り方が特殊なので、元が取れなくって」
ここは天空都市、物資を手に入れるのも容易じゃない。
「では、僕がスポンサーになるのはどうですか? 暑くなる今からの時期、売れますよ」
さっきまでとは打って変わって、見た目通りの年齢ではしゃぐヒューイット。
「常に冷やしていないといけないので、設置するスペースがないんです」
「では、新しい店舗をお貸ししましょう」
「よろしいんですか?」
「構いません。 儲かりそうな話には惜しみなく投資する主義なので、もっともこちらも利益はいただきますけどね」
悪巧みをしてそうな顔でニヤリと笑う。
「そうですかでは遠慮なく、中央市場に場所をお借りしたいのですが」
カレンのその言葉にヒューイットは驚く。
「中央市場で貸せる店舗はありませんよ。 仮にあったとして元を取るのが難しいこの商品では、利益は望めません」
「中央市場の隅に市場におろす商品を一旦預けておく倉庫がありましたよね、あそこの前を少しばかり貸していただきたいんです」
「あ……そこの前は、馬車一台分止められるかって位のスペースしか無いけど」
「えぇ、それで大丈夫です」
困惑するヒューイットにカレンは笑いながら答える。
自信満々に答えるカレンに対し、空になったアイスの器をテーブルに戻して商売の話をする。
「…………食べ歩き! しかも器をワッフルで作って、器のワッフルごと食べるなんて、そんな発想、今まで考えた事もなかった」
お菓子であろうと食事であろうとテーブルで食べると言うのが当たり前の貴族にとってはない、そんな発想に動揺するヒューイット。
「しかも、荷馬車を使った移動店舗って……」
前世で言うところの『移動販売車』と言う事だ。
「商品を作ったり置いたりするスペースさえあれば事足りるでしょ? ちなみに、寒くなったらアイスは売れなくなるので、冬になったら焼きたての暖かなワッフルを食べ歩きできるようにすればいい。 どうです?」
次から次へとアイデアが出てくるカレンに対してヒューイットは脱力した。
「……僕はね、物事がどう動くのか、その背景を知る事を何より大事にしているんだ! 急成長する君達、アルファード商会を調べてみたら出てきたのが君だった。 君がどこからどんな商品を生み出すのか、そのアイデアの源が何なのか……気になるなぁ」
「それは秘密です」
カレンは意味ぶかしげに笑いながら答えた。
その後、契約を書面にし、あっという間に話がまとまった。
「はぁ~、こんなにも有意義な契約をする事が出来たのは久しぶりだよ」
紅茶を1口飲み、ヒューイットがため息まじりに言った。
「それで、本日のご用件は何です? まさかアイスの件じゃありませんよね」
先程の書面をオリビアに渡しながらカレンが尋ねた。
カレンのその問いに答えたのはヒューイットではなく、付き人兼護衛役の1人モーリスだった。
「貴殿に用向きがあるのは自分です。 自分はケンゴ殿と戦いのです」
なるほど、でその申し出にヒューイットはアポなしで凸ってきたわけか。
「戦えば良いのでは? 誰の申し出も断っていませんでしたよ」
「戦うからには勝って欲しいんだよ。 でもモーリスじゃ魔力量も剣の技も彼には勝てない」
「魔法でもなく剣でもなく、彼に勝つ方法が欲しいってわけですか」
「その為の投資は惜しみませんよ」
相変わらず優雅に好調すすりながら、ヒューイットは言った。
カレンもまた同じように紅茶を片手に話を続ける。
「しかし魔法も剣も封じた状態で戦って勝ったら、卑怯だと後ろ指刺されるんじゃないんですか?」
「では、後ろ指をさされない方法もコミコミでアイデアを買います。 3割増でどうですか?」
「ずいぶんと気前がいいんですね」
「貴族にとってメンツって大事だからね」
端から見るとニコニコとお茶を飲んでいるだけの風景なのだが、その笑顔がなんとも恐ろしいとモーリスの隣で、もう1人の付き人兼秘書のメルトは思う。
「分かりました。 アイデアがまとまったら、連絡をします」
カレンの言葉を聞いたヒューイット達は、帰っていった。
それから2週間後の同じ休みの日に、カレンからの呼び出しではあったので、きちんとアポを取りヒューイットはまたカレンを訪ねてきた。
1番最初にアイスクリームの移動販売についての話が行われた。
アイスの作り方、保存の仕方、販売マニュアル、販売をする為の台車の設計図など様々な事を話し合い、書面にし、契約を交わした。
そうしてもう1つ、ケンゴとの戦いについての話し合いに移った。
「…………必要な物って、これだけですか?」
カレンから渡された書類を見つめヒューイットが訪ねた。
「ええ、必要な物もルールも書いてある通り、至って簡単。 ただし、有利に勝てる方法を考えましたが、確実に勝てるかは、あなた次第です」
カレンの言葉にモーリスは顔をしかめた。
それから1ヵ月、物を取り寄せたり作ったりと色々とやっていたが、その間今回の計画は全て内密に行われていた。
しかし開催直前になり場所の確保の為に学園側に申し出をしたところ、詳細な内容はまだ秘密のままだが、生徒達の間に噂が広まった。
「レン様! ケンゴ様と戦うって本当ですか?」
「聞いた話じゃ魔法も剣も使わないって話じゃねーか、お前に勝てるのか? 天下の戦闘狂に!」
昼休み食堂へと移動するカレン。
その周りには心配そうな女子達と、揶揄してくる男子達、多くの生徒達が集まった。
「戦うのは俺じゃないよ。 まっ、でも戦いはやるから楽しみにしてなっ」
周りの生徒と話をしながら歩いていた時だった、カレンは階段を踏み外し、転びそうになった。
運の悪い事にそれは階段の踊り場の三段程上で、そして更に運の悪い事に入学してから徹底的に避け続けきた、ヨルン・オルフェンが下から上がってきたところだった。
「ああ! 危な!!」
「え?」
避けようとしたが間に合わずカレンはヨルンの上に倒れ込んだ。
そして、その勢いのまま2人は唇を重ねた。
「(あ! これゲームのヨルンルートのイベントにあった。 確かあの時は悪役令嬢マーガレットに背中を押されて、階段の下にいたヨルンが受け止めきれずに、倒れてキスした事で、意識からの婚約だった……)」
だけど、そんなものはゲームの中の世界でしかない事を実感した。
「痛って~!」
「っつ~……」
2人揃って悶絶。
それもそのはず唇が重なったその瞬間、歯が当たってしまい2人とも流血。
「レン様、大丈夫ですか!?」
「殿下! 大変、唇から血が……」
周囲の生徒達が2人を心配する。
「いや……大丈夫」
「痛ったぁ……すいませんね殿下、大丈夫ですか?」
起き上がりながら、適当に謝ったカレンに対してマーガレットが怒った。
「あなたね! なんですかその謝り方は、誰に向かって謝っていると思っているのですか!」
悪役令嬢のマーガレット・エヴァーグレイス、15歳の風属性。
身長は160センチと小柄だが、バストサイズはカレンよりも大きく、金色の髪はそのままなら膝まである長さを悪役令嬢らしく、豪快な縦巻きロールにしていた。
何事もきっちりしていて、まっすぐで実力能力の高い努力家、正義感の強い性格。
本来ならヨルンルートで彼女と対決をする予定ではあったが、男装をしているので今のところ2人の仲を引き裂く予定もないので、彼女とも接触してこなかった。
そんなマーガレットの怒りを諫めたのはヨルンだった。
「大丈夫だ。 残念だよ! 君が女だったら、嫁にしていたのに」
口を押さえながら冗談交じりに言った一言だったが、ヨルンのその言葉にカレンは一瞬怯んだ。
「ご冗談を! 例え俺が女だったとしてもあなたと結婚する事はありませんよ。 俺が王妃になんてなったら、この国は戦争になってしまう」
カレンが男装をしている事を知らない周りの生徒達は「言われてみれば、確かに」と言う反応で笑うがカレンにとって、恐怖の一瞬だった。
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