7 / 13
なんで・・・恋愛が嫌いな私が、よりにもよって恋愛シュミレーションゲームの主人公にして転生してるのよ、冗談じゃない!(7話)
しおりを挟むそんな事件が起きた10日後の休日、かねてより準備をしてきた戦い火蓋が切って落とされた。
その日は休日にもかかわらず多くの生徒達が、学校の一角に集まっていた。
前日まで何もなかったそこには四方を4つのポールが立っており、その4つのポールを囲むように四角く縄が張り巡らされていた。
一体何が始まるんだろうとワクワクしながら待つ生徒達の手には、先日契約を交わしたばかりの食べ歩きができるアイスクリームがあった。
「こんな所でも商売する?」
呆れるカレン。
「この学園都市の1番のお客さんはこの学園の生徒達だからね、これだけの注目を浴びているのならもう一商売やるのも、得策じゃない」
さすがはランチェスターの申し子、実際に生徒達の6割がたはアイスを手に持っている。
「と、言うか。 人の事を言うけど君も商売しているじゃないか」
ヒューイットの指差す先にはポップコーンを売っている移動荷馬車があった。
「これって、なんですか?」
ヒューイット自身もそれを買って食べているようで気になってカレンに尋ねた。
「ポップコーンと言うしょっぱいお菓子です。 冬の蓄えで余ったとうもろこしを使っているんです。 あまりなので、コストを抑えてあるからかなり安いですよ」
そうこうしているうちにケンゴとモーリスがやってきた。
その出で立ちは上半身が白いタンクトップと動きやすいズボンに裸足、そして両手にはグローブが装着され。
一体何が始まるのかとザワつく生徒達にカレンが声をかけた。
「それでは、これよりケンゴ対モーリスの『スデゴロ』対決を開催します」
『スデゴロ』と言う聞き慣れない単語に戸惑う生徒達。
「ルール至って簡単。 魔法も剣も一切禁止。 両拳で相手を殴りダウンさせ10秒間で相手が立てなければ勝ちとなります。 ダウンが取れなくてもレフェリーがストップをした場合や最終ラウンドまで戦い、判定で勝敗が決まる場合もある。 また殴る範囲はズボンより上で、後頭部や背中は殴ってはいけない。 当然、蹴りも肘打ちもダメです。 3分間戦い1分間のインターバルで1ラウンド、これを10ラウンドまでやります」
本来のボクシングはもっと細かいルールや階級などがあるが、初めてだし彼らは兵士でもある、少しシンプルにした。
説明を聞いた2人はそのままリングに上った。
今回レフェリーと審判を務めてくれるのはいつも防壁を守っている兵士達だ、と言うか今日のこの対決を見ようと非番の兵士達の姿もあった。
準備が終わった2人を見てカレンは第1ラウンドのゴングを鳴らした。
ゴングが鳴ったその瞬間、先に仕掛けたのはモーリスだった。
強烈な右ストレートがケンゴの顎にヒットした。
ケンゴ自身もそれに反応してパンチを繰り出すもリーチの長さが足りなかった。
強烈な一撃に天下の戦闘狂がダウンした。
一瞬何が起きたのかと周りの生徒達はポカーンとしたが、やがてケンゴが膝をついたと言う事を理解すると、湧き上がった。
この一撃こそが勝てるかもしれないとカレンが提示した話。
1ヵ月前。
「ええ、必要な物もルールも書いてある通り、至って簡単。 ただし、有利に勝てる方法を考えましたが、確実に勝てるかは、あなた次第です」
カレンの言葉にモーリスは顔をしかめた。
「待ってこれで一体どうやってモーリスがケンゴに勝てるっていうの?」
ヒューイットの問いにカレンはニヤリと笑いながら答えた。
「モーリス、君は魔法でも剣でも勝てない、でも唯一彼に勝てるもの、それはその体格だ。 ケンゴの身長は170以下、君の身長は180以上その長い手足の差こそが勝敗を分ける」
1ヵ月前、今回の計画を立てた時の事を思い出しながらカレンは試合を見つめる。
そして予想通り互いにクロスカウンターを交わしてもリーチの差でモーリスの攻撃が通った。
しかし勝負はこれからだ。
なぜならその一撃でケンゴの闘志に火がついてしまったからだった。
10カウント中、8カウントでケンゴが立ち上がった。
足元がおぼつかないが、明らかにワインレッドの瞳は燃えていて、唇が切れて流血しているのに彼は楽しそうに笑った。
そこからの前世で読んだボクシング漫画を彷彿とさせる、凄まじい攻防だった。
攻撃を気にせず前へ前へと打っていくケンゴ、それを躱しつつ、リーチの差を生かした攻撃を繰り出すモーリス。
一進一退の攻防が繰り広げられる。
周りの男子達や非番の兵士達もその様子に沸き立ち野次を飛ばす。
最初は押していたモーリスも次第にケンゴの攻撃に押されていく。
5ラウンド目のインターバルで、モーリスがタンクトップを脱いだ。
それを見たケンゴも同じくタンクトップを引きちぎった。
リングの上、2人とも鍛え抜かれたその強靭な肢体がぶつかり合うその様を、最初は野蛮だと遠巻きに見ていた女子達も、やがてその空気に飲まれ応援をし始めた。
そんな空気の中、カレン1人だけが冷静だった。
「(ケンゴの性格から考えて、判定勝ちなんてものは多分ないだろうな。 10ラウンドでダウンが奪えなかったら、12ラウンドまで伸ばすか……)」
そんな事を考えていた9ラウンド目、ケンゴの右アッパーがモーリスの顎にヒット。
モーリスは、糸が切れたマリオネットのように膝から崩れ落ちた。
まだ戦闘モードのケンゴを抑えつつ、10カウントを取るレフェリー。
何とか起き上がろうと這いつくばるが、10カウントでモーリスは負けた。
王族や貴族達がいるとは思えない熱狂したその空気の中、2人はお互いの検討を称え合い、握手を交わした。
試合はモーリスの負けだったが、ダメージはケンゴの方が大きかったので勝負には勝ったと言う感じだった。
その試合から2ヶ月、兵士達はや生徒達の間で『スデゴロ』は瞬く間に人気の競技として広まり、週末ごとにどこかで試合が開催されるようになった。
それに伴いグローブやリング等の用品も必要とされ、新たにサウンドバックやミトン等を追加で作って売る事となった。
「(大貴族様達がいるから、広まる事はないだろうと思っていたんだけどなぁ)」
まさかここまで反響があるとも思えず、懐が潤う嬉しい誤算だった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた
ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。
シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。
そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。
恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。
気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる