なんで・・・恋愛が嫌いな私が、よりにもよって恋愛シュミレーションゲームの主人公に転生してるのよ、冗談じゃない!

塚本麗音

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なんで・・・恋愛が嫌いな私が、よりにもよって恋愛シュミレーションゲームの主人公にして転生してるのよ、冗談じゃない!(7話)

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そんな事件が起きた10日後の休日、かねてより準備をしてきた戦い火蓋が切って落とされた。

その日は休日にもかかわらず多くの生徒達が、学校の一角に集まっていた。
前日まで何もなかったそこには四方を4つのポールが立っており、その4つのポールを囲むように四角く縄が張り巡らされていた。
一体何が始まるんだろうとワクワクしながら待つ生徒達の手には、先日契約を交わしたばかりの食べ歩きができるアイスクリームがあった。
「こんな所でも商売する?」
呆れるカレン。
「この学園都市の1番のお客さんはこの学園の生徒達だからね、これだけの注目を浴びているのならもう一商売やるのも、得策じゃない」
さすがはランチェスターの申し子、実際に生徒達の6割がたはアイスを手に持っている。

「と、言うか。 人の事を言うけど君も商売しているじゃないか」
ヒューイットの指差す先にはポップコーンを売っている移動荷馬車があった。
「これって、なんですか?」
ヒューイット自身もそれを買って食べているようで気になってカレンに尋ねた。
「ポップコーンと言うしょっぱいお菓子です。 冬の蓄えで余ったとうもろこしを使っているんです。 あまりなので、コストを抑えてあるからかなり安いですよ」

そうこうしているうちにケンゴとモーリスがやってきた。
その出で立ちは上半身が白いタンクトップと動きやすいズボンに裸足、そして両手にはグローブが装着され。
一体何が始まるのかとザワつく生徒達にカレンが声をかけた。

「それでは、これよりケンゴ対モーリスの『スデゴロ』対決を開催します」
『スデゴロ』と言う聞き慣れない単語に戸惑う生徒達。
「ルール至って簡単。 魔法も剣も一切禁止。 両拳で相手を殴りダウンさせ10秒間で相手が立てなければ勝ちとなります。 ダウンが取れなくてもレフェリーがストップをした場合や最終ラウンドまで戦い、判定で勝敗が決まる場合もある。 また殴る範囲はズボンより上で、後頭部や背中は殴ってはいけない。 当然、蹴りも肘打ちもダメです。 3分間戦い1分間のインターバルで1ラウンド、これを10ラウンドまでやります」
本来のボクシングはもっと細かいルールや階級などがあるが、初めてだし彼らは兵士でもある、少しシンプルにした。
説明を聞いた2人はそのままリングに上った。
今回レフェリーと審判を務めてくれるのはいつも防壁を守っている兵士達だ、と言うか今日のこの対決を見ようと非番の兵士達の姿もあった。
準備が終わった2人を見てカレンは第1ラウンドのゴングを鳴らした。

ゴングが鳴ったその瞬間、先に仕掛けたのはモーリスだった。
強烈な右ストレートがケンゴの顎にヒットした。
ケンゴ自身もそれに反応してパンチを繰り出すもリーチの長さが足りなかった。
強烈な一撃に天下の戦闘狂がダウンした。
一瞬何が起きたのかと周りの生徒達はポカーンとしたが、やがてケンゴが膝をついたと言う事を理解すると、湧き上がった。
この一撃こそが勝てるかもしれないとカレンが提示した話。


1ヵ月前。
「ええ、必要な物もルールも書いてある通り、至って簡単。 ただし、有利に勝てる方法を考えましたが、確実に勝てるかは、あなた次第です」
カレンの言葉にモーリスは顔をしかめた。
「待ってこれで一体どうやってモーリスがケンゴに勝てるっていうの?」
ヒューイットの問いにカレンはニヤリと笑いながら答えた。
「モーリス、君は魔法でも剣でも勝てない、でも唯一彼に勝てるもの、それはその体格だ。 ケンゴの身長は170以下、君の身長は180以上その長い手足の差こそが勝敗を分ける」

1ヵ月前、今回の計画を立てた時の事を思い出しながらカレンは試合を見つめる。
そして予想通り互いにクロスカウンターを交わしてもリーチの差でモーリスの攻撃が通った。
しかし勝負はこれからだ。
なぜならその一撃でケンゴの闘志に火がついてしまったからだった。

10カウント中、8カウントでケンゴが立ち上がった。
足元がおぼつかないが、明らかにワインレッドの瞳は燃えていて、唇が切れて流血しているのに彼は楽しそうに笑った。
そこからの前世で読んだボクシング漫画を彷彿とさせる、凄まじい攻防だった。
攻撃を気にせず前へ前へと打っていくケンゴ、それを躱しつつ、リーチの差を生かした攻撃を繰り出すモーリス。
一進一退の攻防が繰り広げられる。
周りの男子達や非番の兵士達もその様子に沸き立ち野次を飛ばす。
最初は押していたモーリスも次第にケンゴの攻撃に押されていく。
5ラウンド目のインターバルで、モーリスがタンクトップを脱いだ。
それを見たケンゴも同じくタンクトップを引きちぎった。
リングの上、2人とも鍛え抜かれたその強靭な肢体がぶつかり合うその様を、最初は野蛮だと遠巻きに見ていた女子達も、やがてその空気に飲まれ応援をし始めた。

そんな空気の中、カレン1人だけが冷静だった。
「(ケンゴの性格から考えて、判定勝ちなんてものは多分ないだろうな。 10ラウンドでダウンが奪えなかったら、12ラウンドまで伸ばすか……)」
そんな事を考えていた9ラウンド目、ケンゴの右アッパーがモーリスの顎にヒット。
モーリスは、糸が切れたマリオネットのように膝から崩れ落ちた。
まだ戦闘モードのケンゴを抑えつつ、10カウントを取るレフェリー。
何とか起き上がろうと這いつくばるが、10カウントでモーリスは負けた。

王族や貴族達がいるとは思えない熱狂したその空気の中、2人はお互いの検討を称え合い、握手を交わした。
試合はモーリスの負けだったが、ダメージはケンゴの方が大きかったので勝負には勝ったと言う感じだった。

その試合から2ヶ月、兵士達はや生徒達の間で『スデゴロ』は瞬く間に人気の競技として広まり、週末ごとにどこかで試合が開催されるようになった。
それに伴いグローブやリング等の用品も必要とされ、新たにサウンドバックやミトン等を追加で作って売る事となった。
「(大貴族様達がいるから、広まる事はないだろうと思っていたんだけどなぁ)」
まさかここまで反響があるとも思えず、懐が潤う嬉しい誤算だった。

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