零れ落ちる想いの花

花霞

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邂逅

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 謝り続ける青年に少女は苦しそうに顔を歪めた。

「私の方こそ、ごめんなさい。ずっと、友雪くんを縛り続けてしまっていました」

 美姫は目をつぶり、たくさん見た過去の自分を思い出す。どれも記憶にないけれど、確かにそこに存在していた、自分。隣にいる青年と仲良く遊んでいる場面もたくさん、あった。


――上手く、出来るか判らないけれど……


 少女はベンチから立ち上がり、泣いている幼馴染の前に立ち、その名前を呼んだ。



「友雪」

「――っぁ」

 懐かしいその響きに、友雪は思わず顔を上げる。

 ボロボロと零れる涙にそっとハンカチを押し当て、少女はゆっくりと微笑んだ。


 瞬間、友雪の眼前に薄紅色の景色が映し出された。いつか見た夢を見ているのだと、頭の片隅で思いながら、舞い散る桜の花びらの中で笑う少女に手を伸ばす。


 今までどんなに伸ばしても届かなかった手に、初めて少女の手が触れた。少年の鼓動はぐんっと跳ね上がり、何とも言えない歓喜に胸が震える。

 10年以上の歳月をかけ、やっと触れる事が出来た彼女の手は小さく、柔らかかった。友雪が思わず微笑み返すと、少女は自分よりも大きなその手を両の手でそっと包み込んだ。


「長い間、私を想っていてくれて有難う」


 首をブンブンと振りながら、泣きじゃくる青年を少女は優しく見つめ、握っていた手を解き、数歩後ろへ下がる

「友雪、ばいばい」


 青年にそう告げたのと同時に、薄紅色の幻影も霧散する。溢れる涙の先にいるのは、困ったような顔をしている幼馴染の姿。


 襲ってきた喪失感と罪悪感に押しつぶされそうになりながら、青年は声をあげて泣いた。そんな青年の横で、少女は何も言わず、ただ、空を見上げ、彼の中の『美姫ちゃん』が彼を解放していてほしいと、そう願った。

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