時空間を駆ける者たち

桐原真保

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19章 桐生葵らを発見

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 葵が拉致された…?
 涼介は思わず天井を見上げた。
「桐生さんたち、行方不明になった三人は中学時代の同級生とわかりました。恐らく集まって、情報交換をしていたのでしょう。なお、緊急用のGPS装置は全員に渡しています。使い方もみなさん十分に周知していますので、きっと隙を見て使用してくれるものと信じています」
 山本調査員が言うと、涼介は一応うなずいたが心配そうに言った。
「しかし、三人を拉致するなんて、一体なぜでしょう。それに葵はうかうか騙されて連れ去られるような子じゃないです」
「侵入者らは焦っています。おそらく今回の地殻変動によるエネルギーの消滅の時期が迫っているのです。もしかしたら強引に脅して連れ出したかもしれません」
「僕が逃げ出したからですか」
「いや、そんなことはないと思います」
「でも脅しても、葵らが彼らの望むような行動を取るとは思えないですけど」
「そうですが、拉致された三人が無抵抗なフリをすることを期待します。桐生さんらの安全のためには」
 涼介はゾッとした。
「深澤本部長がすでに必要な手配をされました。鏑木氏に連絡が行ったはずです。我々も準備をしましょう」

「感知しました」
 会議室の近くの別室に対策部が設けられた。その部屋に備えられた機器の一つに繋がれた大型スクリーン上には地形図が描かれている。
「場所は神奈川県臼木市の郊外…。点滅しています」
 GPS装置の操作員は首を傾げながら調整を続ける。
「三人のうち誰かがGPSを作動させたんだ、よかった」山本調査員が言った。「彼らを追跡できる。…点滅している理由は、彼らがこの世界とあっちとを微妙にバランスを取りながら行ったり来たりしてるからです」
 テロ対策委の関係者らもスクリーンを見つめている。
 この世界とあっちの世界って…。聞きたくない、信じたくない、と思いながら涼介は成り行きを見守るしかなかった。
 操作員の一人が携帯で連絡を受け取り、報告した。
「深澤部長。鏑木氏の車が準備完了です」
 深澤はうなずいた。

 涼介を数日前に助けた鏑木らの車両、そして深澤の手配した軍用車のように見える他の二台の車両は30分後には臼木市の郊外、森林公園に到着した。涼介、山本調査員、深澤の部下と、自衛隊員らしき人物も後部座席に座っている。あれから点滅が移動した距離からすると、林の中を隠れながら移動したと思われた。
 山本は車に乗っている間、涼介の前の座席で携帯を使って本部や深澤らと何か連絡を取り続けている。時々涼介を振り向く。涼介は葵たちのことが気が気でなかったが、山本らが何かを計画しているのは感じた。おそらく涼介も関わることだろうと。
「あそこだ」
 運転手が指差した。
 涼介は、葵が林のヘリに半分隠れているこちらの車に気がつき、手を振って他の二人と一緒に駆けてくるのが見えた。
「葵!」
 三人は時々振り返りながら必死で走っている。車から自衛隊員らが降り、彼らを迎えるために駆けて行った。
「蓮見君! 皆さん!」

「涼介君がいなくなったのち、私たち中学の同級生で集まって話をしていました。プログラムのことが関係あるのだろうと」
「ええ。それで蓮見さんが見つかったので、よかったねと言ってたんですけど。三人で喫茶店を出たところで、派手な格好をした女性と二、三人の男性に銃のようなもので脅され、仕方なく車に乗り込みました」
 車の中で葵らの話は、山本や吉田部長の予想していた通りだった。

 ぐったりと疲れた表情の三人に吉田部長が行った。
「皆さん。本来ならここで皆様を無事に都内の安全なところにお届けするところです。しかしそうは行かないのです。このまま皆さんには、テロリストの追跡に加わってもらいます」

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