時空間を駆ける者たち

桐原真保

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20章 今こそ不思議な力を使う時!

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 鏑木の部下たちは、車の中でローサらを追跡するための装置を調整している。涼介はそっと覗いてみた。高価な科学分析機器のようなものを予想していた涼介はあてが外れた。ごくシンプルなオシロスコープのようなものだったからだ。

 涼介は森林公園のベンチで休んでいる葵らのところに行った。
「そろそろいいか。 俺たちが仕事をする時が来たんだ」
 葵とその友達、カナとシュンと名乗る二人は山本調査員と話をしていた。山本の部下がラップトップと、それに繋いだディスプレーを操作している。葵が振り返る。
「いいわよ。私たちの、ふふん、あの変な力が戻ったのね」
「肩に埋め込まれたマイクロチップにはGPSの他に、僕らの力を制御する装置が仕込まれていたんだ。それがオフにされたからもう、力を自由に使うことができる」
「弁解をするという訳ではありませんが」
 山本が言う。
「制御装置がオンにされている間も、自己防衛能力だけは維持されていたはずです。皆さんを守るために」
「それはわかります」涼介は言った。「サッカーボールが後ろから飛んで来ても、ボールが僕を避けて通りました」
 葵とその友達は顔を見合わせた。
 涼介は言った。
「それは感謝しておきます。…よし、みんな。やってみよう」
 涼介は立ち上がり、ディスプレーに向かった。

 軍用車両に関係者たちを残し、鏑木の車だけが出発した。運転手と鏑木の部下、涼介ら四人、それに山本調査員と部下だ。
 後部座席の椅子は壁に向かって一列に並べ替えられている。四人はその椅子に、涼介を先頭に一列に並んで座った。これは山本らとの念入りな打ち合わせで決められたことだった。
 市街地を過ぎ、郊外に出る。風景がぼやけ始めると涼介は吐き気をもよおす。
 他の子は? 
 見ると、葵も他の二人も辛そうな顔をしている。
「なぜ僕らはこんなに苦しい思いをするんですか」
 顔を歪めながら涼介は山本に尋ねた。
「あなた方の体が過敏だからです。時空の歪みに反応するのです。我々普通の人間は感じることもできない変化なのですけどね。完全に違う場所に入ってしまえば大丈夫ですよね」
 涼介は苦笑する。
「そうですか。普通でない方が不利な点が多すぎると思います」

「前方左に現れました」
 助手席に座った男がナビの左手上部を示す。山本調査員が身を乗り出す。ナビ上の点は点滅していないで光ったままだ。これは物体があちこち行ったり来たりせず、一方の世界に存在していることを示しているらしい。
「ターゲットにロックして追跡します」
 運転手が言うと、後部座席の涼介らは緊張した。涼介は手をグッと握りしめた。
「この車の方が速いんですか」
涼介は尋ねた。
「そうです。少なくとも2割り増しのスピードが出ます」
運転手が答えた。
 ナビの地図が次第に拡大され、前方の物体に近づいていく。後部座席からもその様子がわかった。
 側面の窓、涼介らの正面になっているパワーウィンドウが一斉に作動し、スライドして下に降りて行った。がら空きの窓から風が吹き込む。葵が身震いしたが、冷たい風のせいだけではない。
「みなさんの安全のため、この作戦は一度だけです、一瞬のみ。構えはいいですか? 彼らの車の底部を狙ってください。」
 山本が叫ぶ。
「了解です!」
 涼介がわめいた。
 ナビの拡大が最大になり、光る点がすぐそこまで近づいていることを示す。
「あれです」
 助手席の男が指し示す先に、もう肉眼でターゲットの車が見えた。真剣に計器を見つめている山本の助手が大声でカウントダウンを始めた。涼介らは立ち上がる。
「10、9、8…」
 涼介は拳を突き出した。葵は隣で両手をグルグル回している。
「4、3、2…1!」 
 今までにやったことがないほど涼介は両手の拳にありったけの力を込めた。鋭い光が視界を遮った。次の瞬間、涼介らは大きな衝撃を受け座席に押し付けられた。
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