1 / 20
1章
第一話
しおりを挟む目の前の柔らかな肉に指を沈ませる。
すると嬌声が甲高く響き、上総は思わず眉を顰めた。
きっとあいつはこんな声はださんだろうな、と思ったからだ。
すると、今しがた喘いでいた女が上総をねめつける。
「旦那様、別の女のことをお考えですね」
手が止まっておりますよ、と女が口をとがらせる。
上総はその言葉に、少し笑う。
そして、謝罪を口にする代わりに、自分の下にいる女を抱え込んで自分の上に座らせた。
女は感じ入ったような声を出して、上総の首に腕を回す。
上総は軽く女を揺すりながら、耳孔に言葉を吹きかけた。
「花街の女がよう言うわ。その口、明日には別の男の上で囀っとるくせに」
「そんないけずなこと、…は、あ…言わんでくださいな」
女は熱く湿った吐息を漏らす。
上総は女の反応に昂りを感じながらも、どこか冷静だった。
目の前の女が、自分の求める人間であれば。
そうすれば、自慰のような虚しさは感じないのだろうか。
自分の女々しい思いに自嘲する。
けれど、所詮、自分は男である。
目の前の女の腰を掴み、その虚に欲望をねじ込む。
上総は寂しいと告げる自分の感情を、快感で塗りつぶした。
***
真木は、いつものように目を覚ました。
まだ日も上がりきらず、冷たい空気に手指を擦らせる。
外に出て適当な手ぬぐいに水がめの水を含ませ、顔を拭う。
余分な皮脂が落ちる感覚にほう、と息を吐く真木は、次の瞬間、殺気を感じて飛びすさった。
タンッという音と共に、先ほどまで立っていた真木の足元にクナイが刺さる。
「おはよ、真木ちゃん」
「物騒な挨拶ですね。伊津さん」
真木がクナイの飛んできた方向を見ると、一人の女が出てきた。
伊津と呼ばれた女は、地面に刺さったクナイを引き抜き、くるくると手の中で回す。
「真木ちゃんの色んな顔を見てみたいだけよ。昔から全然動じないんだもの」
「そんなことないですよ。驚きました」
真木は少し微笑んでみせる。
真木と伊津は山間にある野得と呼ばれる里に暮らす、くのいちであった。
里に住むのは、とある領主が集めた孤児たちで構成された忍である。
真木と伊津も、そうだった。
「それで、わざわざ私の顔を見に来ただけではないんですよね?」
「ご明察。上総様が真木ちゃんのことを城にお呼びですって」
「城に、ですか?」
上総は、この村を作った領主であり、真木たちの当主だった。
上総の暮らす城は山を越えた先にある。
真木たちに命令が下されるときは、伝令役の者が村まで伝えに来る。
そのため、直接指名され、城に呼ばれることは稀だ。
だから、真木は驚きと共に、遂に来たか、という気持ちで伊津に礼を言う。
時が来たのだ。
真木は高揚感に身震いをした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる