苛烈なひとよ、忍に愛を

鉄永

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1章

第五話

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 上総は、遊びが派手だ。
 花街の上玉をわざわざ呼び寄せ、家臣も呼んで飲めや歌えの宴会を頻繁に催す。
 しかも、そのたびに気に入った女を部屋に連れ込むのだ。

 公務に支障をきたしたことはないので、誰も咎めることはできない。
 しかし、もう22になるというのに妻をめとろうとする気配がないのは、問題だった。
 花街の女よりも、せめて家臣の娘や、見合いに適した姫君に目を向けてもらいたいものである。

「上総さま、おはようございます」

 そんな上総を起こすことから、真木の仕事は始まる。
 真木は表向き、上総の従者ということになっていた。
 奥方でもない女人が付き従うことに、眉を顰める家臣も多い。
 しかし、花街の女を頻繁に連れ込んでいる時点で、今更であった。

 襖を開けると、白粉おしろいと香が匂ってくる。
 昨晩連れ込んだ女は既に帰ったため、部屋には上総だけであった。
 上総は窓枠に座って外を眺めている。

 真木は「おはようございます、朝の支度の準備に参りました」と声をかける。
 上総はこちらを見ず、動かない。
 無言は肯定だ。
 真木は小間使いに布団を上げさせ、水桶を運ばせる。

「本日の予定をお伝えします。午前は各部の要望書、並びに行事の起案書の決裁をいただきます。午後は来客として…」

 そこまで言って、真木は少し息を吐く。

「昨晩の女人でしたら、既に門をくぐられました」
「なんだ、そうだったか。はよう言わんか」

 窓の外から目線を外し、上総はやっと真木を見た。
 真木は「申し訳ありません」と形だけの謝罪を口にする。
 
「昨日のはよかった。飴玉のようにまるい乳房でな、肌も手に吸い付くようだった」
「左様でございますか」

 洗顔をしながら上総は笑う。

「お前はどうなんじゃ、真木」
「どう、と申しますと」
い男はおらんのか」

 わしは禁欲せいなど言ったことはないが、と上総は首を傾げる。

「拙の身体は、ただ、上総様の道具として在ります。殿方を悦ばせることのできる肢体ではありません」

 淡々と返すと、上総はけらけらと笑った。

「そうか。まあ、道具でなく女になりたいときは来い。お前ならいつでもねやに呼んでやる」
「光栄です」


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