苛烈なひとよ、忍に愛を

鉄永

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1章

第八話

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 その夜、使者を交えて盛大な宴が催された。
 仁波はすぐに自室へ下がったようだ。
 冬也の姿も見えないため、もしかすると二人で話をしているのかもしれない。

 上総は、酒を片手に広間を転々としている。
 使者たちと交流を深めているようだった。
 酒と食事と女を前にして、気の緩まない男はいない。
 普段の上総の女遊びは、こういう時に情報を得るための根回しでもある。

 ただ、味方もこの空気に呑まれてしまうのは考え物だった。
 真木は顔を赤らめた酔っ払いたちに絡まれながら、どうしたものかと思案する。

「真木、ほれ、お前もやってみいや。やったこと無いやろう。初めて、やろう?」
「入りそう…!入りそう、ってなあ、あっはっは」
「ほれほれ、そういじめてやるな。真木が怒っとる、ひひひ」

 特に表情を動かすことなく、真木は適当に相槌を打つ。
 真木はこういう時に気の利いた返しをできない。
 伊津は「相手をね、嘘でも好きって思うと上手に反応できるのよ」と言っていた。
 好き、か…と考えながら、真木は目の前の酒臭い男を見る。

「そんな不細工な顔しとらんと、酒、注いでくれや」
「…」

 無理だな、と真木は早々に諦めた。
 相手はただの上総の家臣である。
 媚びを売らなければならない相手ではない。
 自身の腰に回される腕から、真木はするりと逃げた。

「それはあちらの女人の方々に頼んでいただきたく思います。拙の仕事はあなた方のお相手をすることではありませんので」

 失礼します、と真木は腰を上げる。
 その腕を、男の一人が掴んだ。

「おい、待てや、真木。付き合いの悪いお前にわざわざ声かけてやって、その態度はなんや」
「なんだと言われましても…」
「親切で言っとくけどな、女のお前が上総様の傍で働けているのは、我々が大目に見てやってるだけや」

 真木は「お気遣いありがとうございます」と平坦に返答する。
 反応の薄い真木に、男たちはイライラしているようだった。

「どうせ上総様の夜のお世話ぐらいしか能がないんやろう。それで刀持ちになれるんやったら、羨ましいことよ」

 真木は溜息を吐く。
 自分が家臣たちからあまりよく思われていないことは、分かっていた。
 だからといって、自分に主張されても困るのだ。
 掴まれた腕を真木はただ眺める。
 その時、割って入るように声が降ってきた。

「なら、お前がわしの世話をしてくれるんか?」

 上総だった。

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