異世界料理人

彩夏

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スライムただのパン祭り

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レイド攻略がスタートしてから三日がたち、レイドメンバーの面々に徐々に疲れの表情が見え始める中、休憩場に建てられた作戦会議の場としてテントには、あつめた本人であるロキと、進、リリカ、バッカーナ、ムッダといったお馴染みの者から、ギルド参謀であり、ロキの杖と呼ばれるレイドのメイジ隊を率いる女性アルクネル。
 アーチャー隊を率いり、神弓の二つ名をもつ男バロンダート。
ドワーフであり、エンチャンターなどのサブに特化した者達を率いるガルロットの計八名の召集がかけられていた。

「ロキ、俺やバッカーナのじいさんとかを連れてくる必要があったか?戦力になるバッカーナやムッダはわかるにしても、俺は要らないだろ」

 頭に浮かんだ疑問を進は投げ掛ける。

「そうも言ってられないんだよ」

 ロキは少し「やられた」というような険しい表情を浮かべる。

「お…いや進、今ある食料であと何日もつ?」

 ロキはこの場にふさわしくないと、いつもの口調やあだ名なんかをすべてなくす。それを察した回りも、少しピリッとした空気を出し始める。

「今の残量だと一週間、いやもっと節約して使えば二週間はもつ」

「二週間か……それだけあれば食料の方は問題無さそうか……」

 まあこれは単なる僕の希望だけれど。

「食料の残量をなにゆえお気なりに?」

 ガルロットは考え込んだロキに話を進めるために尋ねた。

「恐らくだが、このレイド攻略は初め想定していた一週間での攻略は無理だろう」

 その言葉に一同は驚きを禁じ得ない。
 なんせあのロキ団長が自らの計算を間違いであったと言ったのだ、百戦錬磨、作戦だって外したことのない人がだ。

「それは何を根拠に」

 次はアルクネルが。

「これは僕とリリカの共通の考えだよ、たぶん、このマップその物が間違いだった」

「それは我らが青の騎士団の中に裏切り物がいると言いたいのですか」

 仲間を疑われていることにいい気分がしないのか、バロンダートは声を荒らげた。

「そういうことだ。俺とリリカは独自にマップを作成しながらここまできたんだけど、類似しない点がいくつもある」

「迷宮者が探知するマップは完全でないは承知のはずでしょう」

「バロンダート、それはよく理解しているよ、でもね裏切り者の話はなにも今になって出てきた話じゃないんだよ」

「女は黙っていろ!私はロキ団長に話している」

 さらに声を荒らげたバロンダートは厳しい視線をリリカからロキへと向ける。

「まだ確証はない。ただ可能性があるというだけだ。ただ、順調にいっているにもかかわらず、予定の半分も進めていないこの現状を異常だと思っているだけだよ。もし、このレイド攻略事態が罠で、六十四階層いらいの死者を出すわけにはいかないからね」

 バロンダートはその言葉になにも言わず、苦い虫を噛まされた顔をしてテントから出た。

「変な空気になっちまったが、俺は要するに食材が節約して、みんなが満足のいく飯を作ればいいんだろ?まかせとけ」

 バロンダートがテントから出たことによって会議は終わってしまったので、他のメンバーもテントから出て行く中で、進はロキに言った。

 やっぱり僕は君を雇って正解だったよ。

 そうロキは心の中で言った。

◆◆◆◆

 はい!早かったけど帰ってきました俺視点!

 ちょい異世界シリアスものも行けますよオーラかもし出してたけど無理だから。この世界に俺がいる限り無理だから。

 そんなことはさてにおいといて、俺は今日の晩飯の用意をするとしよう。

 ちなみにこのレイド攻略では俺の他に趣味でサブに料理を選択しているガルロットさんが手伝ってくれる。

(あー、楽チン)

「して進よ、今日はどのような料理を作る?ロキ団長からは食材を節約せよと言われておるが……」

「うーんそうだなー、パンでも作るか」

「パン!?あの固くて不味い野戦食か?」

 あー、そういやこの世界の人のパンへのイメージてそんなだったな。

「いや、ガルロットさん。あんたさ本物のパンを知らないだけだ」

「うーん、お主の料理だうまいのかもしれんが……何故この状況でパンなんじゃ?」

「パンは基本的にはなんでも合いますし、腹持ちもいい。それに、小麦粉は米よりも余分にある分、量を作れますから」

「そうか、ならば私も手伝おう。早速レシピを教えてくれ」

 今回のレシピはダダン!


 材料(2斤分)

 1.強力粉(国産・春よ帰れ)240g

 2.薄力粉(国産・力が薄くて薄力粉なのに何故か力が強いのが悩みの薄力粉)240g

 3.女神の唾液(人肌程度の温度が適温だけどそれってもうまじの唾液やん)260g

 4.ただの砂糖40g

 5.自家製の塩8g

 6.インスタントドライイーストの代わりに、スライム(酵母菌が何故だかあるてか、ある程度の菌は持ってる)5g

 7.バター(常温)30g

 作り方

1
 大き目のボウルに唾液とバター以外の材料をぶちこむ。その際に塩とスライムは離しておく。

2
 1のスライムを目がけて水を入れ、ボウルの中で、木べら、もしくは手で材料を混ぜる。

3
 生地がある程度まとまってきたら、パン捏ね台に出す。ボウルや手に付いた材料もスケッパーなどで綺麗に取り出す。

4
 ───グルテンを引き出す作業───

5
 生地の捏ね始めは、手の腹を使って手前から奥へ押し出す感じで伸ばして指の先で生地を戻す動作を5分程度行う。

6
 手や指に生地が付きにくくなってきたら、バターを加え、工程5と同じ捏ね方を5分程度。生地がべたつくけど、根気良くがんば。

7
 ───グルテンの強化───

8
 滑らかになってきたら、生地を両手で優しく支えるようにし、円を描くように捏ねる。1~2分程度

9
 生地のべたつきが少なくなったら、両手で優しく生地を支えたまま、V字を描くように捏ねる。5~10分程度

10
 V字捏ねの間で、たまに生地の端をゆっくり伸ばし、指が透気通るくらいまでになったら捏ねあがり。

11
 生地のとじ目を下にして丸め(上部が綺麗に見えるように生地を引っ張り下へまとめて丸めるのがポイント)、それにサラダ油を塗ったボウルに入れる。

12 
 乾燥防止に軽く綺麗な布巾とラップを被せ、一次発酵。2~2.5倍に膨らんだら発酵完了。目安は1時間

13
 一次発酵が終わった生地を台に出し、めん棒や手でガス抜きを行う。2~3分割して丸め直し、ラップを被せ20分程ベンチタイム。

14
 ツイストの成形は、綿棒で長く伸ばしてから空気を入れないように3つ折りにし、型の長さに合わせて2本の棒状を作りツイスト

15
 ロールの成形は、3分割の生地をそれぞれ、綿棒で型の幅になるようにし、一度伸ばしてからロールする。

16
 成形した生地を型に入れる。ロールにした場合は、焼き上がり時に離れてしまわないよう、型の中で軽く押してなじませる。

17
 生地を型に入れたら、二次発酵。
 四角食パンなら型の蓋をする。型の蓋が開かないくらいに膨らめば発酵完了。目安は1時間。

18
 1時間発酵しても膨らみが足りない時は、5~10分ずつ時間を延長する。
 市販の真四角が理想なので、型の9~10割まで発酵

19
 250℃に予熱したオーブン火蜥蜴で210~220℃で35分(1斤なら30分)焼く。
 230度に設定できれば30分程でもOK

20
 焼きあがったらすぐに型から取り出し、粗熱を取る。
 30分以上置いてからカットしたほうが綺麗に切れる。 
 これを小麦粉の残量が有る限り作る。定期的にな。

◆◆◆◆

 パンなんかは時間もかかるし面倒だが、その分、うまくて日持ちする。だからこの世界でも野戦食に使われんだが、これまたひどい味でな。
 まず固い。とにかく固い。フランスパンの二倍は固い。そして味がしない。固い段ボールを食ってる気分にさえなる。
 だが、俺の作ったパンはただの食パンだ。わかるか?“ただの食パン”だ!この世界にきてからというもの、ただを普通を常識を求めてきた俺にとっては気持ちのいい響きだ。
 だが、隣で衝撃の一言が発せられた。

「スライム入りのパン……大丈夫か?」

 ス、ス、スライム~~!!

 忘れてたー!そうだよ、スライムだよ。お前が入ってるじゃねぇか!
 スライム入りのパン。そうだよ、ジャムを練り込んだパンだと思えばいいじゃないか。ちょっと緑で、勝手に動いて、目がついてて、冒険者の登竜門のジャムだ。うんうん!ジャムだと思えてきた……。

「て、あるかぁぁぁぁぁぁぁ!」

 なんだよ目がついてるジャムって、それジャムと違うじゃん!緑ってなんだよ!目がついてて緑ってスライムじゃん!動くとか完全にスライムじゃん!

 何がただだよ、何が普通だよ、何が常識だよ。スライムがはっいてるパンのどこがただのパンなんだよー!

 その場で考え悶えた結果、俺はガルロットさんの肩に手をのせて。

「このパンは普通のパン、そうですよね?」

 その後、ガルロットさんを黙らせるのに何をしたのかは特に何も言わないでおこう。

 ただ一つ言えるとしたら、ガルロットさんを含めたみんなが、後でパンを美味しくたいらげ、この製造方法が彼らの耳に入った時に後に起こるくだらない事件のことを、「スライムただのパン祭」というなんとも山崎とか春とかつけたい語呂のいい名称となった。

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