異世界料理人

彩夏

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真面目な中ボス攻略

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 広かった。
 初めのボスフロアはそういう印象だ。円形ドーム状になっていた。
 フロアの中央に一体、あぐらを組んでいる、白黒の模様をした獣の姿をしたモンスターがフロアに徐々に灯っていく松明によって見え始める。

 団長ロキが、高く挙げた片手剣を、モンスターへと向け下ろした。
 それを合図に、総数二十名もの前衛部隊は、フロアに声を響かせつつ一気に攻め込んだ。

 まず最初に最前列へ出たのは、助っ人幹部の一人、大きな盾を持ったガーディアンカルロスと、彼に率いられた壁部隊だ。その後ろを扇の形に陣形を広げたロキ率いる攻撃部隊が追う。
 そして、彼らのように前進はせずに、後方でサポートと援護射撃に徹する遠距離部隊の形で、中ボス攻略は始まった。

 フロア中央に近づいていくにつれ、中ボスの姿は鮮明になっていき、金属の笹を大きく空を切る音をたてながら振る。そして牙をむき出しにして、吼えた。

「グオオオオオオオ!」

 獣王《ジャイアントスーパーハイパーウルトラミラクルゴールデンドリームレジェンドパンティ》(パンティ以下略)は、元の世界のパンダそのものだった。白黒の毛皮を纏い、鋭い爪、体長三メーターを超える大きな体をもち、その目は血に餓えている。右手には金属の笹を、下半身にはパンティをはいている。

(……かっこよく、真剣に現状を解説しています。俺は、もう、つっこまない)

 パンティは右手の笹を振りかざすと、壁部隊へと単純な力で叩きつけた。カルロスの分厚く硬い鉱石製の盾で防ぐと、素手での二撃目はカルロス以外で防ぎきる。そうして生まれた隙を攻撃部隊は突いていく。

 パンティのHPバーは五段、くそのような話で、下半身のパンティのお陰で、防御力が上がっており固い。

 壁部隊が攻撃を止め、攻部撃隊が攻撃する。ダメージを受けたものと壁部隊を中心に遠距離部隊のメイジとヒーラーは回復魔法をかけ、パンティの動きを二人の神弓が制限させる。

 HPバーが八割をきるものは今のことろおらず、攻撃のローテーションはとても順調に回せている。

 願わくはこのままなにもなく──となにもできない俺は、祈るしかできない。

◆◆◆

 ギルド最強を名乗るほどのギルド、それの団長であるロキの戦いを間近で見るのはこれが初めてだった。

 最強たちをまとめあげるのだから、相当な腕前なのだろうと思ってはいたが、実際の実力は戦闘素人である俺にもすぐにわかるほど、圧倒的ものがあった。
 
 スピード、剣さばき、判断力、どれをとっても今この場にいる人間の誰よりも勝っていた。何度も指導され、自ら体験したことのあるリカさんの、盗賊の速ささえも上回るのだ。 

 戦い初めて二分たらずだが、もうすでにパンティのHPバーは二本消えた。圧倒的だった。戦いの軸がロキ、カルロス、リカさんの三人で回り始めてから遠距離部隊の出る間もないほどだ。

 阿吽の呼吸と言うのか、隊が一人の人間のように動き、壁部隊と攻撃部隊の交代に掛け声も合図も必要なくなった。

 ──これが戦いというのなら、俺はメインのジョブに戦闘系を選ばなくてよかったと心底思う。こんな戦い、俺なんかができる訳がない。何十年、何百年かかってもいけない領域だ。

 ──だが、同時に、それに憧れてしまう自分に気づく。そんな次元の違うものに憧れを抱いてしまうのだ。

 今の自分にできることはなにもない。
 だから、この戦いが終わったら、一度食料の節約なんて忘れて、たらふく食わせてやろうと、そう思った。

◆◆◆

 パンティ対三十人の冒険者との戦いは、今までの道中が嘘のように、偵察隊が全滅したのが嘘のように、順調だった。

 ことに目覚ましいのは、ガーディアンカルロスの存在であった。攻撃を受け止め続けることのできる装備もそうだが、それ以上に盾スキルの多様さが凄い。彼は時間制限での防御力強化を自信に施し、それに付け加えて攻撃性のある盾スキル《シールドガンド》、防御系統ナンバーワンスキルの《無傷の宣言》をふんだんに使った前線での耐久は攻撃を順調化させた一つの要因と言えよう。

「よっしゃあ!」

 と、いう声が上がると同時に、パンティのHPバーは一本になっていた。時間にして五分丁度のころだ。その時だった。

「グルオオオオオオオオオオ!!!!」

 パンティは一際は大きい咆哮あけた。あるものはそれを断末魔と言ったが、それは間違いだった。
 パンティを中心に黒い煙幕が広がり、中央の様子が見えなくなったかかと思えば、それは二本目の笹を左手にもち、前衛部隊を凪ぎ払った。

「ぐぁぁぁあ」

 何人からか悲鳴にもにた叫び声が上がると、今度は冒険者のHPバーが三割をきる危険レベルへといってしまうものが現れた。

「どういうことだ……」

「ああ、あれは……ブラだ」

「ちげぇよ!!」

 神弓のバロンダートという男もボケるのかと思ったことはさておき、その特徴の変換とともに、二ふりの笹を持つスタイルに変化し、体毛が白黒のから赤黒へと変わっていった。

「明らかにこりゃ異常だろ」

 果たしてそれが時限的な変化なのか、HPの残量によっての変化なのかはわからないが、前者であるのなら、偵察隊の全滅も頷ける。 

「くっ……いったん後退!HPが少ないものから順に回復を、こいつらは神弓と僕達三人で食い止めておく」

 中ボス戦、後半にして本番!五人対一体の戦いが始まる。
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