異世界料理人

彩夏

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最初の話

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「お前冒険者じゃねぇーのかよ!」

「私はかけだし冒険者なんです!」

今、俺はダンジョンでシチューにするとうまい、ウサギネズミの大群に追いかけられている。

(うさぎなのかねずみなのかは追求しないでほしい。ちなみに見た目は犬だ、ややこしい!)

話がずれたがとにかく「やばい」の一言につきる。

「ねえ!どうにかならないんですか?おっさん!」

「おっさん言うな!」

ウサギネズミの最大攻撃力は十五と弱いが数が数だ、捕まったら冒険者でない俺は「死ぬ!」

(嫌だ嫌だ嫌だ!あだ名はおっさん、二十六歳独身童貞!女性とお付き合いしたのはたったの一回!こんな所で人生終わってたまるか!)

「死ぬ気で走れー!」

あと四年で三十路の体に鞭打って全身全霊で「走る!」

おっさんこと俺、近藤進はその、あれだ、異世界転移ってやつをした。一年前に。

この世界は異世界と言うよりも、どっちかと言うとゲームの世界に近い、てかゲームだ。

人にはそれぞれ自由に決められるジョブ(職業)もあるし、ダンジョンもあるし、モンスターもいるし、ゲームみたいにツールバーとかアイコンとかHPとか普通に出てるし、頭の上にレベルが表示されてるし。

まあそんな感じの世界で俺は、いい歳こいたおっさん、もといおにいさんは異世界ライフを満喫している、と言いたい。

みんなは、異世界転移とかにどんな憧れとか興味を持つ?

ソードスキルとか?魔法とか?美人ヒロイン(俺はエルフがいい)とか?ダンジョンとか種族間戦争で活躍することとか?異世界独特のうまい飯を食うことか?

なら、一つだけ忠告しといてやる。

異世界にうまい飯だけは存在しない!!

美人ヒロインとかはいるけど...現実世界(これからもとの世界のことをそう呼ぶ)の飯を食いなれてる俺たちは異世界の飯をうまいなどとは思わない!

そら、多少はうまい物もあるけど、それもその程度なんだ!うまい棒クラスなんだよ!いや、うまい棒を馬鹿にしてるわけじゃなないですよ、本当ですよ?

話を戻すけど、現実世界でシェフ(自称)だった俺からすれば、この世界の飯は酷く言えば「不味い!」

だから俺はジョブに料理人を選択して、ソードスキルとか、魔法とか、美人ヒロインをあきらめて(まだ諦めきれてないけど...)、うまい飯を作る為に料理人の調理スキルを一年でカンストさせた。

そしたらわかったことがたくさんあった。

まず、基本的な調理方法と料理の価値観が全く違ったんだ。 

この世界ではほとんどの料理に調味料を使わずに、塩なんかはない。かろうじて砂糖があるくらいだ...。

だからこの世界の飯の味は薄くてしない。素材本来の味にも限度がある。

第二に、魚を食わない。驚きだろう?この世界の人は魚を食べないんだ。

ジョブにも猟師はあるけど、漁師はない。ありえん。それ以上にでる言葉がない。

まあ、そんな世界だが、魚も捕れば調理できたし、塩も作れた。
他の料理もそうだ。料理人のスキルをカンストさせると、物の味が見ただけでイメージできるスキルが取得できて、そのスキルを使って現実世界の料理も俺の知る限りは作れたし、こちらの世界独特の味もあり、アレンジやオリジナルの料理も作れた。

そんな俺は町で店を開いてガッポガッポ稼ぐつもりでいたのに、なぜか、なぜか、俺は今、ダンジョンの中でウサギネズミの大群に追いかけられている。

まあ、なぜかと言ったものの、俺が悪いんです。はい。

ここで回想、時は三日前までさかのぼる。

「貴方がおっさんですか~」

「俺は近藤進だ!で、お前は誰だ?」

市場で食材の買い出しをしていた俺を、白髪の少年が声をかけた。

「私は青の騎士団の団長、ロキです」

「青の騎士団ー!?青の騎士団と言うとあれか、この国でもトップのギルドの...あの、あれか」 

「そうです。あの、あれです」

「まじかよ...こんな子供が...。そんなことよりも、そんな青の騎士団の団長さんが俺になんのようだ?」 

「貴方の料理は美味しいと聞いたので」

「ああ、俺の料理より美味しい料理はないな」

「たいした自信ですね、そんな貴方に今回はお願いがあってきました」

「お願い?」

「ええ、貴方には是非とも、うちのギルドにてダンジョン遠征軍の専属シェフになっていただけないかと」

「俺はこれからガッポガッポ稼ぐつもりなんだ」と断ろうとしたとき、団長は。

「これくらいならどうです?」

ロキは三本の指をたてた。

「そんなにか...?」

「ご希望とあればもう少し」

「やる!やります!やらせてください!」

てな感じで今にいたる。


「ハア、ハア、ハア」

なんとかウサギネズミから逃げ切った俺と駆け出し冒険者のミル・クレンジャー、あだ名はいのポン、ハイテンションイノシシみたいにいつも猪突猛進だから付けられたあだ名だ。

(イノシシの名前に疑問のある人もいるだろうが、この異世界でいちいちそんな事きにしてたらきりがないからよしたほうがいい)

「おつかれさまー、いのポン、おっさん」

「お前らやぱりおっさんってあだ名で通すですね、そうなんですね」  

「そんな事より、お腹すきましたよ~なんか作ってください」 

「そんなことよりってお前な~」

「さ~、みんな~ご飯にしましょう!」

「俺の意思は無視ですか、そうですか」

と言っても献立は考えている。逃げてる間に捕まえたウサギネズミで作るシチューだ。

(ウサギじゃなくて、ネズミをシチューで食べるのはぞっとしないが...)

さて今からはジョブが料理人なら誰でも出来る簡単シチューの作り方ー!!!!!!

まず、用意する材料はこちら!

ウサギネズミの肉2100g

牙が剣のソードイノシシの角切りベーコン280g

岩じゃがいも8個

目潰し玉ねぎ8個

ただのにんじん4本

放送コードのしめじ4束

水(女神の唾液)5600ml

闘牛乳2800ml

闘牛乳から作ったバター350g

小麦粉大さじ35

うまい粉(味はコンソメ) 大さじ14

ローリエ 14枚

異世界産ウィスキー大さじ8

闘牛乳から作った粉末チーズ大さじ21

はい、この時点でこの世界にまともな食材が少ない事はお分かりいただけただろう。さて、お次は調理だ。
1
じゃがいもは皮を砕いてお好きな大きさにカット、唾液に5分ほどつける。

2
具材をカット、と簡単には言えない。まず、目潰し玉ねぎは何故か手が生えてて、目を潰してくる危険な食材だ、だからまず手を切り落としてからカット、ただの人参はスルーして、放送コードのしめじはお察しの通り十八歳以上じゃないと調理できないしろもだ、絶対にお母さんかお父さんにやってもらうように!そしたらソードイノシシのベーコンは1cmの角切りに。

3
鍋に油を加えて玉ねぎとベーコンを弱火で炒める。この時、玉ねぎが透明になるまでしっかりと炒める。

4
兎肉に塩をふる。(ないから自家製)そしたら兎肉、人参を加えて中火で炒め、次にじゃがいもを炒める。

5
兎肉に火が通ったら弱火にして闘牛乳バターと小麦粉を加える。小麦粉の粉っぽさが無くなるまで2分ほど弱火で全体に絡めながら炒める。

6
唾液、牛乳、ウイスキー、うまい粉、ローリエを加えて強火にする。煮立ったらアクを取り、弱火で煮込む。

7
具が柔らかくなったら粉チーズを加え、塩、弾丸こしょうで味を整えたら完成だ。


「おーお、うまそう!」

俺が皿に次々にシチューを盛っていくと、うまそうの声が増えていく。

(因みに放送コードのしめじだが、熱を通せばただのしめじになる。加熱するときにでる液体は旨味成分なので嫌悪感を覚えても捨てないように)

全員にシチューが行き渡ると、ロキの号令がかかる。

「命の恵みに感謝を!」

「命の恵みに感謝を!」

「いただきます!」

「いただきます!」

ダンジョン攻略で疲れきっている冒険者たちはシチューに夢中でがっつき、ずぐにおかわりを求める。こんなに旨そうに飯を食べられると作った側も悪い気はしない。

そんな事を思いながら一口二口と、シチューをほおばる俺氏であった。
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