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波乱の一週間
入学一日目
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思っていた通りだった。
先生(そう言えば名前を聞いていなかった)と話していたせいで収容人数六百人超えの多目的ホールはほとんど新入生によって埋まっていた。
文也が新入生代表でなければあまりいい席には座れなかっただろう。
例年、新入生代表には最前列中央の座席が用意され、司会の紹介があった後、壇上へと上がるてはずだ。
文也は用意された座席に躊躇なく座った。
◆◆◆
文也の新入生代表としての挨拶はテンプレ通りだった。
「晴天に恵まれて」とか「お忙しい中」とか「意欲を持って」とか、内容はすべてアドリブなのにあまりにも平凡な挨拶だったのでもう一度話せと言われれば話せるほどだ。
入学式が終了すると大勢の生徒が文也の回りに寄った。
新入生代表、という立ち位置なので回りからは必要以上に注目されているため、四方八方から質問攻めだ。
「実技試験で試験官を倒した陰陽術、あれなんて陰陽術なの?」
「林くんはどんな系統の陰陽術が得意なの?」
「好きな食べ物は?好きな色は?」
思わずため息をついてしまいそうになる。最後の質問にいたっては新入生代表の立ち位置とは全く関係ないものだ。
質問攻めに困惑しながらもそろそろ沈静化した方がいいと文也は思った。
「すまないが全員の質問に一気に答えることはできない。それに新入生代表に馴れたのは運が良かっただけで、試験官を倒せたのも相手が俺を油断していたからに過ぎない」
そう回りの生徒たちに言うと、さすがに鬱陶しいと思っていることに気がついたのかとりあえずこの場からは離れていった。
「ふぅ~」
一人になれたのでやっとため息をつくと、教室へと向かった。
クラスはA B C D E まであるなかのA組、これも新入生代表のジンクスらしい。
まぁどのクラスでもいいが。
B C D E には成績間での隔たりや、劣等組と優等組に別れてはいないが、文也のクラス、A組だけは少し違う。A組は入試成績上位の者か、推薦入学者以外は入れない完全な優等組。
ただ、それのことで差別が生まれたり、A組の生徒が他のクラスの生徒を見下すというようなことはない。
そんなA組の教室へと向かおうと足を進めた時、すれ違った男子生徒に小声で吐き捨てられた。
「俺はお前を認めない」
顔は見えなかった。ただその吐き捨てられた声には様々な感情、嫉妬や憎悪、ライバル心などがこもっていた。
文也は少しだけ足を止めたがまた気にせず歩き始めた。
◆◆◆
教室の机は何十年前に使われていた木と鉄パイプでできなものではなくデジタル教育の柱とも言える液晶ディスプレイにARシステムを組み込んだフルデジタルなものだ。
案内の放送が入るまでに自信の机の初期設定と入学式前に配られた生徒カードに書かれている生徒番号の登録を済ませた。
「お前、デジタルテーブルの初期設定自分で出来んのか?」
ふと驚いたような声で一つ前の席の男子生徒に話かけられた。
(またか……)
また質問をされるのかと思うとあまり気がのらない文也は視線をデジタルテーブルへと落とした。
「お前新入生代表だよな?名前はなんてたけっけ?」
「えっ」
容姿は平凡よりかは上で制服で隠れている鍛えられた肉体は一目で分かる好青年と印象を受ける男子生徒は文也の予想をいい意味で裏切った。
自分の新入生代表という立ち位置にさほど興味や憧れを抱いていないような素振りを見せたのだ。
「あんたバカなの?林くん、林文也くんよ」
男子生徒の左隣に座っていた女子生徒が言った。
「そうそう、文也だ文也。俺の名前は千葉賢人。賢人いいぜ、よろしな文也」
賢人はいい意味で馴れ馴れしく、今までの生徒とは違う印象を持った。
だが、
(桁上がりの名家……しかも「千」か……)
ーー桁上がりの名家とは、一、十、百、千までの位が名字につき、位が上がるに連れて力を増していくのだ。
特に賢人の苗字、千葉は桁上がりの名家の中でも高い権力をもつ。
賢人対する、いや、桁上がりの名家に対する警戒心はゼロ、と言うわけにもいかないが他の生徒よりかは好印象なのは確かだ。
「あぁよろしく」
「私は千葉あかり、私も賢人も本家よりも分家よりの家だからあまり桁上がりの名家とは関わりはないわないの、だから別に名家と接するような感じじゃなくていいわ、私もあかりでいいし。よろしくね、林くん」
またもや桁上がり、だが二人ともどうやら分家らしい。通りで名前を聞いてもピンとこないはずだ。
「俺のことも文也でいいよ。あかりと賢人は知り合いなのか?」
「ええ、こいつとは腐れ縁よ、家柄が同じだから昔からのね」
幼なじみと言うやつだ。
「そうか、でもいいのか?分家とはいえ桁上がりの名家が校則を破って」
具体的には言わなかったがあかりはその言葉の意味を理解した。
「いいよ別に、こんな校則違反ならみんなやってるし、バレなきゃね」
「あまりこの学校の職員や生徒を甘くみない方がいいぞ?俺の知る限りでは腕のたつのが職員に一人いる」
腕のたつ職員とは先程の先生のことだ。
「新入生代表が言うんだから相当だね~。うん、肝に命じとく」
あかりはニコッと笑うと腕につけていた術機を鞄に閉まった。
一方賢人はどうやら校則違反の意味がわかっていないらしく「俺なんか校則違反してる~?」と一人でぶつぶつと考えている。
今日は入学式とカード配布が終わると自由に帰っていいことになっている。新歓祭開会式、新歓オリエンテーションが多目的ホールでおこなわれることになっているが別にあまり興味がないので、賢人やあかりと話をしながら帰りのしたくをはじめた。
「え?もう帰っちゃうの?」
「ああ、特にもうようはないし」
「新歓オリエンテーションいかないの?あと校舎回ったり」
「新歓オリエンテーションは部活動に入るつもりのない俺にはあまり関係ないし、校舎回りの方は入学式前にすませてある」
と言うのも文也はベンチで睡眠をとる前に携帯端末にインストールしていた案内図を見て、このだだっ広い校舎を回っているのだ。
「なら、少しだけ新歓見に行ってから俺に座学を教えてくれねぇか?新歓の方は部活動以外にも学校のことを紹介するらしいし」
賢人が文也に尋ねる。
「ほらなんか明日テストあるだろ?だからそれ対策に……」
「俺は家に帰って特にすることはないから別に構わないが、教えられることはほとんどないぞ?このA組は他のクラスと違って成績優秀者が入る組なんだろ?そんな生徒に教えを請われても」
「それなら大丈夫だ、俺は実技のみの推薦で入ったからよ、だから座学の方はてんでだめなんだよ」
「あんたはそう言う事を自慢げに話せるのがすごいわ……」
ハァーと文也は一つため息をついたあとしばらく考え、
「そうか、そう言うことなら引き受けよう」
と、依頼を引き受けた。
「助かるぜ!文也」
依頼の話が終わったのでそろそろ新歓オリエンテーションの会場、多目的ホールへと行こうと賢人があかりと達馬に言うと、見知らぬ声が後ろからかかった。
「それ、私も行っていいかしら?」
達馬に声をかけたのは賢人の左隣にいたショートヘアで眼帯をした少女だ。
「君は……?」
「私の名前は沢尻エリカ、林くんが召喚してる二体のシキガミと林くんに興味があるの」
その時、文也の全身に緊張感が走った。
「シキガミ!?それも二体も?」
「おい、文也どういうことだよ!?」
頭の良くない賢人でさえもそれを理解し驚いていた。驚かれるのも無理はない。
シキガミ。
古式陰陽術の一つで自らの霊力で構築した魂の器に神の魂を入れて使役する使用者を選ぶ高難度の陰陽術だ。
シキガミについてはまだ科学的に解明されていないことが多すぎることで有名で、陰陽術三大難問の一つだ。
そして賢人やあかり以上にシキガミの存在に気がつかれたことに文也は驚きの顔が隠せなかった。
先生にもばれなかった強力な認識阻害術式を展開しているのに、それを彼女は……。
「どうやって気がついた……?」
さすがの文也もこのことに関しては敵意を隠せない。
エリカは少しだけ答えるのをためらってから。
「私の右目は特別製だから」
そう言って彼女は三人全員に眼帯を取って見せた。
「義眼……それもただの義眼ではないな」
二人よりもその事に早くきずいた文也は難しい顔をした。
「そ、私の義眼は特別製で、陰陽術の見極めに特化した目、だから林くんの認識阻害の陰陽術は私には効かない」
厄介だ。
文也の得意とする陰ばかりか陽や光素までおも見抜く義眼、幻覚術式や認識阻害術式を使う陰陽術師にとっての天敵とも言えよう。
「なぁ、認識阻害術式ってなんなんだ?」
話についていけない!という顔をしながら聞いた。
それを文也は答えず、代わりにあかりが答えた。
「認識阻害術式は基本単素の一つ、光素を操って人の視覚的な認識を妨げる対人用陰陽術よ。人の目は光を受け取ってはじめて物を見れるんだけどこれはその光を受け取ることを妨げるの」
「へー、でもよそれが破られたらなにか問題があるのか?」
「確かに、そこまでの問題はないが俺にとっては大きすぎる痛手だよ。俺の作ったオリジナルの認識阻害術式は一般に出回っているものよりも二世代、三世代進んでるものだからね」
少なからずこの少女の目は二世代、三世代後の陰陽術でさえも見破ることができると言うことだ。
「それで、何が知りたい?」
質問をする声に溢れでる敵意と警戒心が混ざる。
「林くんがなぜシキガミを連れているのか、そのシキガミはなんなのか、そしてあなたのいう通りシキガミに展開している認識阻害術式は世に出回っているものよりも遥かに高性能な物それはなんなのかなんて聞かない。だから一つだけ、そんな術やシキガミを使うあなたは何者なの?」
彼女はこの三人の中でも最も強く警戒しなければならない陰陽師だろう。だからあえて、彼女を敵に回したくわないし、何より興味がある。
「俺はただの高校生さ」
達馬そう、彼女に言った。
先生(そう言えば名前を聞いていなかった)と話していたせいで収容人数六百人超えの多目的ホールはほとんど新入生によって埋まっていた。
文也が新入生代表でなければあまりいい席には座れなかっただろう。
例年、新入生代表には最前列中央の座席が用意され、司会の紹介があった後、壇上へと上がるてはずだ。
文也は用意された座席に躊躇なく座った。
◆◆◆
文也の新入生代表としての挨拶はテンプレ通りだった。
「晴天に恵まれて」とか「お忙しい中」とか「意欲を持って」とか、内容はすべてアドリブなのにあまりにも平凡な挨拶だったのでもう一度話せと言われれば話せるほどだ。
入学式が終了すると大勢の生徒が文也の回りに寄った。
新入生代表、という立ち位置なので回りからは必要以上に注目されているため、四方八方から質問攻めだ。
「実技試験で試験官を倒した陰陽術、あれなんて陰陽術なの?」
「林くんはどんな系統の陰陽術が得意なの?」
「好きな食べ物は?好きな色は?」
思わずため息をついてしまいそうになる。最後の質問にいたっては新入生代表の立ち位置とは全く関係ないものだ。
質問攻めに困惑しながらもそろそろ沈静化した方がいいと文也は思った。
「すまないが全員の質問に一気に答えることはできない。それに新入生代表に馴れたのは運が良かっただけで、試験官を倒せたのも相手が俺を油断していたからに過ぎない」
そう回りの生徒たちに言うと、さすがに鬱陶しいと思っていることに気がついたのかとりあえずこの場からは離れていった。
「ふぅ~」
一人になれたのでやっとため息をつくと、教室へと向かった。
クラスはA B C D E まであるなかのA組、これも新入生代表のジンクスらしい。
まぁどのクラスでもいいが。
B C D E には成績間での隔たりや、劣等組と優等組に別れてはいないが、文也のクラス、A組だけは少し違う。A組は入試成績上位の者か、推薦入学者以外は入れない完全な優等組。
ただ、それのことで差別が生まれたり、A組の生徒が他のクラスの生徒を見下すというようなことはない。
そんなA組の教室へと向かおうと足を進めた時、すれ違った男子生徒に小声で吐き捨てられた。
「俺はお前を認めない」
顔は見えなかった。ただその吐き捨てられた声には様々な感情、嫉妬や憎悪、ライバル心などがこもっていた。
文也は少しだけ足を止めたがまた気にせず歩き始めた。
◆◆◆
教室の机は何十年前に使われていた木と鉄パイプでできなものではなくデジタル教育の柱とも言える液晶ディスプレイにARシステムを組み込んだフルデジタルなものだ。
案内の放送が入るまでに自信の机の初期設定と入学式前に配られた生徒カードに書かれている生徒番号の登録を済ませた。
「お前、デジタルテーブルの初期設定自分で出来んのか?」
ふと驚いたような声で一つ前の席の男子生徒に話かけられた。
(またか……)
また質問をされるのかと思うとあまり気がのらない文也は視線をデジタルテーブルへと落とした。
「お前新入生代表だよな?名前はなんてたけっけ?」
「えっ」
容姿は平凡よりかは上で制服で隠れている鍛えられた肉体は一目で分かる好青年と印象を受ける男子生徒は文也の予想をいい意味で裏切った。
自分の新入生代表という立ち位置にさほど興味や憧れを抱いていないような素振りを見せたのだ。
「あんたバカなの?林くん、林文也くんよ」
男子生徒の左隣に座っていた女子生徒が言った。
「そうそう、文也だ文也。俺の名前は千葉賢人。賢人いいぜ、よろしな文也」
賢人はいい意味で馴れ馴れしく、今までの生徒とは違う印象を持った。
だが、
(桁上がりの名家……しかも「千」か……)
ーー桁上がりの名家とは、一、十、百、千までの位が名字につき、位が上がるに連れて力を増していくのだ。
特に賢人の苗字、千葉は桁上がりの名家の中でも高い権力をもつ。
賢人対する、いや、桁上がりの名家に対する警戒心はゼロ、と言うわけにもいかないが他の生徒よりかは好印象なのは確かだ。
「あぁよろしく」
「私は千葉あかり、私も賢人も本家よりも分家よりの家だからあまり桁上がりの名家とは関わりはないわないの、だから別に名家と接するような感じじゃなくていいわ、私もあかりでいいし。よろしくね、林くん」
またもや桁上がり、だが二人ともどうやら分家らしい。通りで名前を聞いてもピンとこないはずだ。
「俺のことも文也でいいよ。あかりと賢人は知り合いなのか?」
「ええ、こいつとは腐れ縁よ、家柄が同じだから昔からのね」
幼なじみと言うやつだ。
「そうか、でもいいのか?分家とはいえ桁上がりの名家が校則を破って」
具体的には言わなかったがあかりはその言葉の意味を理解した。
「いいよ別に、こんな校則違反ならみんなやってるし、バレなきゃね」
「あまりこの学校の職員や生徒を甘くみない方がいいぞ?俺の知る限りでは腕のたつのが職員に一人いる」
腕のたつ職員とは先程の先生のことだ。
「新入生代表が言うんだから相当だね~。うん、肝に命じとく」
あかりはニコッと笑うと腕につけていた術機を鞄に閉まった。
一方賢人はどうやら校則違反の意味がわかっていないらしく「俺なんか校則違反してる~?」と一人でぶつぶつと考えている。
今日は入学式とカード配布が終わると自由に帰っていいことになっている。新歓祭開会式、新歓オリエンテーションが多目的ホールでおこなわれることになっているが別にあまり興味がないので、賢人やあかりと話をしながら帰りのしたくをはじめた。
「え?もう帰っちゃうの?」
「ああ、特にもうようはないし」
「新歓オリエンテーションいかないの?あと校舎回ったり」
「新歓オリエンテーションは部活動に入るつもりのない俺にはあまり関係ないし、校舎回りの方は入学式前にすませてある」
と言うのも文也はベンチで睡眠をとる前に携帯端末にインストールしていた案内図を見て、このだだっ広い校舎を回っているのだ。
「なら、少しだけ新歓見に行ってから俺に座学を教えてくれねぇか?新歓の方は部活動以外にも学校のことを紹介するらしいし」
賢人が文也に尋ねる。
「ほらなんか明日テストあるだろ?だからそれ対策に……」
「俺は家に帰って特にすることはないから別に構わないが、教えられることはほとんどないぞ?このA組は他のクラスと違って成績優秀者が入る組なんだろ?そんな生徒に教えを請われても」
「それなら大丈夫だ、俺は実技のみの推薦で入ったからよ、だから座学の方はてんでだめなんだよ」
「あんたはそう言う事を自慢げに話せるのがすごいわ……」
ハァーと文也は一つため息をついたあとしばらく考え、
「そうか、そう言うことなら引き受けよう」
と、依頼を引き受けた。
「助かるぜ!文也」
依頼の話が終わったのでそろそろ新歓オリエンテーションの会場、多目的ホールへと行こうと賢人があかりと達馬に言うと、見知らぬ声が後ろからかかった。
「それ、私も行っていいかしら?」
達馬に声をかけたのは賢人の左隣にいたショートヘアで眼帯をした少女だ。
「君は……?」
「私の名前は沢尻エリカ、林くんが召喚してる二体のシキガミと林くんに興味があるの」
その時、文也の全身に緊張感が走った。
「シキガミ!?それも二体も?」
「おい、文也どういうことだよ!?」
頭の良くない賢人でさえもそれを理解し驚いていた。驚かれるのも無理はない。
シキガミ。
古式陰陽術の一つで自らの霊力で構築した魂の器に神の魂を入れて使役する使用者を選ぶ高難度の陰陽術だ。
シキガミについてはまだ科学的に解明されていないことが多すぎることで有名で、陰陽術三大難問の一つだ。
そして賢人やあかり以上にシキガミの存在に気がつかれたことに文也は驚きの顔が隠せなかった。
先生にもばれなかった強力な認識阻害術式を展開しているのに、それを彼女は……。
「どうやって気がついた……?」
さすがの文也もこのことに関しては敵意を隠せない。
エリカは少しだけ答えるのをためらってから。
「私の右目は特別製だから」
そう言って彼女は三人全員に眼帯を取って見せた。
「義眼……それもただの義眼ではないな」
二人よりもその事に早くきずいた文也は難しい顔をした。
「そ、私の義眼は特別製で、陰陽術の見極めに特化した目、だから林くんの認識阻害の陰陽術は私には効かない」
厄介だ。
文也の得意とする陰ばかりか陽や光素までおも見抜く義眼、幻覚術式や認識阻害術式を使う陰陽術師にとっての天敵とも言えよう。
「なぁ、認識阻害術式ってなんなんだ?」
話についていけない!という顔をしながら聞いた。
それを文也は答えず、代わりにあかりが答えた。
「認識阻害術式は基本単素の一つ、光素を操って人の視覚的な認識を妨げる対人用陰陽術よ。人の目は光を受け取ってはじめて物を見れるんだけどこれはその光を受け取ることを妨げるの」
「へー、でもよそれが破られたらなにか問題があるのか?」
「確かに、そこまでの問題はないが俺にとっては大きすぎる痛手だよ。俺の作ったオリジナルの認識阻害術式は一般に出回っているものよりも二世代、三世代進んでるものだからね」
少なからずこの少女の目は二世代、三世代後の陰陽術でさえも見破ることができると言うことだ。
「それで、何が知りたい?」
質問をする声に溢れでる敵意と警戒心が混ざる。
「林くんがなぜシキガミを連れているのか、そのシキガミはなんなのか、そしてあなたのいう通りシキガミに展開している認識阻害術式は世に出回っているものよりも遥かに高性能な物それはなんなのかなんて聞かない。だから一つだけ、そんな術やシキガミを使うあなたは何者なの?」
彼女はこの三人の中でも最も強く警戒しなければならない陰陽師だろう。だからあえて、彼女を敵に回したくわないし、何より興味がある。
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達馬そう、彼女に言った。
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