53 / 78
結章
結章 第一部 第三節
しおりを挟む
単なる腕っ節の強さと暴力への耐性―――なのか多種多様な無神経や無頓着といった鈍感力なのか―――を寄せ集めて商売道具にしていた旗司誓を愚連隊だと断じたのはジンジルデッデだったが、具体的な変革に着手したのは、実のところゼラ・イェスカザだった。彼は異国人であり、知識層であり、教養者であり、練成魔士であり、やや高飛車であり、つまるところ局外者だった。ありとあらゆる面で、論拠の無い因習を斬って捨てた。戦闘面においては、戦略や戦術のような俯瞰法のみならず、個々人の技能も例外ではなかった。武器の扱い、間合いの いなしかた、体さばき―――彼は正攻法と常道を知っていたし、なによりもそれらを無力化し後の先まで利用する外法と邪道に卓抜していた。蛇の道は蛇である。蛇など知らなかったジンジルデッデは、喜んでこれを受け入れた……そりゃ面白ぇやと破顔し、らんらんとした目を皿のようにまんまるくさせて喜んだ。
彼の教育は徹底していた。もう矯正される余地のない老骨どもは捨て駒へと分類されていたので表層上の取り成しに留まったが、子ども二人については真逆だった。ありとあらゆる教えが育まれるよう施した―――とは言え、過干渉したわけではない。どちらかと言うと、子ども同士が干渉しあうスタイルとスタンスを保全した。二人とも負けん気だけは一丁前だったし、<彼に凝立する聖杯>には子どもなど互いしか居なかったのだから、負けん気の捌け口とて右に倣いしたところで自然な流れだったろう。筆記試験、口頭試問、なぞなぞ、おちょくり合い、問答、遊戯盤、舶来遊戯盤、喧嘩、口喧嘩、拳闘試合、剣術競技、寝コケて丸出しの臍の穴にゲギョギョヒョ虫(そう鳴いたので)を詰めておくという搦め手からの心的暗器。どれもこれも、ゼラ・イェスカザは推奨しているようだった―――と言うか、ひとつひとつの行いを、つぶさに熟視していた。どの能力がどの段階の習熟度に達したがゆえ成されたアクションであるのかを評価し、次に与えるべきリアクションを査定していた。
「子どもの浅知恵ながら、携帯ナイフから出刃包丁に持ち替えたのは及第点ですね。携帯ナイフは戦闘用でない拵えをしているので鍔が無い上、柄から刃までストレートだ―――柄まで血が流れた途端、掌を滑らせて自刃してしまう。柄より刃の幅が広い出刃包丁ならば、最低限それは防げる。すりこぎに防御の手を使わせて、その隙に突き込もうと考えたのでしょう。片手のみの膂力では切創しか与えられないだろうから、手数を増やすつもりで、連撃からの出血に備えた。一寸の虫でも五分の魂なりに、一寸ずりながら進歩を見せている」
十年以上前、タマネギの皮を剥いていた際に養子から襲撃を受けた後日でさえ、けちょんけちょんにした当人を看病しながら、斯く語れりである。当時は病舎など無かったので、返り討ちにするたび彼は子ども二人の相部屋へ足を運んでいたのだが、その都度なんなりと言い残していった。まあどの時に語ってくれた言葉であれ、幼馴染み本人の記憶には残っていなかろう。古傷とトラウマ以外は。
ともあれ。幼い頃、疑問に思ったことがある。魔神を得た練成魔士には魔術がある。途方もない力を、とうに手中にしている。それなのに、どうして学習を積み重ね、練磨し、鍛錬し、研鑽を遂げ―――要は、途方もない力を超えてどこまでも支配下に置く必要があるのか? と。
「支配者だからですよ」
ゼラ・イェスカザは、続けた。
「だからこそ、支配者であることの権利と義務に常に自覚的でなければならない。自制と制御こそ、生き残る根幹だからです」
さらりと口にされた生死に現実味が湧かず、よく分からないといったような口ごたえをした気がする。次に彼は、やや切り口を変えてきた。
「色々ありますが……君の言う通り、練成魔士にとっての力とは、魔術です。対象を吹き飛ばし、焼き尽くし、その理不尽を受け入れさせる支配力。裏を返せば、コントロールを失えば暴発し、バックファイアを被れば死に至らしめる、底抜けに阿呆な馬鹿力です。ですから練成魔士を滅ぼすには、コントロールを失わせて暴発させるのが一番手っ取り早い。敵は、原始的に石を投げたり、知的に人質を取ったり、効率的に心を折るひと言を浴びせたりしてくるわけですね」
卑怯臭いなあと眉をハの字にしたものの、命が懸っているのならば卑怯にも間抜けにもなるだろうと、すぐに考えを改めたように思う。確かジンジルデッデから、素っ裸になって隙を作ることで逃げ果せた女の話を聞いたばかりだった。
「ですから我々は、石を投げられること、人質を取られること、心を折るひと言を浴びせられること……ありとあらゆるTPOを網羅し、予見し、支配し返しておかねばならないのです。在野で奇術師のように振る舞って小金を稼ぐだけの三流は別として―――練成魔士らしい教育を受ける学生において、若年ほど魔術に関連した事故死率が高いのは、冗談でも冗句でもありません。未熟であるがゆえに、生まれついての支配者たる見境いを失くした……だからこそ命運からも裏切られた、人生からの落伍者です。馬鹿なりに馬鹿を見ただけとも言えます」
それを聞きながら考えていたのは、命の為に卑怯にも間抜けにもなれる女がいる一方で、世の中には卑怯にも間抜けにもなれず命を投げ出す男もいるという不思議についてだった。英雄とかいう奴だ。どちらが愚かなのだろう……正直者だから馬鹿を見たのはどちらだ? どちらも同じくらい疑わしい。ふたりを引き合わせたらお互いを指さすに違いなかろうが、自分はどちらかでも信じることが出来るだろうか? 賢く―――己の判断を心から信じ、相手に委ねることが出来るだろうか?
「支配者であることの権利とは、もちろん支配権を掌握していること。そしてその義務とは、掌握しているなりに、まっとうに支配すること。支配できてしまう力の誘惑を拒絶せず、支配したいという心を受け入れ、かつどちらからも支配されないこと。すべてが揃ってこそ、支配者は致命傷を回避できるのですよ。こら、ぽかんと聞いてる場面ですか? 例外なく君も支配者だと言うのに―――」
ぽかんと聞いていた。それは確かなことだったけれど。
接がれたせりふに、もっとぽかんとしたせいで、女と男のことなど心にも思わなくなった―――今の、今までは。
「喉が渇いたからと言って、泥水をがぶ飲みすれば、おなかを壊すでしょう? そのことを理解し、清水をコップ一杯分ゆっくり胃に入れるように振る舞いを留めておけるようになったなら……君もまた支配者として、螺旋を行く一歩目を踏み出したことに違いないのですから」
それだけ?
それだけだ。一歩目なのだから、コップの水程度だっただけだ。それだけだったからこそ、……二歩三歩と知らず知らず進み続けて、ここまで来てしまった今の今になって、思うことはある。女と男について。
結局は、どちらも支配者だっただけなのだ。女は命の為に心を殺し、男は心のままに命を捨てた。生きた女は口さがない与太話の主役となり、死んだ男は歴史の端役となった。どちらも言葉となり、人々が心ゆくまで語り継がれる存在へと昇華した。まったく逆なのに、同質にして、同一の存在となった。
ザーニーイもそうだった。吟遊詩人に謳われた。其の者旗司誓、すなわち霹靂。雷髪燐眼。稲妻の咬み痕。心技体を旗司道に捧げるのみならず、戒域綱領を完成させることにより悔踏区域外輪に黎明を授けた―――これぞ正真正銘、青天の霹靂。
青天など知らない―――謳い名を聞かされた当時は、そのことが多少気になった。曇天の霹靂であれば知っている……雨雲の腹に編み込まれた紫電の針金が、大気の空隙から大地を残酷なまでに打擲する風景は知っていた。だからこそ、疑問に思うことはある―――あの雲を失くすなら、稲妻も失われるのではないか? 母体なくして産まれ落ちるなど、超人であるアークレンスタルジャット・アーギルシャイアでさえ不可能だったではないか。それとも、これまでも、同質にして同一にして正逆なのだろうか? 楽園を失い、蒼穹を失い、鳥を失い、超人を失い―――曇天を得て、凡庸人を得て、現世を得たように。すげ替わりゆく混沌なのだろうか。
まあ、なんであれ他人様の口の中でまぜこぜに噛み砕かれて好き勝手に吐き出されることには変わらねえわな、と当時は受け流した。在ろうが無かろうが同じだ。大差などない。ただし―――
在ったことを知っている、失くしてしまった今となっては、そう思えなくなってしまった。
あったことを知っている なければよかったと こいねがってしまうまでに。
「ねえ。なんて呼びかけたらいいんでしょうね? ……本当に。ねえ?」
声は聞こえていた。声変わりを終えた少女の声。己のそれを押し殺し続けて十年近くになる。そんなことさえ忘れていた。
声の主も知っている。キルル・ア・ルーゼ。後継第二階梯。生涯逢うことは無かろうと信じて疑ってもいなかった異母妹。逢っただけでは済まされなかった。今ではそのことも知っている。
逢わなければよかったのだ。こんなことになるくらいなら。
「八年前の戦争のどさくさに焼かれたものか、後継第一階梯がクア・ガロ・ジェジャルの元にいた経緯は不明。それを嗅ぎつけ奪還するまでの暗躍は過酷を極め、この【血肉の義】に忠ずるかたちで、霹靂は死亡した。こんなひょっとしたらあるかもレベルの際どい告白を、居合わせただけの室内係にぽろぽろと話し終えた直後、あっさりと姿を消してくれた―――ゼラ・イェスカザ。そう名乗ったあの人のことを、あなたは……知ってる? こんな奇跡を人造しておいて、かげもかたちも失くした―――失われた影の、持ち主を。その正体を。知っているの?」
知っていた―――それを、疑うことすらなく信じていた。今ではそれも愚かしく思える。
ゼラ・イェスカザ。フラゾアインの落胤―――異国人。知識層。教養者。練成魔士。やや高飛車。父の旧知からの友であり、だからこそ局外者ではなかったと……父の相棒だったと、そう思う。シゾー・イェスカザを連れてきてからは、父と同じく、養父となった。自分の父とは違うタイプの父親で、子ども心を懐かせるどころか敵愾心ばかり年がら年中費されている体たらくだったので、本物の反抗期の入り端に家出された際自分的には納得が先行したものの、本人としては不満たらたらだった模様である。三年前、後頭部を割られるという命からがらであっても生き延びてくれて、ただただ ありがたかった……最後の父親まで死なせてしまうところだった。弟分が反抗期をこちらにまで向け出してきた時も、彼という存在の不動さに、すくわれた。盤石の日々を……ザーニーイとして培ってきた今までのすべてを、シヴツェイアなどという糞女郎に壊されてなるものか―――あんな けんつくは、へなちょこの当てつけ以外のなにものでもない。それをゼラ・イェスカザという巌が保証していた。養父がいるのだ。だから、養子とてそのままだ―――シゾー・イェスカザは粋がることを覚えただけの小僧で、小僧らしく背伸び歩きしたがる半人前だ。赤い研磨石だって、使いこなしていたのは自分の方だった。ごちゃごちゃとノイズを混ざらせるのは、いつだってあちらからだった。
どうして前触れもなく、通信に使う石のことを思い出したのだろう? ……
ふと、目蓋に瞬きを覚えて、目の焦点を取り戻す―――部屋の隅の床で膝を抱えて俯いていた、その目の前に差し出されたキルルの手に、トランプ束じみた赤色の石片が乗せられていた。
これで話していた頃を知っている。これで話す前から……馴染んできた幼い頃から、あの義親子については、ずっと知っている。
逢わなければよかったのだ。ゼラ・イェスカザにも―――シゾー・イェスカザにも。こんなことになるくらいなら。
「これをくれたのは、ゼラさんだって言っていたわよね。持っている者同士の心が通じたなら会話が出来るって。あなたの持ち物の中でも特別そうだったから、破棄していいものかどうかって相談されて―――今は、あたしが預かってるけど」
すっと、手が下げられた。
暗くしてもらった、部屋の中。それでも忍び込んできていた陽光を受けて白く目立っていた少女の細腕が視界から消え、声音も途切れ―――世界が平穏に閉ざされる。たったの十秒程度だったが……その十秒で、キルルは躊躇を振り切ったとも言える。
打ち明けてくる。そっと、後ろ暗そうに……ただし、しっかりと。取り返しのつかない破れ目を開くことを、予てから知り得ていたように。
「聞いて。お父様が―――ア族ルーゼ家ヴェリザハー陛下が、亡くなったわ。言い方は悪いけれど、これは予測がついていたことなの。予測がついていなかったのは……あなたのことは、言うまでもないけれど。もうひとつ。あれから、イヅェンの様子がおかしくなって―――今は、あたしが政務を代行してる。妙な話よね。本来なら、全部が全部あたしの役目だったのに。やっぱり、お着せにされてる気分が抜けないの」
語尾で、ふっと忍び笑いを漏らして―――キルルは、続けた。
「でもその感覚こそ、正しいように、今では思えてしまうのよ―――あたしの全部は、いずれ後継第一階梯に譲る役目だと」
沈黙。
こちらが、返事どころか身動きさえ微動だにしないとしても。呼びかけは続けられていた。
「ねえ。あなたはそれでいいの? このまま、後継第一階梯になり―――王になる。それで……いいの?」
いいのか―――?
良い? 悪い? 良くない? 悪くない?
―――そういう次元の話ではない。ゼラの言葉を思い出した今では、そのことも知っていた。
呆然と呟く。心の中で。
(王? 俺が)
唖然と、独りごちる。心から。
(……支配するのか? 支配者として。俺が。俺を超えて)
―――こころにもない。
(こころにもない……そんなこと。ああそうだ、似たようなことはしていたさ―――頭領は、やってた。でも、それは成り行きだ。旗司誓にいたから、旗司誓をし続けての……成り行きだ。なりたかったわけじゃないし、なろうと考えたこともなかった。ザーニーイだから……<彼に凝立する聖杯>で、ずっと―――そうしてきただけだ。みんなと。ラズ爺と……デデ爺も、いた頃から)
デデ爺―――ジンジルデッデ。イェンラズハと同じかそれ以上に、祖父のように慕っていた。それを裏切られた日を思い出す。ジンジルデッデが出征する前。十五歳だった自分。
自分だけ邪魔臭い脂肪の塊を胸倉にくっつけているせいで縛り上げるたびにむしゃくしゃし、そんな苦労も気苦労も知りやしない のほほん面を今日も今日とて粉砕すべく、幼馴染みの悪っくき鳩尾を蹴り上げたあと。
要塞の廊下を歩いていて、ふと靴紐が緩んでいる気がした。だから、締め直そうとして、屈んだ。たったのそれだけ。
それだけで―――肛門でも尿道でもない未知の隙間から、大便とも小便ともつかないものが這いずり出た。
最初はわけが分からなかった。適当な空き部屋に隠れて、下穿きの中を覗き込んだ途端、悲鳴すら失くした。どす黒く粘る臭い汁に混乱し、手拭いで一所懸命に拭き取った。拭いたのに取れない。染みついた。そうこうしているうちに、またしてもそれが伝い落ちてくる。ゆるしてくれと懇願する思いで、手拭いを折って下穿きに当てがい、ズボンまで元通りにしてジンジルデッデを捜した……現実味なくジンジルデッデから教わっていた億千万の教えが、現実に化けることもあるのは知っていた―――けれども、自分までそうだなんて知らずにいた。己の中から現出した化け物の うそざむさに、つま先から毛先まで総毛立って、ただひたすらに逃げ惑った。たすけてくれと―――それを、のぞんだ。
それを、ゆるされないと悟ったのは、言葉を聞かされるより先だった。わらったのだ―――対面し、事情を理解したジンジルデッデは……優しく温かく、微笑みすらしながら、ありのままを迎え入れた。そして、このように言祝いで……だからこその呪いを、のこした。
―――お誕生日おめでとう、シヴツェイア。ジンジルデッデになる前から待っていたよ。孫娘。
(デデ爺は……そう言った。ガキの時分から、仕事を上手くこなせた時だって、弓を上手く弾けるようになった時だって、おめでとうと言ってくれた。またひとつ大きくなれたと―――出来ることが増えた、またひとつ可能性を開いたと。だから、これでシヴツェイアにもなれると……ザーニーイに言ってくれたんだ。自分からは失われてしまった―――女として生きる道も開けたんだと)
こうしてザーニーイは裏切られた。今までザーニーイとして過ごしてきた人生すべてを、シヴィツェイアに譲られた。しかもそれは、最愛の祖父によって歓迎されている。絶望するしかなかった―――変わり果てた、今となっては。今?
今にして、ふと思う―――
(―――俺は、旗司誓になりたかったのかな?)
旗司誓<彼に凝立する聖杯>。単に自分は、そこにいただけではないのか? そこにいて……死なずにいたから、大きくなっただけなのではないか?
(俺は、どんな大人になりたかったんだろう?)
疑問に思う。思い出せるような、子どもの頃の夢も無い……
(違うなあ。きっと俺は、なんにもなりたくなかったんだ。大人になんかなりたくなかったし、だから女にだってなりたくなかったし、どうしたって旗司誓でいたかったんだ。爺ちゃんたちがいなくなっても、とうさんがいなくなっても、俺だけになっても―――俺、だけ?)
だけ。では、なかった。どの日々も、そうではなかった―――
(―――そうか。シゾー。お前、このことを知ってたんだな)
脈絡なく、悟ってしまう。
(わざわざ筺底から帰ってきて、いっしょに居残りしてくれていたのか。ひとりで行ってりゃ世話ないものを、三年前までは実際そうだったのに、ついてきてくれていたのか。このままでいいのか……俺が、心を決めて、こたえるまで―――泣き虫のくせに、べそかかされるって分かり切ってても、ついてきてくれていたんだな)
今まで通りザーニーイの隣に立ちながら、これからはシヴツェイアであってくれても構わないと―――彼なりに、相棒であろうとしていた。
(ごめんな。気付くどころか、こうやって謝ることさえ遅すぎた俺だから、もう―――こうまで、ぐうの音も無いんだ)
ゆっくりと、髪が揺れる程度に、かぶりを振って。
それが、羽がふわつく動作だったことに気付いた頃には、遅かった。キルルが、ぎくりとした足取りで、目の前から数歩下がる。なんとはなしに、その動揺した脚線を目で追うと―――遠く、少女の向こうに、出入り口が開いていた。部屋から……外への、隙間。開けることが出来る、ただそれだけのドア。
(出て……行ける)
思う。のだが、
(行って、どうなる)
思い知る。こうなっては―――そうするしかないではないか?
(どこに行こうってんだよ?)
身も蓋もないことに。行きたいところも、見たい風景も、自分には無い。
そこへ連れていくと抜かしてくれたシゾーさえ―――血も涙もないことに、姿かたちすら失くしたのだ。
そう。失われたのだ。すべて。楽園のように。
シヴツェイアと、同質にして、同一であり―――正逆だった、ザーニーイという存在は、失われてしまった。
「もう。いい」
ここでいい。
死んだのなら、どこであれ冥府だ。
「もう。疲れた」
彼の教育は徹底していた。もう矯正される余地のない老骨どもは捨て駒へと分類されていたので表層上の取り成しに留まったが、子ども二人については真逆だった。ありとあらゆる教えが育まれるよう施した―――とは言え、過干渉したわけではない。どちらかと言うと、子ども同士が干渉しあうスタイルとスタンスを保全した。二人とも負けん気だけは一丁前だったし、<彼に凝立する聖杯>には子どもなど互いしか居なかったのだから、負けん気の捌け口とて右に倣いしたところで自然な流れだったろう。筆記試験、口頭試問、なぞなぞ、おちょくり合い、問答、遊戯盤、舶来遊戯盤、喧嘩、口喧嘩、拳闘試合、剣術競技、寝コケて丸出しの臍の穴にゲギョギョヒョ虫(そう鳴いたので)を詰めておくという搦め手からの心的暗器。どれもこれも、ゼラ・イェスカザは推奨しているようだった―――と言うか、ひとつひとつの行いを、つぶさに熟視していた。どの能力がどの段階の習熟度に達したがゆえ成されたアクションであるのかを評価し、次に与えるべきリアクションを査定していた。
「子どもの浅知恵ながら、携帯ナイフから出刃包丁に持ち替えたのは及第点ですね。携帯ナイフは戦闘用でない拵えをしているので鍔が無い上、柄から刃までストレートだ―――柄まで血が流れた途端、掌を滑らせて自刃してしまう。柄より刃の幅が広い出刃包丁ならば、最低限それは防げる。すりこぎに防御の手を使わせて、その隙に突き込もうと考えたのでしょう。片手のみの膂力では切創しか与えられないだろうから、手数を増やすつもりで、連撃からの出血に備えた。一寸の虫でも五分の魂なりに、一寸ずりながら進歩を見せている」
十年以上前、タマネギの皮を剥いていた際に養子から襲撃を受けた後日でさえ、けちょんけちょんにした当人を看病しながら、斯く語れりである。当時は病舎など無かったので、返り討ちにするたび彼は子ども二人の相部屋へ足を運んでいたのだが、その都度なんなりと言い残していった。まあどの時に語ってくれた言葉であれ、幼馴染み本人の記憶には残っていなかろう。古傷とトラウマ以外は。
ともあれ。幼い頃、疑問に思ったことがある。魔神を得た練成魔士には魔術がある。途方もない力を、とうに手中にしている。それなのに、どうして学習を積み重ね、練磨し、鍛錬し、研鑽を遂げ―――要は、途方もない力を超えてどこまでも支配下に置く必要があるのか? と。
「支配者だからですよ」
ゼラ・イェスカザは、続けた。
「だからこそ、支配者であることの権利と義務に常に自覚的でなければならない。自制と制御こそ、生き残る根幹だからです」
さらりと口にされた生死に現実味が湧かず、よく分からないといったような口ごたえをした気がする。次に彼は、やや切り口を変えてきた。
「色々ありますが……君の言う通り、練成魔士にとっての力とは、魔術です。対象を吹き飛ばし、焼き尽くし、その理不尽を受け入れさせる支配力。裏を返せば、コントロールを失えば暴発し、バックファイアを被れば死に至らしめる、底抜けに阿呆な馬鹿力です。ですから練成魔士を滅ぼすには、コントロールを失わせて暴発させるのが一番手っ取り早い。敵は、原始的に石を投げたり、知的に人質を取ったり、効率的に心を折るひと言を浴びせたりしてくるわけですね」
卑怯臭いなあと眉をハの字にしたものの、命が懸っているのならば卑怯にも間抜けにもなるだろうと、すぐに考えを改めたように思う。確かジンジルデッデから、素っ裸になって隙を作ることで逃げ果せた女の話を聞いたばかりだった。
「ですから我々は、石を投げられること、人質を取られること、心を折るひと言を浴びせられること……ありとあらゆるTPOを網羅し、予見し、支配し返しておかねばならないのです。在野で奇術師のように振る舞って小金を稼ぐだけの三流は別として―――練成魔士らしい教育を受ける学生において、若年ほど魔術に関連した事故死率が高いのは、冗談でも冗句でもありません。未熟であるがゆえに、生まれついての支配者たる見境いを失くした……だからこそ命運からも裏切られた、人生からの落伍者です。馬鹿なりに馬鹿を見ただけとも言えます」
それを聞きながら考えていたのは、命の為に卑怯にも間抜けにもなれる女がいる一方で、世の中には卑怯にも間抜けにもなれず命を投げ出す男もいるという不思議についてだった。英雄とかいう奴だ。どちらが愚かなのだろう……正直者だから馬鹿を見たのはどちらだ? どちらも同じくらい疑わしい。ふたりを引き合わせたらお互いを指さすに違いなかろうが、自分はどちらかでも信じることが出来るだろうか? 賢く―――己の判断を心から信じ、相手に委ねることが出来るだろうか?
「支配者であることの権利とは、もちろん支配権を掌握していること。そしてその義務とは、掌握しているなりに、まっとうに支配すること。支配できてしまう力の誘惑を拒絶せず、支配したいという心を受け入れ、かつどちらからも支配されないこと。すべてが揃ってこそ、支配者は致命傷を回避できるのですよ。こら、ぽかんと聞いてる場面ですか? 例外なく君も支配者だと言うのに―――」
ぽかんと聞いていた。それは確かなことだったけれど。
接がれたせりふに、もっとぽかんとしたせいで、女と男のことなど心にも思わなくなった―――今の、今までは。
「喉が渇いたからと言って、泥水をがぶ飲みすれば、おなかを壊すでしょう? そのことを理解し、清水をコップ一杯分ゆっくり胃に入れるように振る舞いを留めておけるようになったなら……君もまた支配者として、螺旋を行く一歩目を踏み出したことに違いないのですから」
それだけ?
それだけだ。一歩目なのだから、コップの水程度だっただけだ。それだけだったからこそ、……二歩三歩と知らず知らず進み続けて、ここまで来てしまった今の今になって、思うことはある。女と男について。
結局は、どちらも支配者だっただけなのだ。女は命の為に心を殺し、男は心のままに命を捨てた。生きた女は口さがない与太話の主役となり、死んだ男は歴史の端役となった。どちらも言葉となり、人々が心ゆくまで語り継がれる存在へと昇華した。まったく逆なのに、同質にして、同一の存在となった。
ザーニーイもそうだった。吟遊詩人に謳われた。其の者旗司誓、すなわち霹靂。雷髪燐眼。稲妻の咬み痕。心技体を旗司道に捧げるのみならず、戒域綱領を完成させることにより悔踏区域外輪に黎明を授けた―――これぞ正真正銘、青天の霹靂。
青天など知らない―――謳い名を聞かされた当時は、そのことが多少気になった。曇天の霹靂であれば知っている……雨雲の腹に編み込まれた紫電の針金が、大気の空隙から大地を残酷なまでに打擲する風景は知っていた。だからこそ、疑問に思うことはある―――あの雲を失くすなら、稲妻も失われるのではないか? 母体なくして産まれ落ちるなど、超人であるアークレンスタルジャット・アーギルシャイアでさえ不可能だったではないか。それとも、これまでも、同質にして同一にして正逆なのだろうか? 楽園を失い、蒼穹を失い、鳥を失い、超人を失い―――曇天を得て、凡庸人を得て、現世を得たように。すげ替わりゆく混沌なのだろうか。
まあ、なんであれ他人様の口の中でまぜこぜに噛み砕かれて好き勝手に吐き出されることには変わらねえわな、と当時は受け流した。在ろうが無かろうが同じだ。大差などない。ただし―――
在ったことを知っている、失くしてしまった今となっては、そう思えなくなってしまった。
あったことを知っている なければよかったと こいねがってしまうまでに。
「ねえ。なんて呼びかけたらいいんでしょうね? ……本当に。ねえ?」
声は聞こえていた。声変わりを終えた少女の声。己のそれを押し殺し続けて十年近くになる。そんなことさえ忘れていた。
声の主も知っている。キルル・ア・ルーゼ。後継第二階梯。生涯逢うことは無かろうと信じて疑ってもいなかった異母妹。逢っただけでは済まされなかった。今ではそのことも知っている。
逢わなければよかったのだ。こんなことになるくらいなら。
「八年前の戦争のどさくさに焼かれたものか、後継第一階梯がクア・ガロ・ジェジャルの元にいた経緯は不明。それを嗅ぎつけ奪還するまでの暗躍は過酷を極め、この【血肉の義】に忠ずるかたちで、霹靂は死亡した。こんなひょっとしたらあるかもレベルの際どい告白を、居合わせただけの室内係にぽろぽろと話し終えた直後、あっさりと姿を消してくれた―――ゼラ・イェスカザ。そう名乗ったあの人のことを、あなたは……知ってる? こんな奇跡を人造しておいて、かげもかたちも失くした―――失われた影の、持ち主を。その正体を。知っているの?」
知っていた―――それを、疑うことすらなく信じていた。今ではそれも愚かしく思える。
ゼラ・イェスカザ。フラゾアインの落胤―――異国人。知識層。教養者。練成魔士。やや高飛車。父の旧知からの友であり、だからこそ局外者ではなかったと……父の相棒だったと、そう思う。シゾー・イェスカザを連れてきてからは、父と同じく、養父となった。自分の父とは違うタイプの父親で、子ども心を懐かせるどころか敵愾心ばかり年がら年中費されている体たらくだったので、本物の反抗期の入り端に家出された際自分的には納得が先行したものの、本人としては不満たらたらだった模様である。三年前、後頭部を割られるという命からがらであっても生き延びてくれて、ただただ ありがたかった……最後の父親まで死なせてしまうところだった。弟分が反抗期をこちらにまで向け出してきた時も、彼という存在の不動さに、すくわれた。盤石の日々を……ザーニーイとして培ってきた今までのすべてを、シヴツェイアなどという糞女郎に壊されてなるものか―――あんな けんつくは、へなちょこの当てつけ以外のなにものでもない。それをゼラ・イェスカザという巌が保証していた。養父がいるのだ。だから、養子とてそのままだ―――シゾー・イェスカザは粋がることを覚えただけの小僧で、小僧らしく背伸び歩きしたがる半人前だ。赤い研磨石だって、使いこなしていたのは自分の方だった。ごちゃごちゃとノイズを混ざらせるのは、いつだってあちらからだった。
どうして前触れもなく、通信に使う石のことを思い出したのだろう? ……
ふと、目蓋に瞬きを覚えて、目の焦点を取り戻す―――部屋の隅の床で膝を抱えて俯いていた、その目の前に差し出されたキルルの手に、トランプ束じみた赤色の石片が乗せられていた。
これで話していた頃を知っている。これで話す前から……馴染んできた幼い頃から、あの義親子については、ずっと知っている。
逢わなければよかったのだ。ゼラ・イェスカザにも―――シゾー・イェスカザにも。こんなことになるくらいなら。
「これをくれたのは、ゼラさんだって言っていたわよね。持っている者同士の心が通じたなら会話が出来るって。あなたの持ち物の中でも特別そうだったから、破棄していいものかどうかって相談されて―――今は、あたしが預かってるけど」
すっと、手が下げられた。
暗くしてもらった、部屋の中。それでも忍び込んできていた陽光を受けて白く目立っていた少女の細腕が視界から消え、声音も途切れ―――世界が平穏に閉ざされる。たったの十秒程度だったが……その十秒で、キルルは躊躇を振り切ったとも言える。
打ち明けてくる。そっと、後ろ暗そうに……ただし、しっかりと。取り返しのつかない破れ目を開くことを、予てから知り得ていたように。
「聞いて。お父様が―――ア族ルーゼ家ヴェリザハー陛下が、亡くなったわ。言い方は悪いけれど、これは予測がついていたことなの。予測がついていなかったのは……あなたのことは、言うまでもないけれど。もうひとつ。あれから、イヅェンの様子がおかしくなって―――今は、あたしが政務を代行してる。妙な話よね。本来なら、全部が全部あたしの役目だったのに。やっぱり、お着せにされてる気分が抜けないの」
語尾で、ふっと忍び笑いを漏らして―――キルルは、続けた。
「でもその感覚こそ、正しいように、今では思えてしまうのよ―――あたしの全部は、いずれ後継第一階梯に譲る役目だと」
沈黙。
こちらが、返事どころか身動きさえ微動だにしないとしても。呼びかけは続けられていた。
「ねえ。あなたはそれでいいの? このまま、後継第一階梯になり―――王になる。それで……いいの?」
いいのか―――?
良い? 悪い? 良くない? 悪くない?
―――そういう次元の話ではない。ゼラの言葉を思い出した今では、そのことも知っていた。
呆然と呟く。心の中で。
(王? 俺が)
唖然と、独りごちる。心から。
(……支配するのか? 支配者として。俺が。俺を超えて)
―――こころにもない。
(こころにもない……そんなこと。ああそうだ、似たようなことはしていたさ―――頭領は、やってた。でも、それは成り行きだ。旗司誓にいたから、旗司誓をし続けての……成り行きだ。なりたかったわけじゃないし、なろうと考えたこともなかった。ザーニーイだから……<彼に凝立する聖杯>で、ずっと―――そうしてきただけだ。みんなと。ラズ爺と……デデ爺も、いた頃から)
デデ爺―――ジンジルデッデ。イェンラズハと同じかそれ以上に、祖父のように慕っていた。それを裏切られた日を思い出す。ジンジルデッデが出征する前。十五歳だった自分。
自分だけ邪魔臭い脂肪の塊を胸倉にくっつけているせいで縛り上げるたびにむしゃくしゃし、そんな苦労も気苦労も知りやしない のほほん面を今日も今日とて粉砕すべく、幼馴染みの悪っくき鳩尾を蹴り上げたあと。
要塞の廊下を歩いていて、ふと靴紐が緩んでいる気がした。だから、締め直そうとして、屈んだ。たったのそれだけ。
それだけで―――肛門でも尿道でもない未知の隙間から、大便とも小便ともつかないものが這いずり出た。
最初はわけが分からなかった。適当な空き部屋に隠れて、下穿きの中を覗き込んだ途端、悲鳴すら失くした。どす黒く粘る臭い汁に混乱し、手拭いで一所懸命に拭き取った。拭いたのに取れない。染みついた。そうこうしているうちに、またしてもそれが伝い落ちてくる。ゆるしてくれと懇願する思いで、手拭いを折って下穿きに当てがい、ズボンまで元通りにしてジンジルデッデを捜した……現実味なくジンジルデッデから教わっていた億千万の教えが、現実に化けることもあるのは知っていた―――けれども、自分までそうだなんて知らずにいた。己の中から現出した化け物の うそざむさに、つま先から毛先まで総毛立って、ただひたすらに逃げ惑った。たすけてくれと―――それを、のぞんだ。
それを、ゆるされないと悟ったのは、言葉を聞かされるより先だった。わらったのだ―――対面し、事情を理解したジンジルデッデは……優しく温かく、微笑みすらしながら、ありのままを迎え入れた。そして、このように言祝いで……だからこその呪いを、のこした。
―――お誕生日おめでとう、シヴツェイア。ジンジルデッデになる前から待っていたよ。孫娘。
(デデ爺は……そう言った。ガキの時分から、仕事を上手くこなせた時だって、弓を上手く弾けるようになった時だって、おめでとうと言ってくれた。またひとつ大きくなれたと―――出来ることが増えた、またひとつ可能性を開いたと。だから、これでシヴツェイアにもなれると……ザーニーイに言ってくれたんだ。自分からは失われてしまった―――女として生きる道も開けたんだと)
こうしてザーニーイは裏切られた。今までザーニーイとして過ごしてきた人生すべてを、シヴィツェイアに譲られた。しかもそれは、最愛の祖父によって歓迎されている。絶望するしかなかった―――変わり果てた、今となっては。今?
今にして、ふと思う―――
(―――俺は、旗司誓になりたかったのかな?)
旗司誓<彼に凝立する聖杯>。単に自分は、そこにいただけではないのか? そこにいて……死なずにいたから、大きくなっただけなのではないか?
(俺は、どんな大人になりたかったんだろう?)
疑問に思う。思い出せるような、子どもの頃の夢も無い……
(違うなあ。きっと俺は、なんにもなりたくなかったんだ。大人になんかなりたくなかったし、だから女にだってなりたくなかったし、どうしたって旗司誓でいたかったんだ。爺ちゃんたちがいなくなっても、とうさんがいなくなっても、俺だけになっても―――俺、だけ?)
だけ。では、なかった。どの日々も、そうではなかった―――
(―――そうか。シゾー。お前、このことを知ってたんだな)
脈絡なく、悟ってしまう。
(わざわざ筺底から帰ってきて、いっしょに居残りしてくれていたのか。ひとりで行ってりゃ世話ないものを、三年前までは実際そうだったのに、ついてきてくれていたのか。このままでいいのか……俺が、心を決めて、こたえるまで―――泣き虫のくせに、べそかかされるって分かり切ってても、ついてきてくれていたんだな)
今まで通りザーニーイの隣に立ちながら、これからはシヴツェイアであってくれても構わないと―――彼なりに、相棒であろうとしていた。
(ごめんな。気付くどころか、こうやって謝ることさえ遅すぎた俺だから、もう―――こうまで、ぐうの音も無いんだ)
ゆっくりと、髪が揺れる程度に、かぶりを振って。
それが、羽がふわつく動作だったことに気付いた頃には、遅かった。キルルが、ぎくりとした足取りで、目の前から数歩下がる。なんとはなしに、その動揺した脚線を目で追うと―――遠く、少女の向こうに、出入り口が開いていた。部屋から……外への、隙間。開けることが出来る、ただそれだけのドア。
(出て……行ける)
思う。のだが、
(行って、どうなる)
思い知る。こうなっては―――そうするしかないではないか?
(どこに行こうってんだよ?)
身も蓋もないことに。行きたいところも、見たい風景も、自分には無い。
そこへ連れていくと抜かしてくれたシゾーさえ―――血も涙もないことに、姿かたちすら失くしたのだ。
そう。失われたのだ。すべて。楽園のように。
シヴツェイアと、同質にして、同一であり―――正逆だった、ザーニーイという存在は、失われてしまった。
「もう。いい」
ここでいい。
死んだのなら、どこであれ冥府だ。
「もう。疲れた」
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる