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それは突然に
しおりを挟む賊を縛り終え、王子と王女は逃げ続けて疲れたきった様子だったので少し休ませ、その間に私は二人の手当ても済ませた。
「さて、そろそろ動いてもよろしいですか?
王女様は差し支えなければ私がおぶって行きますので。」
「はい、シュカナお願いしよう。」
「ええ、お兄様。
ではよろしくお願いします···、えーと···」
「あ、申し遅れました。私、リーナ・カチェスと申します。
普段は、アズライト皇国第一皇女フィオリアーネ・アズライト様の専属護衛を任されています。」
私が名乗ると、二人はぽかんとした顔をした。
「えっ、第一皇女の専属···」
「でもさっき元娼婦って···」
まあ、そうなりますよね!!
普通繋がりませんもんね、その二つの単語。
私は苦笑するしかなかった。
「移動しながら説明致しますから先に進みましょう。」
「───と、言うわけで私は姫さまの専属護衛になりました。」
「すごい、リーナさんは自国の皇女も救っていたのですね。」
私におぶられた王女の声は明るく弾んでいた。
よかった、先ほどより少しは元気を取り戻したみたい。
「でも、どうして第一皇女の専属護衛なのに僕らのところへ?」
「それに関しては国のいろいろがあれこれしているのでご容赦ください。
でも、簡単に言うとたまたま私が適任だったから、ですね。」
ざっくり説明すれば、王子が「リーナは国家機密程の要件も任されるんだね、本当にすごい。」なんて少し外れたことを言った。
本当に私がたまたま適任だっただけなんだけど。
そもそも私がこの二人の元へ向かうことになったのは、ガーナードさんがマリアさんと私が話していたところに、突然飛び込んできたところから始まる。───
「───リーナさん、今すぐ西南の草原へ向かってください!!」
突然扉を開けたガーナードさんは切羽詰まった様子で飛び込んできた。
「えっ、でも私はこれから姫さまの護衛···」
「代わりの騎士をつけますから大丈夫です!!
心配はありますが!!」
いや、心配がある時点で大丈夫じゃないと思うんだよね。
ガーナードさんは自分の発言に疑問を感じないほど余裕が無いみたい。
「今、ひだまり宮の馬小屋に馬を用意しています。
小屋に着く頃には出発できると思うのでとにかく行ってください。」
彼の焦りが尋常ではないのでとにかく私は言われた通り馬小屋へ向かった。
小屋へ着けば、きれいな毛並みの黒い馬が用意されていた。
さすがお城の馬、街で見たのと全然違う。
何かこう、オーラが違うっていうか···、キラキラしてるっていうか···。
「リーナ・カチェス殿で合っているだろうか?」
馬に見とれすぎて気がつかなかったが、馬の横にグレーの髪を刈り上げた鋭い濃紺の目が特徴的ないかついおじさまが立っていた。
「そうですが、あなたは?」
「私はレオルド・ゼクロス。
各騎士隊を纏める騎士団長を担っている。」
「えっ、騎士団長!?どういうこと!?」
な、なんでそんな偉い人が私の前にいるの!?
え?いつも顔をあわせている皇族たちは国の中で一番偉い人たちだから今更すぎる?
あの人たちは常に会うからノーカンだよ!!
「今の状況を説明したいが、急ぎであるためゆっくり話す時間がない。
移動しながら説明するからまずは出発しよう。」
「しゅ、出発しようって騎士団長もいらっしゃるんですか?」
「私が行かなければ誰が君に説明するんだ?」
「それも···そうですね。」
あまりにも行くのが当然とばかりの態度なので、つい聞いてしまった。
でも偉い人が直々に動くくらいだから相当な問題が起きているんだろう。
なぜその問題に私が呼ばれたのかはまだわからないが、とにかく問題があるらしい西南の草原に騎士団長と共に向かうことになった。
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