4 / 10
4.女騎士の現実
しおりを挟むポーラル公爵家一同は無事にベガス帝国へと亡命することができた。
ヴィクス王国は我が家からの支援もなくなり財政的に苦しいことだろう。風のウワサだが王太子が国王の命を狙っているとか?愚かなことを。
大方、フィゴール伯爵が背後にいるんだろう。あの王太子が一人でそんな大それたことができるとは思えない。
ヴィクス王国民はなんとか耐えてほしいところだ。財政難で一番堪えるのは領民だろう。
ベガス帝国での私の生活だが、私は皇帝陛下の推薦で騎士団へと入団することとなった。
わかってはいたことだけれど、女性で騎士というのが気に入らないようだ。他の職種よりも女性への風当たりが強い。
そこは実力がモノをいう世界。私は何か言われたら、すぐに決闘を申し込みコテンパンにしてきた。
今は一個師団の団長を務めている。
今回の任務は……地味だ。他の師団長が嫌がったから、私にお鉢が回ってきたような感じだ。
私の部下も「うちの団長の下にいたら貧乏くじを引かされる」と言っている。
任務の具体的な内容は、国境整備。警備ではない。
整備だから、国境の草むしりとかとにかく国境でこちら側が美しく見えるように整えることが任務となる。
団員は「俺はこんな事をするために騎士になったんじゃない」「団長が女だからこんなことしてるんだ」とか言ってたけど、国境が向こうよりキレイなだけで。『我が国の方が国力がある』というのを知らしめることができてかなりお得なことだと思うんだけど、そこは価値観だろうな。
団員としては、騎士っぽく要人警護とか、対戦とか、そういうのをしたかったんだろうなぁ。縁の下の力持ちという言葉を知らないのか?
私は一人せっせと雑草を抜き、整備し、キレイになったのを見て内心『どうよ?我が国の国力?』と思っていた。やってることは地味だけど、大事なことなんだよなぁ。向こうの国境付近は荒れ放題でなんだか惨めな感じがする。国境付近まで手が回らないのがわかる。
「あー、俺はもうやってられない。なんで騎士が雑草抜いてるんだよ?」
「俺も」「俺も」と声が上がったが、無視した。
「やっぱり団長が女だからこんな仕事しか回ってこないんだよ!」
女だから?こんな仕事?聞き捨てならない。
「お前は何様のつもりだ?団長自らが先だって仕事をしているのに放棄?仕事を辞める覚悟があるんだろうな?その覚悟もなく、仕事を放棄とは何事だ?始末書も提出してもらう。各自仕事に戻るように。苦情があるのなら直接私に言うように」
「それならダンチョー。女なんだから仕事辞めて下さいよ」
「何故女は仕事を辞めねばならないんだ?理由がわからない。理由もなく私に言うのであれば騎士としてその剣を賭けて、私と決闘をする覚悟で言うんだな」
「ダンチョーも上の人に色仕掛けとかして今の地位なんでしょ?」
クスクスと笑い声が聞こえる。笑いやがったのはあいつだな。始末書だな。
「そんなものするわけないだろ。私のどこに色気があるんだ?」
64
あなたにおすすめの小説
失礼な人のことはさすがに許せません
四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」
それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。
ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。
婚約者が裏でこっそり姫と付き合っていました!? ~あの時離れておいて良かったと思います、後悔はありません~
四季
恋愛
婚約者が裏でこっそり姫と付き合っていました!?
あの時離れておいて良かったと思います、後悔はありません。
この国において非常に珍しいとされている銀髪を持って生まれた私はあまり大切にされず育ってきたのですが……?
四季
恋愛
この国において非常に珍しいとされている銀髪を持って生まれた私、これまであまり大切にされず育ってきたのですが……?
婚約破棄は命を懸けて遂行するものですよ?
岡崎 剛柔
恋愛
それは、王城の大広間で行われた夜会のこと――。
婚約者である第一王太子レオンから私は告げられる。
「侯爵令嬢エリシア・レヴァント、お前との婚約を破棄する!」
だが、氷姫と呼ばれていた私は冷静だった。
なぜなら、これはすべて予期していたことだから。
そして案の定、レオンはミレーヌという貴族令嬢と新たに婚約すると言い出した。
馬鹿は死なないと治らない。
私は公衆の面前でとっておきの報復を始めた。
これは婚約破棄から始まる、痛快なざまぁと甘やかな逆転劇。
氷姫の仮面の下に秘めた想いは、愛か、それとも復讐か――!?
婚約破棄?どうぞ私がいなくなったことを後悔してください
ちょこ
恋愛
「おい! この婚約は破棄だ!」
そう、私を突き付けたのはこの国の第二王子であるルーシュである。
しかし、私の婚約者であるルーシュは私の返事など聞かずにただ一方的に婚約を破棄してきたのである。
「おい! 返事をしろ! 聞こえないのか?」
聞こえないわけがない。けれども私は彼に返事をするつもりはなかった。私は何も言わない。否、何も言えないのだ。だって私は彼のことを何も知らないからだ。だから、返事ができないのである。
そんな私が反応を示さなかったのが面白くなかったのかルーシュは私を睨みつけて、さらに罵声を浴びせてきた。
「返事をしろと言っている! 聞こえているんだろ! おい!」
そんな暴言を吐いてくるルーシュに私は何も言えずにいた。けれども彼が次に発した言葉により私は反射的に彼に言い返してしまうのである。
「聞こえているわ!
その反応を見てルーシュは驚いたのかキョトンとした顔をしていた。しかしすぐにまた私に暴言を吐いてきた。
「聞こえているじゃないか! ならなぜ、返事をしなかった?」
「返事をしたかったわ! けれど、貴方の勢いに圧倒されてできなかっただけよ!」
そんな私の言葉にルーシュは益々驚いてしまったようだった。そのルーシュの顔を見て私は少し笑ってしまった。
「何笑っているんだ? 俺を馬鹿にしたつもりか!?」
そんなつもりは無いと私は彼に否定するが彼は聞く耳を持たないといった様子だった。そんな彼に対して私はある質問をした。それは今私が最も知りたい質問である。
「それより、この婚約破棄の理由は何かしら? 私は貴方に何かした覚えはないのだけれども」
そんな私の疑問にルーシュはさも当然といった様子で答えたのである。
「そんな理由など決まっているだろ! お前が俺よりも優秀な人材を捕まえたからに決まっている!」
そう言って彼は指をさした。その指が指し示している先には私がいた。一瞬なんのことか分からなかったが、少ししてからそのことに気づいた私はまさかと思った。
「そんな理由で!?だってその優秀な人材と言うのはまさか、彼なの!?」
そう言って私が指を指した方向にはあの眼鏡を掛けた彼がいた。すると彼は頭を下げてこう言ったのだ。
「はい、お嬢様に拾っていただきたくこちらに来ました」
彼の名前はリビン・ボタスキー。ボタスキー伯爵家の次男である。そして何を隠そう、私が暇つぶしでやっていたゲームの攻略対象であった人物だ。
「あら? そんな理由で私を追い出したと言うの? 随分と小さい器をお持ちなのね」
「なんだと!? お前は自分の立場が分かっていないのか?」
彼は私が何を言っているのか理解出来ていない様子だった。まぁ、それも仕方がないだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる