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レース編みのショール
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その日、アメリアはリーゼに連れられて仕立て屋にいった。前回発注したドレスの仮縫いが終わったと聞いたからだ。ドレスを作る過程でそうやって呼ばれて試着を何度かするということを、彼女はそれまで知らなかった。
「まあ。おっしゃられたように、少しだけふくよかにおなりですね。よかったです」
仕立て屋の女主人にそう言われて、アメリアは「ドレスは大丈夫ですか?」と尋ねた。女主人は頷いて
「勿論です。それに、お胸が少しあった方がこの形は更に綺麗に見えますので、本当にようございました」
と告げた。
帰る前に少し町中を歩きましょうとリーゼに言われ、前回ほど疲れていないアメリアはそれに同意をした。馬車を待たせ、町を歩いてあれこれリーゼは説明をする。それは、当主であるアウグストの妻になるのだから、町のこともいくらかは知っておいた方が良いという彼女からの思いやりだった。
「案外とこの町は栄えておりますので。アメリア様の御実家の方はよくわかりませんが、この辺りでは一番の町と言えるでしょう」
リーゼのその言葉に、アメリアは「そうなのですね」とだけ答えた。ヒルシュ子爵領にある町のどこにもアメリアは出かけたことがない。だが、ここに来るまでいくつかの町を通過してきた。だから、リーゼが言う「この辺りでは一番の町」という意味は理解を出来る。確かにそうだった。町には店以外にも、路上で商いをする者がおり、それは秩序だっている。話を聞けば、許可制で一週間ごとにそこに並ぶ者は変わるのだと言う。
「侯爵様が許可を出しておりますし、定時に見回りもしていますので、安心して買い物が出来ますよ」
「まあ……活気があるのね」
ふと見れば、レース編みの露店があった。アメリアはそこに興味を惹かれて立ち止まる。リーゼはそれに気づき、アメリアに「気に入られたんですか」と尋ねた。
「昔……」
と、説明をしようとして、アメリアは「いえ、なんでもないわ」と止める。
昔、彼女の世話をしてくれた乳母が、レース編みを編んでくれたことを思い出す。あまりにもぞんざいに扱われていたアメリアを憐れみ、かといって多くの物を買うことも出来ないため、彼女は質がそうよくないレース糸と針を持ち込んで、彼女にリボンを編んだり、短くなったスカートの裾にレース編みのモチーフを足したりしてくれた。
(なんだか、思い出してしまった……)
そこに並んでいるものたちは、店番である年配の女性の手作りなのだろう。店番をしながら、レース編みをしている。その手元で編まれているレースのモチーフを見て、アメリアは乳母を思い出していた。
「リーゼ、1つでいいから、買ってもいいかしら……」
「えっ」
リーゼは驚きの声をあげた。何故なら、目の前に並んでいるレース編みは、貴族が購入するようなものに見えなかったからだ。一時期、男性でもレースの立ち襟が流行っていた時期もあった。だが、そこで作られたレース編みは、上質な糸を使って網目が美しく、まったく偏りのないものだった。しかし、その露店に並んでいるものはそうではない。
レース編みの職人自体は平民がほとんどだ。時には修道院で編まれることもある。だが、貴族用のレース編みと平民用のレース編みは違う。そこに並ぶものは、明らかに平民用のものだったので、リーゼは戸惑ったのだ。
「……はい。勿論です」
だが、リーゼは彼女を止めなかった。何故なら、それは初めてアメリアが自分から「欲しい」と告げたものだったからだ。ここで彼女を止めたら、きっとこの先遠慮をして何も買わなくなってしまうだろう。だが、アウグストからは「金を使え」と言われているし……と考えた結果だ。
「あっ、でも、お金……」
不意に思い出したようにアメリアは言う。これまで、仕立て屋や宝石商などとやりとりをした時に金銭の支払いはなく、ただ「バルツァー侯爵に請求を」とリーゼが手続きをしただけだったからだ。アメリアは商売のことなどはよくわかっていなかったが、なんとなく「ここではそれが出来ないのでは」と察した。
「大丈夫です。お金も用意しておりますから」
そう言ってリーゼは銀貨を出した。すると、それを見た店主が「そんな大きな金を出されても困る」と言い出したので、アメリアはその店で一番額が大きな商品を手に取った。
「これでも駄目でしょうか」
「ああ、それならいいよ。それならね」
そう言って、店主はリーゼから銀貨を一枚受け取ると、じゃらじゃらと多くの銅貨を出した。
「ありがとうございます」
何故かアメリアが礼を言うと、金を勘定している老婆は「なんだいなんだい、変わった子だねぇ~、あんたたち、見れば高級そうな服を着ているのに」と言って「もう一つ好きなものを持っていきな」とおまけをしてくれた。
露店から離れて、2人は馬車に戻った。勿論、バルツァー侯爵家に帰るだけだ。向かい合わせで座って揺られていると、リーゼが自分の鞄から巾着袋を出し、それをアメリアに差し出した。
「アメリア様。この中には先ほどのお釣りと銀貨14枚が入っております。お渡ししますので、また町に出た時にお好きにお使いください」
「えっ、でも」
「大丈夫です。このお金も侯爵様からアメリア様用にとお預かりしているお金ですから」
アメリアは動揺をしたが、少し落ち着くと「わかりました。ありがとう」と礼を言ってそれを受け取った。巾着の中を見れば、確かにじゃらじゃらと先ほどの釣銭と銀貨が入っている。生まれて初めて手にした金銭を見て、アメリアは途方に暮れた。
「でも、他に買うかしら……?」
「無理矢理使わなくても大丈夫ですよ。ですが、また露店も変わりますしね」
「そうね」
そう言って、先ほど買ったレース編みのショールを手に取るアメリア。
「これを羽織るのは……ドレスには似合わないかしら」
それへリーゼは
「そうですね。でも、室内着であればおかしくないと思います。少し冷える夜などに羽織ってはいかがでしょうか」
と答える。
ああ、やはりそうなのだ。昔、乳母がレース編みをしてくれたが、それらはきっと貴族の令嬢が身に着けるにはふさわしくなかったのだろうとアメリアは少し悲しくなる。それでも、それらは彼女にとってはとても綺麗で、素敵で、本当に嬉しいものだったのだ。
(でも、わたしがそれを身に着けていたら、きっと侯爵様のご迷惑になるのでしょう)
だから、せめて室内着や寝間着の時だけでも。彼女はそうっとそれを胸に抱いた。
「まあ。おっしゃられたように、少しだけふくよかにおなりですね。よかったです」
仕立て屋の女主人にそう言われて、アメリアは「ドレスは大丈夫ですか?」と尋ねた。女主人は頷いて
「勿論です。それに、お胸が少しあった方がこの形は更に綺麗に見えますので、本当にようございました」
と告げた。
帰る前に少し町中を歩きましょうとリーゼに言われ、前回ほど疲れていないアメリアはそれに同意をした。馬車を待たせ、町を歩いてあれこれリーゼは説明をする。それは、当主であるアウグストの妻になるのだから、町のこともいくらかは知っておいた方が良いという彼女からの思いやりだった。
「案外とこの町は栄えておりますので。アメリア様の御実家の方はよくわかりませんが、この辺りでは一番の町と言えるでしょう」
リーゼのその言葉に、アメリアは「そうなのですね」とだけ答えた。ヒルシュ子爵領にある町のどこにもアメリアは出かけたことがない。だが、ここに来るまでいくつかの町を通過してきた。だから、リーゼが言う「この辺りでは一番の町」という意味は理解を出来る。確かにそうだった。町には店以外にも、路上で商いをする者がおり、それは秩序だっている。話を聞けば、許可制で一週間ごとにそこに並ぶ者は変わるのだと言う。
「侯爵様が許可を出しておりますし、定時に見回りもしていますので、安心して買い物が出来ますよ」
「まあ……活気があるのね」
ふと見れば、レース編みの露店があった。アメリアはそこに興味を惹かれて立ち止まる。リーゼはそれに気づき、アメリアに「気に入られたんですか」と尋ねた。
「昔……」
と、説明をしようとして、アメリアは「いえ、なんでもないわ」と止める。
昔、彼女の世話をしてくれた乳母が、レース編みを編んでくれたことを思い出す。あまりにもぞんざいに扱われていたアメリアを憐れみ、かといって多くの物を買うことも出来ないため、彼女は質がそうよくないレース糸と針を持ち込んで、彼女にリボンを編んだり、短くなったスカートの裾にレース編みのモチーフを足したりしてくれた。
(なんだか、思い出してしまった……)
そこに並んでいるものたちは、店番である年配の女性の手作りなのだろう。店番をしながら、レース編みをしている。その手元で編まれているレースのモチーフを見て、アメリアは乳母を思い出していた。
「リーゼ、1つでいいから、買ってもいいかしら……」
「えっ」
リーゼは驚きの声をあげた。何故なら、目の前に並んでいるレース編みは、貴族が購入するようなものに見えなかったからだ。一時期、男性でもレースの立ち襟が流行っていた時期もあった。だが、そこで作られたレース編みは、上質な糸を使って網目が美しく、まったく偏りのないものだった。しかし、その露店に並んでいるものはそうではない。
レース編みの職人自体は平民がほとんどだ。時には修道院で編まれることもある。だが、貴族用のレース編みと平民用のレース編みは違う。そこに並ぶものは、明らかに平民用のものだったので、リーゼは戸惑ったのだ。
「……はい。勿論です」
だが、リーゼは彼女を止めなかった。何故なら、それは初めてアメリアが自分から「欲しい」と告げたものだったからだ。ここで彼女を止めたら、きっとこの先遠慮をして何も買わなくなってしまうだろう。だが、アウグストからは「金を使え」と言われているし……と考えた結果だ。
「あっ、でも、お金……」
不意に思い出したようにアメリアは言う。これまで、仕立て屋や宝石商などとやりとりをした時に金銭の支払いはなく、ただ「バルツァー侯爵に請求を」とリーゼが手続きをしただけだったからだ。アメリアは商売のことなどはよくわかっていなかったが、なんとなく「ここではそれが出来ないのでは」と察した。
「大丈夫です。お金も用意しておりますから」
そう言ってリーゼは銀貨を出した。すると、それを見た店主が「そんな大きな金を出されても困る」と言い出したので、アメリアはその店で一番額が大きな商品を手に取った。
「これでも駄目でしょうか」
「ああ、それならいいよ。それならね」
そう言って、店主はリーゼから銀貨を一枚受け取ると、じゃらじゃらと多くの銅貨を出した。
「ありがとうございます」
何故かアメリアが礼を言うと、金を勘定している老婆は「なんだいなんだい、変わった子だねぇ~、あんたたち、見れば高級そうな服を着ているのに」と言って「もう一つ好きなものを持っていきな」とおまけをしてくれた。
露店から離れて、2人は馬車に戻った。勿論、バルツァー侯爵家に帰るだけだ。向かい合わせで座って揺られていると、リーゼが自分の鞄から巾着袋を出し、それをアメリアに差し出した。
「アメリア様。この中には先ほどのお釣りと銀貨14枚が入っております。お渡ししますので、また町に出た時にお好きにお使いください」
「えっ、でも」
「大丈夫です。このお金も侯爵様からアメリア様用にとお預かりしているお金ですから」
アメリアは動揺をしたが、少し落ち着くと「わかりました。ありがとう」と礼を言ってそれを受け取った。巾着の中を見れば、確かにじゃらじゃらと先ほどの釣銭と銀貨が入っている。生まれて初めて手にした金銭を見て、アメリアは途方に暮れた。
「でも、他に買うかしら……?」
「無理矢理使わなくても大丈夫ですよ。ですが、また露店も変わりますしね」
「そうね」
そう言って、先ほど買ったレース編みのショールを手に取るアメリア。
「これを羽織るのは……ドレスには似合わないかしら」
それへリーゼは
「そうですね。でも、室内着であればおかしくないと思います。少し冷える夜などに羽織ってはいかがでしょうか」
と答える。
ああ、やはりそうなのだ。昔、乳母がレース編みをしてくれたが、それらはきっと貴族の令嬢が身に着けるにはふさわしくなかったのだろうとアメリアは少し悲しくなる。それでも、それらは彼女にとってはとても綺麗で、素敵で、本当に嬉しいものだったのだ。
(でも、わたしがそれを身に着けていたら、きっと侯爵様のご迷惑になるのでしょう)
だから、せめて室内着や寝間着の時だけでも。彼女はそうっとそれを胸に抱いた。
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