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警備隊発足(2)
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夜の鍛錬、とはいえ、それらは夕方に行うことになっていた。ヴィルマーと共にクラウスも顔を出す。昼間働いている者も多いため、朝と夜の鍛錬に参加をする者も多く、両方に顔を出す人数も案外と多い。
場所は、2つの廃墟を壊して草が生え放題になっていた場所。その雑草をみなで全部抜き、整地をした。そこで、みなで筋力をあげるトレーニングを10分ほど。それから、剣の腕前によってグループを作って、それぞれの鍛錬を一時間ほど行う。それから、希望者のみ分銅の鍛錬を行う。
「おっ、ヴィルマーだ!」
「ヴィルマー、来たのか」
参加している者たちのほとんどはヴィルマーを知っており、嬉しそうに声をかける。一時的にわあっと人々はヴィルマーを囲んであれこれと互いの様子を話し合っていた。ミリアもしばらくはそれを放置して様子を見ており、逆にヘルマが「はーい、そろそろ始めますよ!」とみなに声をかける。
筋力を鍛えるトレーニングはヘルマと他に2人の男性がメインになって行う。それをミリアとヴィルマー、それからクラウスは少し離れたところから見ている。
「この鍛錬を4日繰り返し、それから1日は体力作りで走っています。走るのを嫌がる者がいるので、その日は帰りにパンを配るようにしているんですが、案外と仕方なくみな来ていますね」
「帰りにパンを配るように?」
予想外の単語が出てきたことで、ヴィルマーはオウム返しをする。
「警備隊の訓練に報酬はありません。ですが、労働にはそれなりの対価が必要でしょう」
「パンとは? どこかで買ってきているのか」
「いえ、焼いています」
「焼いて……?」
「わたしとヘルマで」
ヴィルマーは目を大きく見開いて「ええ!?」と驚きの声をあげる。
「それはどんなパンなんだ?」
「どうということもないパンですよ。鍛錬の合間を縫って、町長に頼まれた仕事をこなした報酬で材料を買っています。まあ、結構時間は必要ですが、鍛錬と鍛錬の間に」
「ええ~……俺も、そのパンが欲しいな」
「では、ヴィルマーさんも参加なさいます?」
ミリアのその言葉にクラウスは吹き出した。何故なら、ヴィルマーは「一つぐらい自分にくれないだろうか」と甘いことを心の中で思っており、それをクラウスはわかっていたからだ。そして、ミリアも実はそれは見通していたので、これは小さな意地悪だ。ううーんと唸るヴィルマー。
「走るのか……走るのか……ううん、そうだな……頑張るか……」
そのヴィルマーの答えにクラウスが「本気ですか!」とげらげら笑う。ミリアも「いつでもお待ちしていますよ」と言って笑えば、ヴィルマーは「一度だけな。一度だけ」と呻いた。
筋力を鍛えるトレーニングを終えた後は、ミリアも加わって剣の鍛錬を開始した。人々から離れてその様子を見ているヴィルマーは、横にいるクラウスに声をかける。
「どうだ」
「あれは、人に物を教えたことがある人間の教え方ですね。しかも、隠してはいるようですが、もともと騎士の剣を使っている。とはいえ、みなにはそれを強要していない」
クラウスはヴィルマーの「どうだ」が、警備隊のことを聞いたわけではなく、ミリアのことを聞いたのだと、何も言われずとも理解をしていた。
「そうだな」
「剣を振るうことが苦手な者に木刀での素振りをさせていますが、褒めて伸ばしていてお上手ですねぇ。それでいて、体勢にはシビアだ」
クラウスはそう言って、肩を竦めてヴィルマーを見る。
「彼女、何者なんです? もうご存じなんでしょう? 一緒にいるヘルマは、我々の前で彼女を呼ばないですが『お嬢様』と呼ぶところを一度聞いたことがありますよ」
ヴィルマーは少しばかり考える素振りを見せる。その時点で「もう知っている」ということは、駄目押しのようにクラウスには伝わった。知らないならば、知らないと言えばいいのだし。やがて、観念をしたように「うーん」と唸って打ち明けた。
「多分だが……彼女は、レトレイド伯爵令嬢、元王城第二騎士団長だ。王城の噂話がここに届くのには時間がかかるし、騎士団長の入れ替わりなんかはなかなか話題にならない。だが、初の女性騎士団長だったのでな……」
場所は、2つの廃墟を壊して草が生え放題になっていた場所。その雑草をみなで全部抜き、整地をした。そこで、みなで筋力をあげるトレーニングを10分ほど。それから、剣の腕前によってグループを作って、それぞれの鍛錬を一時間ほど行う。それから、希望者のみ分銅の鍛錬を行う。
「おっ、ヴィルマーだ!」
「ヴィルマー、来たのか」
参加している者たちのほとんどはヴィルマーを知っており、嬉しそうに声をかける。一時的にわあっと人々はヴィルマーを囲んであれこれと互いの様子を話し合っていた。ミリアもしばらくはそれを放置して様子を見ており、逆にヘルマが「はーい、そろそろ始めますよ!」とみなに声をかける。
筋力を鍛えるトレーニングはヘルマと他に2人の男性がメインになって行う。それをミリアとヴィルマー、それからクラウスは少し離れたところから見ている。
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「走るのか……走るのか……ううん、そうだな……頑張るか……」
そのヴィルマーの答えにクラウスが「本気ですか!」とげらげら笑う。ミリアも「いつでもお待ちしていますよ」と言って笑えば、ヴィルマーは「一度だけな。一度だけ」と呻いた。
筋力を鍛えるトレーニングを終えた後は、ミリアも加わって剣の鍛錬を開始した。人々から離れてその様子を見ているヴィルマーは、横にいるクラウスに声をかける。
「どうだ」
「あれは、人に物を教えたことがある人間の教え方ですね。しかも、隠してはいるようですが、もともと騎士の剣を使っている。とはいえ、みなにはそれを強要していない」
クラウスはヴィルマーの「どうだ」が、警備隊のことを聞いたわけではなく、ミリアのことを聞いたのだと、何も言われずとも理解をしていた。
「そうだな」
「剣を振るうことが苦手な者に木刀での素振りをさせていますが、褒めて伸ばしていてお上手ですねぇ。それでいて、体勢にはシビアだ」
クラウスはそう言って、肩を竦めてヴィルマーを見る。
「彼女、何者なんです? もうご存じなんでしょう? 一緒にいるヘルマは、我々の前で彼女を呼ばないですが『お嬢様』と呼ぶところを一度聞いたことがありますよ」
ヴィルマーは少しばかり考える素振りを見せる。その時点で「もう知っている」ということは、駄目押しのようにクラウスには伝わった。知らないならば、知らないと言えばいいのだし。やがて、観念をしたように「うーん」と唸って打ち明けた。
「多分だが……彼女は、レトレイド伯爵令嬢、元王城第二騎士団長だ。王城の噂話がここに届くのには時間がかかるし、騎士団長の入れ替わりなんかはなかなか話題にならない。だが、初の女性騎士団長だったのでな……」
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