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18-1.プロポーズらしきもの(1)
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「あ~……やりまくってしまった……」
二時間後。そうコンラートが呟く。その横で、バネッサは「うう……動けない……」と声を絞り出した。
「ねぇ、ちょっとだけこれ治せない……? 動きたいんだけど、動けないのよ……」
「うーん、筋肉の回復も、体力の消耗回復も、地味に難しいんですよねぇ。自分で勝手に治癒しちゃうのは、体力と関係ないし……でも、これは由々しき事態ですね……」
何故なら、二人ともまったく動けないからだ。どちらも「やりすぎた」と思っているが、思っているだけでは体は動かない。
「バネッサ、こんな風になることは、ないんですか?」
「ないわよ……ねぇ、あなた絶倫なのね……? 二時間、ずっと動きっぱなしで……」
「ぜつりん?」
その言葉に聞き覚えがないな、とバネッサに尋ね返すコンラート。彼女は「知らないならいいわ」と言って、結局その言葉の意味を教えなかった。
「よし……ちょっと、失礼して」
コンラートは何かの呪文を唱えた。「あー! うまくいかない!」と声をあげたが、何度目かの挑戦でそれは「うまくいった」ようだった。むくりと体を起こしてから、彼はバネッサにも同じ呪文を唱える。やはりそれも一度ではうまくいかなかったらしく、三度唱える。彼が呟く言葉を聞きながら、バネッサはぼんやりと「この人でも苦手な呪文があるんだ……」と思う。
「よし! 一過性のものなので、一時間もすればまた動けなくなりますけど、ひとまずは」
「ありがとう。一時間後には、眠るわ……」
とはいえ、少し元気になったことはありがたい、とバネッサもむくりと起き上がる。彼女はベッドから降りると「湯を持ってきてもらうわね」とコンラートに告げた。この娼館ではことを終えると、小間使いに湯を運んできてもらって体を拭く。コンラートは「はい」と言いながら、ぐしゃぐしゃになったシーツの「再現」を試みる。
「うーん、シーツはどうにかなっても、その下まで染みている分はどうしようもないなぁ~。ピンポイントで無機物の時間を細かく戻すことって出来ないかな? 今のところ知らないんですけど、探してみよう……」
「仕方ないわよ。匂い消しを使ってそのままよ、みんな」
下着だけつけたバネッサが苦々しく笑えば、コンラートは「じゃあ、諦めます」と全裸で答えた。
バネッサが呼び鈴を使って小間使いを呼ぶと、まず最初に水が入った桶が渡される。それで彼女は手を洗う。しばらくして、手拭き布、魔道具で温めた湯を渡された。
「喉、乾いたでしょ。果実水飲む?」
「うーん、出来れば、お茶がいいかな。今日、まだ飲んでなかったので」
「ふふ、わかったわ」
バネッサは小さく笑うと「わたしも一緒にいただいていい?」と言って、二人分の茶を淹れたのだった。
「ねぇ、コンラート」
「はい」
体をそれなりに拭いて、着替えて。コンラートはカウチの背もたれに背を預けながら、行儀悪く茶を飲んでいる。むしろ、そんな体勢で飲む方が大変ではないかと思いつつ、その横に座ったバネッサも、茶を飲む。カチャン、とサイドテーブルにカップを置いてから、ゆったりとした声音でバネッサは告げた。
「わたし、あなたの身請けを受けるわ」
「ええっ! 本当ですか!」
ぱあっと明るい表情を見せるコンラート。彼のそんな顔は知らない、とバネッサは思いつつ、言葉を続けた。
「恩返しに何が出来るかはわからないけれど……」
「恩返し? 何のですか?」
茶を飲みながら、呑気に尋ねるコンラート。バネッサは困ったような表情で彼に告げる。
「だって、身請けをしてくれるんでしょう? そうしたら、こちらはそれへの恩を返さないと……」
それへ、コンラートはきょとんとした表情で、バネッサにとって思いもよらない言葉を発した。
「え? わたしが恩を返すんじゃなくて?」
「え?」
彼が何を言っているのかわからず、何か自分はおかしいことを言っただろうか、とバネッサは「何?」と尋ねた。
「だって……バネッサ、身請けを受けてくれてありがとうございます。わたしがそうしたかったことを、あなたが受けてくれたんだから、恩を返さなくちゃいけないのはわたしの方ではないんですか?」
「ええっ?」
「うん。そうですよ。うーん、何をしたら恩返しになるんだろう? ちょっと考えてみますけど……バネッサも、何かあったら言ってくださいね」
そう言うと、彼は満面の笑みを浮かべる。ああ、彼のそんな笑みも初めてだ。そして、その笑みを引き出したのは自分なのか……バネッサは、じわりと体が熱くなっていくのを感じた
二時間後。そうコンラートが呟く。その横で、バネッサは「うう……動けない……」と声を絞り出した。
「ねぇ、ちょっとだけこれ治せない……? 動きたいんだけど、動けないのよ……」
「うーん、筋肉の回復も、体力の消耗回復も、地味に難しいんですよねぇ。自分で勝手に治癒しちゃうのは、体力と関係ないし……でも、これは由々しき事態ですね……」
何故なら、二人ともまったく動けないからだ。どちらも「やりすぎた」と思っているが、思っているだけでは体は動かない。
「バネッサ、こんな風になることは、ないんですか?」
「ないわよ……ねぇ、あなた絶倫なのね……? 二時間、ずっと動きっぱなしで……」
「ぜつりん?」
その言葉に聞き覚えがないな、とバネッサに尋ね返すコンラート。彼女は「知らないならいいわ」と言って、結局その言葉の意味を教えなかった。
「よし……ちょっと、失礼して」
コンラートは何かの呪文を唱えた。「あー! うまくいかない!」と声をあげたが、何度目かの挑戦でそれは「うまくいった」ようだった。むくりと体を起こしてから、彼はバネッサにも同じ呪文を唱える。やはりそれも一度ではうまくいかなかったらしく、三度唱える。彼が呟く言葉を聞きながら、バネッサはぼんやりと「この人でも苦手な呪文があるんだ……」と思う。
「よし! 一過性のものなので、一時間もすればまた動けなくなりますけど、ひとまずは」
「ありがとう。一時間後には、眠るわ……」
とはいえ、少し元気になったことはありがたい、とバネッサもむくりと起き上がる。彼女はベッドから降りると「湯を持ってきてもらうわね」とコンラートに告げた。この娼館ではことを終えると、小間使いに湯を運んできてもらって体を拭く。コンラートは「はい」と言いながら、ぐしゃぐしゃになったシーツの「再現」を試みる。
「うーん、シーツはどうにかなっても、その下まで染みている分はどうしようもないなぁ~。ピンポイントで無機物の時間を細かく戻すことって出来ないかな? 今のところ知らないんですけど、探してみよう……」
「仕方ないわよ。匂い消しを使ってそのままよ、みんな」
下着だけつけたバネッサが苦々しく笑えば、コンラートは「じゃあ、諦めます」と全裸で答えた。
バネッサが呼び鈴を使って小間使いを呼ぶと、まず最初に水が入った桶が渡される。それで彼女は手を洗う。しばらくして、手拭き布、魔道具で温めた湯を渡された。
「喉、乾いたでしょ。果実水飲む?」
「うーん、出来れば、お茶がいいかな。今日、まだ飲んでなかったので」
「ふふ、わかったわ」
バネッサは小さく笑うと「わたしも一緒にいただいていい?」と言って、二人分の茶を淹れたのだった。
「ねぇ、コンラート」
「はい」
体をそれなりに拭いて、着替えて。コンラートはカウチの背もたれに背を預けながら、行儀悪く茶を飲んでいる。むしろ、そんな体勢で飲む方が大変ではないかと思いつつ、その横に座ったバネッサも、茶を飲む。カチャン、とサイドテーブルにカップを置いてから、ゆったりとした声音でバネッサは告げた。
「わたし、あなたの身請けを受けるわ」
「ええっ! 本当ですか!」
ぱあっと明るい表情を見せるコンラート。彼のそんな顔は知らない、とバネッサは思いつつ、言葉を続けた。
「恩返しに何が出来るかはわからないけれど……」
「恩返し? 何のですか?」
茶を飲みながら、呑気に尋ねるコンラート。バネッサは困ったような表情で彼に告げる。
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「え? わたしが恩を返すんじゃなくて?」
「え?」
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「だって……バネッサ、身請けを受けてくれてありがとうございます。わたしがそうしたかったことを、あなたが受けてくれたんだから、恩を返さなくちゃいけないのはわたしの方ではないんですか?」
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「うん。そうですよ。うーん、何をしたら恩返しになるんだろう? ちょっと考えてみますけど……バネッサも、何かあったら言ってくださいね」
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