スキル【等価交換】で異世界商会革命!元社畜、現代知識でざまぁ成り上がる!

かしおり

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第18話:奴隷市場の駆け引き

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「この人を、私が買い受けよう」
  
ユウトの静かだが、決然とした声が――奴隷市場の淀んだ空気に、鋭く響いた。

鞭を振り上げたまま硬直していた太った奴隷商は、ゆっくりと優斗の方へ顔を向ける。  
その目は、最初は驚き、次に侮蔑、そして最後には獲物を見つけたかのような卑しい光に変わった。

「ひひ……なんだい、兄ちゃん。こんな薄汚れた檻の中にいるような女に、本気で惚れちまったのかい? それとも、何か特別なご趣味でもおありで?」

奴隷商は、下卑た笑みを浮かべながら優斗に近づいてくる。  
その手には、未だ鞭が握られたままだ。

周囲の奴隷たちも、そして檻の中にいるリヴィア自身も、信じられないといった表情で優斗を見つめている。

(舐められたもんだな……。だが、ここで怯むわけにはいかない。ルミアもいる。何より、俺はもう――決めたんだ)

「彼女の値段はいくらだ? 金貨なら、多少は持ち合わせがある」

優斗は努めて冷静に、しかし相手の目を見据えて言い放った。

実際には、女神から与えられた軍資金と、ここ数日の露店での儲けを合わせても、金貨と呼べるほどの額には程遠い。  
だが――ハッタリでもかまさなければ、足元を見られるだけだ。

奴隷商は、優斗の言葉と、その背後に控えるルミアのただならぬ威圧感に一瞬たじろいだ。  
だが、すぐに強欲な本性を剥き出しにする。

「へっ、金貨だと? この女は曰く付きでな。そう安くは売れねえんだよ。なにせ、前の持ち主からは“扱いにくいが、磨けば極上の逸品になる”と太鼓判を押されてるんでな。そうだな……金貨五十枚ってとこだな!」

(金貨五十枚!? ふざけるな……! 今の俺の全財産をかき集めても、銀貨数枚がいいところだぞ……!)

優斗は内心で悪態をついたが、表情には出さない。  
法外な値段だ。明らかに、足元を見て吹っ掛けてきている。

しかし、ここで「そんな金はない」と言えば――  
リヴィアは間違いなく、見せしめに酷い扱いを受けるだろう。

「金貨五十枚か……。確かに、彼女ほどの女性なら、それくらいの価値はあるかもしれないな」

優斗は、あえて奴隷商の言葉に乗ってみせた。  
その反応に、奴隷商は「こいつ、カモかもしれん」とでも思ったのか――さらに目を細め、いやらしい笑みを深める。

「そうだろう、そうだろう! さすが兄ちゃん、見る目があるねえ! さあ、金貨五十枚、ポンと払って、この極上の女を自分のものにしな!」

(時間がない……。このままじゃMPが……! でも、やるしかない!)

優斗は、奴隷商と会話をしながらも、スキル【鑑定】で周囲にあるガラクタ同然のものに意識を集中した。

打ち捨てられた金属片、割れた壺のかけら、汚れた布切れ――  
それらを【等価交換】で価値のあるものに変換しようと試みる。

イメージするのは、前世で見た宝飾品の知識。  
小さな金属片を、純度の高い銀の粒へ。  
汚れたガラス玉を、カットは粗いが輝きのある小さな宝石へ。

しかし、MPの消費が尋常ではない。  
頭がズキズキと痛み始め、視界が霞む。

女神セレネから「魂の疲弊」と「異世界との相性」でMPが少ないと説明されたが、これほどとは――

それでも、彼は歯を食いしばり、意識を集中させ続けた。  
リヴィアの、あの諦めない瞳が脳裏に焼き付いて離れない。

「……少し、待ってもらえるか。金は用意する。だが、今すぐ全額というわけにはいかない。手持ちの金と、ここに“価値のある品”をいくつか用意する。それで手を打ってもらえないだろうか?」

優斗は、額に滲む汗を隠そうともせず、必死の形相で奴隷商に食い下がった。  
足元がふらつき、立っているのもやっとだった。

ルミアが心配そうに優斗の顔を覗き込み、奴隷商に対して低い唸り声を上げる。  
その威圧に、奴隷商は僅かに顔を引きつらせた。

「ほう……“価値のある品”ねえ。どんなものか見せてもらおうじゃねえか。だが、俺の眼鏡に適わなけりゃ、この話はナシだぜ? その時は、この女がどうなるか……分かってるだろうな?」

奴隷商は、まだ優位性を保っているつもりでいるが、  
その声には先ほどまでの余裕は消え失せていた。

優斗は、震える手で懐からなけなしの銀貨数枚と銅貨数十枚を取り出した。  
さらに【等価交換】で生成したばかりの、いびつだが確かに輝きを放つ小さな宝石(ルビーとサファイアをイメージ)と、掌に乗るほどの大きさの銀塊を差し出す。

これが、今の彼にできるギリギリの精一杯だった。  
MPはほぼ底をつき、立っているのが不思議なくらいだ。

「こ、これは……!?」

奴隷商は、差し出された宝石と銀塊を見て目を見開いた。

その強欲な目が、驚きと興奮で見開かれる。  
宝石のカットは粗いが、その色と輝きは本物だ。  
銀塊も、ずっしりとした重みがある。

ミレルナの市場で、これだけのものが一度に出回ることは稀。  
ましてや、こんなうらぶれた奴隷市場では、まずお目にかかれない代物だった。

彼は唾をゴクリと飲み込み、優斗が差し出した品々と――その背後にいるルミアを、交互に見比べた。

そして、その顔には――強欲と恐怖、そして何よりも目の前の「儲け話」を逃したくないという焦りの色が、ありありと浮かんでいた。
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