私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います

***あかしえ

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17.婚約解消?!

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「ま、待て! ちょっとまて、落ち着け! いや、言い方が悪かったな、謝る! 謝るか…………ぐはあああっ!!!」

 己の書斎で白目をむいて倒れている父メーベルト伯ディーター・メーベルトを踏みつけながら、ルイーゼはこれからのことを考える。

 ――お昼前に運動したから、お腹空いてきちゃった。お父様は、でお分かりいただけたようだけど……妹とお母様の説得を、どうしたものかしらね。


 昼前、ルイーゼは執務室へ呼びつけた父の口から、いくつかの事実と憶測が伝えられた。

 まず、エルウィンとソフィアが『神の奇跡』を起こしたこと。
 それにともない、シュティーフェル家との婚約内容を見直す可能性が出てきたこと。
 そして最終的に、ソフィア・メーベルトとエルウィン・シュティーフェルで婚約を結び直すことになるだろう、ということ。

 当然、「はい、分かりました」と納得するルイーゼではない。

「だ、だがな……あの二人は、『運命の恋人』なのだ! 引き裂いては可哀想だろう!」
 ヨロヨロと立ち上がりながら、弱々しい口調で父はなおも言い募る。
「『神の奇跡』は無視できん! それさえ手に入れれば、一生安泰なのだ! 我々が安泰ということは、領民も安泰ということだ!」
 ――そういう考え、エルウィンが一番嫌いそうなのだけれど。
 貴族の安泰のために振り回されてきたエルウィンにしてみれば、メーベルト伯の言い分は受け入れがたいものだろう。
「シュティーフェル伯も乗り気なのだぞ!」
 ――シュティーフェル伯も残念な人……?

「ともかく! お前が……その、いくらエルウィン君を好ましく思っていたとしても、我々貴族には、領民を守る義務がある。最善の決断をすべきなのだ」

 もっともらしい顔と口調でそれなりのことを言うメーベルト伯だが、事実とは反する。ルイーゼとエルウィンの婚姻は、純粋にメーベルト家のためだけのもので、それによって領民に還付されるものなど、何一つない。
 大体、メーベルト家は長男が継ぐことになっている。ルイーゼもソフィアも、出る幕はない。
「まさか、エルウィンにメーベルト伯爵位を継承するおつもりですか? 不可能ですよ、そんなこと。爵位の継承は創設時に作られた『召喚状リット』によって決められているんですから。メーベルト伯爵位には、『特記事項』の設定もありませんでしたよね?」

 ルイーゼがそこまで言い切ると、メーベルト伯は膝をつき、うなだれてしまった。

「まあ、ルイーゼ。父親になんということを言うのです」
 執務室にノックもなしに、母親が現れた。

 この母親は物静かだが、貴族意識はボリソヴィチ・バッソよりも強いという、ルイーゼにとっては非常に厄介な相手だった。
 ルイーゼよりも賢く口が上手(うま)く、情に流されない。普段口は出さないが、ここぞという時には絶対に自分の意見をまげず、最終的にはこの母の思うとおりに進んでいることが多い。

 ――貴族意識の強いお母様は……私とエルウィンとの婚約を、本心ではずっと反対していた。それを、一度も口にしたことはなかったけれど。

ルイーゼ、貴女は分かっていましたよね? わたくしが、貴女とエルウィン・シュティーフェルとの婚約を快く思っていなかったことは」
 流麗に言葉を紡ぐメーベルト伯夫人を、ルイーゼは真正面から無言でめつける。

「卑しい血族同士、縁を結ぶことで世の均衡が保たれるのであれば、これほど喜ばしいことはありません。『運命の恋人』『つがい』――結構ではありませんか。ルイーゼ、わざわざ貴女の血を汚す必要などないのです」


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